◆神奈川県横浜市   「個人」がいきいきするしかけ −横浜女性フォーラムの情報・施設・講座−  JR戸塚駅のホームから、三階建の淡いアズキ色の建物が見える。「横浜女性フォーラム」である。市内の女性の活動と交流の拠点として、昭和六三年九月、横浜市はこれを四十億円をかけて建設した。しかし、その管理・運営は財団法人横浜市女性協会に任されている。  正面玄関を入ったところに「情報ライブラリ」がある。そこには、コンピュータシステムによる図書コーナー、自動搬送システムによるビデオコーナー、「しごと」「くらし」「なかま」などのデータベースにアクセスできるフォーラメディア、パソコンゲームコーナーなどがある。  ミニコミを収集・展示したり、データベースに「よびかけ」や「らくがき」が自由に書き込める「掲示板」というメニューを提供するなど、交流への「しかけ」もさりげなく用意されている。  その他、一階には、フォーラポート(相談室、ポートは港の意)、印刷工房、託児室、そして、三八〇席の立派なホールもある。ホールの「親子席」では、乳幼児といっしょでも、人に迷惑をかけずに安心してなまの芸術に接することができる。  「生活工房」は二階にある。そこの「工作・工芸」「衣」「食」の三つのコーナーでは、くらしを「創造」する活動ができるが、それらは間仕切りのないオープンスペースとなっている。予約なしでも自由に利用できる。パンフレットには、「個人、グループ、男性・女性、大人・子供の枠を越え、初めて出会った人とも一緒に利用しましょう。」とある。ガラス張りの「物品庫」からは、「創造」に必要な器材が借りられる。  その他、二階にはガラス越しにグループの活動の様子がわかるセミナールームや音楽室、和室などがある。三階には、助産婦さんのいる健康サロン、スタッフによるアドバイスや体操教室などの受けられるフィットネスルームなどがある。フィットネスルームは、団体貸出しを行わない。個人またはその交流にねらいをしぼっている。  ユニークな講座も盛んに行っている。たとえば、女性には不向きとされがちな自動車整備や電動工具の講座、水まわりの修理の講座、仏発祥の再就職の講座「ルトラヴァイエ」などである。  フォーラムは、このようにして、その情報と空間と人材をしなやかに活用しながら、「個人」にアプローチする。そして、さらに男性や子どもをも巻き込んだ交流へと誘(いざな)うのである。       (生涯学遊研究会 西村美東士)