コンピュータ (英)Computer 定義 電圧の高低の組み合せを判断する(デジタルコンピュータの場合)ことによって、数値情報や文字情報(データData)を大量にすばやく処理するシステム。プログラムの命令を遂行する「頭脳」としての中央演算処理装置(CPU)、そのCPUで処理するための情報をため込んでおく記憶装置(内部記憶装置やフロッピーディスクなど)、入出力装置(キーボード、ディスプレー、プリンターなど)から構成される。 活用の方法 生涯教育の場面でコンピュータを活用する場合、大きくは次の2通りが考えられる。 @CAI(Computer Assisted Instruction )−学習者の学習を直接、コンピュータによって支援する。 ACMI(Computer Managed Instruction)−学習を援助する者にとって必要な情報の処理や判断を、コンピュータによって行う。  CAIの種類としては、次のようなものがある。実際のCAIでは、いくつかの種類が組み合わされて行われる。 @ドリル−練習問題。たとえば計算問題などで、コンピュータがさまざまな組み合せの問題を出題する。 Aチュートリアル−個別指導。理解度に応じて、段階的に事項の説明や問題の出題が行われる。 Bシミュレーション−模擬体験。実物を使うと、危険であったり不可能、不経済であったりする場合に、コンピュータの画面上で、その状況を図や数字などで再現し、練習等を行う。 Cゲーム−得点を競うなどのコンピュータ・ゲームをすることによって、目的とする知識・技術を習得する。 D問題解決−コンピュータから示された各種のデータをもとに、ある問題に関して学習者が判断と決定を行い、その決定によってもたらされると予想される結果がコンピュータから示される。 E学習情報提供−コンピュータが学習者に学習ニーズなどを聞いてくる。学習者は画面上のメニューからそれに回答する。これを繰り返すことによって、学習者の求めている学習情報が絞られた上で提示される。  CMIは、次のような場面で使うことができる。 @生涯教育情報の管理と検索 A生涯教育諸計画の策定と管理 B教材・教具の管理と編集・加工 C集団学習参加者の編成と分析・把握 D学習評価、事業評価等の処理 Eその他、人事・会計等庶務的事項 これらは、次項に示したコンピュータ(パソコン)の諸機能を活用するものである。  CAI、CMIの他に、情報化、ハイテク化の社会においては、コンピュータそのものについて学ぶための援助も大切である。そこでは、コンピュータリテラシー(コンピュータを使って読み書きする能力)の修得とともに、コンピュータを批判的に使いこなすための主体性の獲得が重要になる。 パソコンの機能の種類と内容 現在、ますます安くなり普及しつつあるパソコンは、生涯教育の有効なツールといえる。パソコンは、ソフトの利用によって次のような機能を発揮する。 @表計算−表の縦、横のありとあらゆる種類の計算やグラフ化などをやってしまう。修正、挿入、削除等も自由。数字の訂正も、従来のようにけしゴムを使って悪戦苦闘する必要がなくなる。 Aデータベース処理−データを記憶し、それを必要に応じて必要なものだけ引き出せる。文書や名簿等の管理が可能。一人でも気軽に心ゆくまで求める情報を検索し続けることができる。 B文書作成−パソコンワープロのソフトを利用し、ワープロ専用機と同等のことができる。文章の訂正、削除、入れ替えなどが自由なので、書き始めから悩まずに、好きな所から書ける。書斎の中でもの書きに専念しなくても、仕事や家事の合間に「書き言葉文化」の創造主体になれる。 C作図・作曲−これらは新しい芸術形態である。技術的に熟練していなくても、いろいろな表現(繰り返し、バリエーションなど)ができる。集合しなくても共同創作が可能。 Dニューメディア端末−パソコンから大型コンピュータなどを制御する信号を送ることができる。情報を受ける側が、流される情報を一方的に受け入れるのではなく、取捨選択し、逆に情報や意見を返すこともできる。 Eプログラミング−その他、必要に応じてプログラムを作れば、多様な仕事をすることができる。また、プログラミングの知識がなくても、CAIのプログラムが比較的簡単に作れるようなソフトもある。 資料 1.