タイトル 生涯学習要求調査の結果がレクリエーション的なものばかりになった場合、 タイトル どのように調整していったらよいのですか? レクリエーションの重要性  生涯学習の振興とは、住民の主体的な学習・文化・スポーツ・レクリエーションのすべてがいきいきと行われるために必要な条件整備をすることです。ですから、レクリエーション的な要求が多い地域では、まず、レクリエーションのための施設・設備などを含めて、それが活発に行われるための条件が十分であるかどうかを再点検しなければなりません。  余暇が増大し、高齢化が進展するなどの急激な社会の変化の中で、人間性をとりもどしたり、ますます豊かなものにするためにも、レクリエーションは重要です。  生涯学習要求調査の中での「レクリエーション的な要求」が、住民一人ひとりのどういう源から生まれでてきているのか、そして、どんなレクリエーションを住民が望んでいるのか、まずは調査からできる限り読み取るよう努めるべきです。 地域課題の導入の可能性  このように住民の学習要求を細かに見ていくと、「顕在的」な要求ばかりでなく、直接は調査に表れにくいけれども、調査全体からは見え隠れする「潜在的」な要求も少しづつ明らかになってきます。その一つが地域における人々の連帯でしょう。  芸術の鑑賞や旅行などのように、一人、または家族で行うレクリエーションも大切です。しかし、レクリエーションが人間回復をめざすのなら、それは一人ひとりの孤独な営みだけでは、けっして「完遂」することはできません。人間どうしの連帯感を味わうことができてこそ、レクリエーションの大きな喜びがあるのです。  今日の地域社会は、さまざまな問題をかかえています。とくに、地域の連帯意識や共同性の弱体化は、自立性の衰退、住みにくさ、地域教育力の減退による子どもの非行化などの主要な要因の一つになっています。これらのことも、住民の深刻な学習要求として表れているはずですが、レクリエーション的な要求をしている人は、それとは別で、そういう要求をもっていないということではありません。むしろ、連帯感があふれるレクリエーション、地域の連帯をつくりだすレクリエーションを、「顕在的」あるいは「潜在的」に求めていると考えられるのです。ここに、「レクリエーション的な要求」が、地域課題にむすびつく可能性を指摘することができます。  たとえば、自治体の生涯スポーツの取り組みの中で、三世代交流のゲートボール大会や、地域対抗のソフトボール大会などが行われています。これらは、「顕在的」なスポーツ・レクリエーションの要求に応えながら、地域の連帯感の涵養によって地域課題にアプローチする試みとして評価できます。 生涯教育の基本方針からみた調整のあり方  上に述べたように、住民の学習要求(文化・スポーツ・レクリエーションを含む)がある場合、それがささいに見えるものであっても、その活動が自主的にいきいきと行われるよう配慮することが行政には必要です。そして、その学習要求をていねいに分析することによって、「潜在的」な学習要求もみえてくるのです。  しかし、そのことは、「顕在」「潜在」の学習要求のすべてにわたって、行政側がそれに対応する事業を「提供」しなければならないということではありません。生涯教育の予算といえども限られているわけですから、住民の多様な学習要求を選択して事業として提供する行為が必要になります。その「選択基準」をプライオリティー(優先度)といいます。プライオリティーには、緊急性、切実性、公共性などが考えられます。いずれにせよ生涯教育行政が責任をもって、住民の支持を得ながら、その基準を明らかにしていかなければなりません。  その時、調査からは引き出せなかった学習課題も、場合によっては事業として設定することがありえます。生涯教育の事業は、調査を平板に受け止めるだけでできるものではなく、「選択行為」のプロセスから動的に創り出されるものなのです。もちろん、この「選択」は住民の生涯学習の活動に対して行われるものではありません。あくまでも、生涯教育行政が自ら提供する事業を設定する時に必要になるものです。