G文化 青少年問題と生涯教育(G1)、社会教育(G2)との関わりに関しては、生涯教育や生涯学習の範囲を広くとらえ直した上で、その一環としての地域参加や体験活動の教育的意義をあらためて評価し、それをいっそう充実させようとする傾向が見られる。たとえば、岡本包治編『青少年の地域参加』(生涯学習のまちづくりシリーズ5,ぎょうせい)では、地域に内在する教育力を、「自然」「文化」「人間」と「間接的・無意図的」「直接的・意図的」とのマトリックスから説明し、青少年を「地域の正式なメンバー」として位置づけるよう提言している。青少年の地域参加を促す実践が、地域で数多く行われていることも示されている。  自然体験の重視も特徴的である。国立オリンピック記念青少年総合センターの『自然生活へのチャレンジ推進事業事例集―フロンティア・アドベンチャー』は、文部省補助事業としての本推進事業が全国各地で展開されていることを表しており、山奥や無人島等の大自然の中で、異年齢構成の少年50人が10泊もの長期間の原生活体験を行うことによる欠損体験の模擬的な体験の顕著な効果を示している。青年の家(G2社会教育に所収)等に関しては、生涯学習援助の観点に立ちながら青年や社会の新しいニーズに対応しようとする傾向がますます強くなっていることがわかる。全国青年の家協議会の『青年の家の現状と課題第18集―生涯学習社会の中の青年の家―』では、利用団体の要望や実態に即したきめ細かなサービスや、「祭り」と「学習」による青年と地域との結びの場としての役割などの提言が集録されている。また、国立オリンピック記念青少年総合センターの『全国青少年教育関係施設ガイド―若者と子供の活動広場―』では、全国の施設への直接のアンケート調査に基づき、例えば吹奏楽の練習ができるかどうかなどのそれぞれのデータを細かく掲載している。公共機関が編集したこの種のガイドブックの中では、このような利用者の立場に立った編集方法・内容は大いに注目すべきであろう。  メディア(マス・メディア)との接触(G3文化活動に所収)に関しては、高橋勇悦他『メディア革命と青年―新しい情報文化の誕生―』(恒星社厚生閣)が、新しい視角を掲示している。そこでは、今日の青少年がテレビなどを生まれたときから享受して育った初めての世代であるとの認識のもとに、青少年とテレビ、電話、ファミコン、パソコン、パソコン通信との接触を共感的に分析した上で、「青年を中心として軽いメディア文化が洗練される」として、情報化の主体としての青少年の形態に期待をかけている。その他、小平さち子「幼稚園・保育所におけるテレビの利用」「家庭における子どもとテレビ」(NHK放送文化調査研究所『放送研究と上調査』39巻6号,8号),深谷和子他「電話・手紙」「テレビアニメ(ドラマ)と子どもたち」(福武書店教育研究所『モノグラフ・小学生ナウ』9巻8号、10号)などが、子どもをとりまくメディア環境の今日の変化を、調査にもとづいて具体的に明らかにしている。  団体活動(G6)に関しては、全国規模の団体の中では、まず、中央青少年団体連絡協議会の法人化に伴う動向に注意を傾けるべきであろう。当会発行の『なかまたち』24号では、「21世紀に向けて飛躍する中青連」という特集テーマのもとに、中青連の法人化の3つの目標である「財源の確保と財政自立」「社会的責任の認識と認知」「国際化への対応」について説明している。とくに、「国際化」については、加盟団体の国際交流のための橋渡しや世界的なネットワークづくりなどのための国際的役割についての提言も含まれている。  また、中青連特別委員会提言「青少年団体活動は青少年の自己成長にどう関わるか」では、「個のふかみ」(個の充実)や「MAZE」(何が起こるかわからない「迷路」に挑戦する姿勢)などの新しいキーワードを示しながら、グループワーク理論の再構築、カウンセリングマインドに根ざしたコミュニケーションの創造などによる、青少年の「個」を大切にする団体運営への方向を大胆に提起していることも注目に値する。  その他、「誠実、勇気、自信及び国際愛と人道主義」を目的とするボーイスカウト日本連盟の『スカウト』、『スカウティング』、「立派な品性と奉仕の精神を養う」(目的網領より)少女教育をめざすガール・スカウト日本連盟の『リーダーの友』、子ども会の指導者のための『月刊子ども会』、地域の激変の中で青年団活動をいかに運営するかを探る『青年ーTheSeimenー』などの各種の団 体機関誌が、それぞれ、楽しいイラストを多用しながらメンバーの関心をひくテーマを取り上げた記事で構成することによって、現代の問題状況やメンバーのニーズにマッチした形で、本来の団体固有の教育的目的を実現しようとしていることが読み取れて参考になる。 (担当 西村美東士)