消費者情報に関するコンピュータ利用の必要性  東京都消費者情報オンラインシステム(MECONIS)に関して、コンピュータを利用する必要性が、次のようにまとめられている。コンピュータを利用する場合、このように外部への情報サービスと、内部の職務遂行のための利用の両方の必要を満たすことができれば、より効率的である。 @迅速に収集・処理できるシステム A大量の情報を集中管理することのできるシステム B多面的検索のできるシステム C自動集計のできるシステム D関連ファイルを相互参照できるシステム E総合的データベースシステム Fどこでもアクセスできるシステム 2.中・大型コンピュータ処理のプロセス  一般的な工程は次のとおりである。FからはBに戻る。BからEの処理は委託するのが普通である。 @開発計画策定−目的、年度計画、必要な資源・組織・人員・教育、委託範囲の決定等 A調査分析−たとえば、学習情報提供システムなら、学習需要、学習機会の実態等 Bシステム設計−基本設計・詳細設計 Cプログラム作成 D入力処理−カードパンチ等。システムを運営する者は、正確で充分なデータをそれまでに用意しておかなければならない E機械処理−アウトプットの作成 Fシステムの評価−システム自体の検討と、情報の活用の状況等 3.高齢者対象のパソコン教育プログラム(試案)  このプログラム(試案)では、ベーシックなどのプログラム言語から始めるのではなく、最初から既成ソフトなどを活用することによって、気軽に楽しく、実践的に学習できるようになっている点が注目される。(出典は国立教育会館社会教育研修所「高齢者対象の学習プログラム(試案)」) 基礎課程 @パソコンにさわってみよう(ゲームソフト) Aパソコンワープロの基本的操作 B表計算ソフトの基本的操作 Cデータベースソフトの基本的操作 D作図ソフトの基本的操作 Eパソコン通信の基本的操作 専門課程 @パソコンの用語 Aパソコンワープロの多彩な機能 B地域を数字でとらえる(表計算ソフトの応用) C地域関連データベース構築演習 Dパソコンで芸術創作(作図、作曲) E地域パソコン通信ネットワークの方向 F教育ソフトの種類とその活用方法             (西村美東士) データ通信 (英)Data Communication 定義 パソコンや中・大型電子計算機などに通信制御装置(モデム)を付加することによって、それぞれのコンピュータを電話回線などの通信回線で接続し、情報のやりとりや処理を行うこと。 意義 データ通信では、従来、文字や音声で表現されていた情報が「電子化」(ディジタル化)される。今日の情報化の進展は、この情報の「電子化」に負うところが大きい。「電子化」によって、情報のより即時、大量、正確なやりとりが可能になる。  特に即時的(リアルタイム)であることは、時間と距離の問題を克服する。情報発信した瞬間に、受信者によるその情報の受信が可能である。また、それは、交通手段などの物理的制約がないため、空間超越的である。 機能 「電子化」されることにより、その情報は、流通やコンピュータ処理の操作がかなり自由になる。その自由性を活用したデータ通信の機能として、次のようなものをあげることができる。 @データの収集と分配−ホスト(コンピュータ)にデータを集中し、端末から必要なデータを検索して取り出すことができる。 A問い合わせと応答−リアルタイムに端末とホストのやりとりができる。 B端末どうしのメッセージ交換−リアルタイムに双方向のやりとりができる。 Cタイムシェアリング−他の端末と細分化した時間づつ、交互にホストのコンピュータを利用しあうことにより、外見上、同時利用が可能になり、一つの端末があたかもホストを占有しているかのような利用ができる。 Dコンピュータ間通信−大きな能力をもったコンピュータどうしで、お互いのデータや処理能力を相互利用することができる。 活用方法 データ通信は、身近な所では、列車の座席予約や銀行のオンライン預金システムなどに活用されている。学習情報の提供などにあたっても、これらの機能が有効に活用されることが望まれる。  しかし、さらに生涯教育関係者は、データ通信の一種としてのパソコン通信(パソコンネットワーク)に特に注目する必要がある。  パソコン通信とは、狭義には「パソコン間通信」、すなわちパソコンどうしの直接の通信という意味であるが、今日では、ホストのコンピュータを仲介にして、家庭や職場などのパソコンが通信のネットワークを形成することを意味する方が一般的である。その中には大型コンピュータをホストにしている商業ネット(有料のネットワーク)もあるが、個人の自宅のパソコンをホストにする草の根ネットもある。  パソコン通信は、個人が余暇時間に自宅のパソコンで、学習の一次情報や二次情報を受信、編集、加工、発信できるので、活用の可能性は大きい。 学習の新しい動向 たとえば、高田正純はパソコンネットワークを個人が利用する魅力を指摘し、これを知的興味と人間どうしのふれあいへの志向をともに充たすものとして評価している(参考文献@)。さらに、パソコン通信で交流されている「知」が、新しい傾向をもっていることも指摘できる。知の「ボランタリズム化」、「アマチュア化」、「個別化」、「雑多化」、「民主化」、「非体系化」である(参考文献A)。  パソコン通信においては、自分とは異質な人から、予想外の異質なレスポンスを得ることがその醍醐味である。自己の自立的価値をもちながら、「異質」と交流しようとするこの志向は、ネットワーク型の新しい学習を生み出しつつある。 参考文献(パソコン通信関連) @高田正純「データベースを使いこなす−英語でとる世界情報−」、講談社、1985年 A西村美東士「パソコン・パソコン通信と青年」、川崎賢一編『メディア革命と青年』、恒星社厚生閣、1989年 用語解説(パソコン通信関連) アップロード 文章等を仕上げてディスクに記録しておき、それを一気に送信すること。 ダウンロード 受信内容をディスク等に記録しておくこと。あとでゆっくり読んだり、編集・加工・印刷したりする。 コマンド 端末のパソコンからホストに「指令」を出すために事前に決められた文字列。 システムダウン ホスト側の事故などにより、通信不可能になること。大いに起こりうる。 パスワード 匿名でも参加できるパソコン通信において、ホスト側に会員であることを唯一、証明するためのいわば暗証番号。 ID番号 ネット上での会員番号。自分の書き込んだ記事には、自動的に付加される。 ハンドルネーム 自分で設定する自分の愛称。ネット上では、本名やID番号ではなく、これで相手を呼びあうことが多い。 SIG Special Interest Group、特定事項への関心を持つグループ。「棲み分け」の役割をはたすが、誰でも見れるのが普通。 シグオペ SIGの「世話人」。商業ネットにおいても、ボランティア的色彩が強い。 電子メール パソコン通信を行う会員どうしの「郵便」。通信相手だけが読める。 チャット 通信内容を蓄積せずに、リアルタイムにおしゃべり(筆談)するシステム。 レスポンス 記事を読み書きする中で与えられる、自分の記事への他者からの反応。 ROM Read Only Members、つまり「他人の記事を読むだけの人」。造語である。 WOM Write Only Members、つまり「どんどん書きまくるけれども、内容が独善的なためレスポンスしにくい人」を皮肉った言葉。 PDS パブリック・ドメイン・ソフト。個人等が作成し、財産権としての著作権を放棄して他の個人・団体に提供するソフト。 草の根ネットワーク 営利を目的とせず、個人や非営利団体がホストになり運用するネットワーク。 アイボールミーティング 電子上(オンライン)ではなく、実際に相手と「目を合わせる」宴会・集会等。 資料−−パソコン通信のSIGの実際の種類 たとえば、アスキーネット「ACS」には、次のようなSIGがある。(1989年2月現在) @SIG・リクエスト(SIGを新しく開設するよう提案するコーナー) ASIGエリア・A 1:コンピュータ 2:スポーツ 3:音楽 4:センス・オブ・ワンダー 5:The Work 6:パーソナリティ 7:現代用語の余分知識 8:競馬 9:サイエンス 10:料理 BSIGエリア・B 1:英語 2:ウィザードリィ 3:物・者・モノ・広場 4:旅行 5:ライティング 6:路上観察 7:シネサロン 8:SYSTEM手帳 9:写真・イメージ CSIGエリア・C 1:AV 2:自然観察 3:ビジネス・フォーラム 4:CARLIFE 5:アミューズメント 6:教育を考える 7:地方 8:LOVE 9:歴史 10:医療 DSIGエリア・D 1:メディア 2:ハム 3:マッキントッシュ             (西村美東士)