江戸川区民カレッジ第2次「いま、わたしにできること」報告 −自分を大切にするボランティア準備者たち− 昭和音楽大学短期大学部助教授 西村美東士  江戸川区で、前年度(本誌97年10月号参照)に引き続き、本年平成10年の2月から3月にかけて計5回の「区民カレッジ」が開かれた。ぼくは担当の高野さんから全回にわたる講師として関わらせていただいた。  この事業のメッセージは次のとおりである。「あなたにとって自分が生かされ、癒される場所はありますか。いま、私たちにできる社会的活動とはいったい何でしょう。この講座では、自己実現と社会貢献によって成長し、癒されるサンマ(時間・空間・仲間)づくりをして、自分を再確認するとともに、地域で活動するコツを学んでいきます」。これに対するぼくなりに用意した答えは「水平異質交流」である。  例によって表に示したようにワークショップ型の学習形態をとった。 江戸川区民カレッジ「いま、わたしにできること−癒しのサンマを求めて−」プログラム 回 テーマ 内容 ワークショップ・ゲーム等 1 無限の可能性眠っていませんか? 自分を知る、相手も知る 受講動機のディスクジョッキー、第一印象ゲーム 2 あなたの居場所はどこですか? 癒しのサンマづくり 価値観ゲーム(みんな違ってみんないい) 3 ボランティアって誰のため? 地域活動参加のコツ 私の音ゲーム、ブレーンストーミング 4 ボランティアは恋のようなもの きっかけは偶然の出会い ロールプレイ準備(社会に役に立ちたいけれど) 5 自分と下町の未来は変えられる! 経歴を捨てて経験を生かそう ロールプレイ(こんなときどうするビタミン愛)  毎回、各個人から提出された「出席ペーパー」に基づいてディスクジョッキータイムを行なった。最終回のもらいっぱなしのペーパーに関して、この紙面でディスクジョッキータイムを再現してみたい。 ◆今回もとても楽しかったです。これからもこういう講座がたくさんあったらいいし、ずっと続けてもらいたいと思います。(mito)→ ありがとう。今、振り返ってみて、自分個人の学習が、現代的課題(ぼくの言葉では公的課題)の学習になっていたと思いませんか? これからも上下同質競争社会のなかでのオアシス(癒しのサンマ)をめざします。 ◆1週お休みしましたが、大変お世話になりました。皆様の機転のするどさに感心しました。ロールプレイは、あ・あ・あというくらいに皆さんがまとめられていて感心しました。楽しい頭の運動をしました。(mito)↓ 感性と知性の刺激にあふれてましたよね。「おもしろくなければ生涯学習じゃない」、これでやっていきたい。 ◆毎回楽しい時間をありがとうございました。楽しいだけではなく、自分を見つめ直し、深く考えることができ、とっても勉強した気がいたします。生涯学習を身近な所に見つけ、これからも前向きに小さな一歩を歩んでいきたいと思います。(mito)↓ 自己認識、自己洞察のきっかけづくりは、教育(社会教育)の重要な働きです。 ◆とても楽しかったです。区民カレッジがなくなることはとても残念です。これからは生涯学習が必要になると思うし、子どもの手が離れてこれから好きな勉強をしたいと思っていたところでしたので残念です。時代に逆境していると思います。(mito)↓ そうですね、ちょっと残念です。まあ、今回のように「魂のある人」が集まりさえすれば、どんどん自発的にいくらでもやれますので、深刻な問題ではないとは思いますが。 ◆今日が最後だということでとても淋しいです。もう少しmitoちゃんと勉強したいので次もお願いします。ステキな出会いでした。ビタミン愛とは素晴らしい愛だと思います。楽しかったです。自分のまわりの方々がとても立派にみえました。(mito)↓ いい感じ! 普通の上下競争社会では、「まわりの方々がとても立派にみえる」のはつらいことなのにね。 ◆攻撃的な言い方でなく、さわやかな自己主張「私は今は‥・」という断り方で、自分の首を絞めないように話をする方法というか、きちんと主張すること、そうしたらいろいろな人たちと交流する時に感じよく伝わるかなと思いました。気がついたら自分のためになっていたというボランティアをできたらと思いました。(mito)↓ 自他への信頼がさわやかな自己主張(アサーション)の基盤であり、それが共感や共生を可能にするということができるでしょう。 ◆全5回中1回欠席、他の4回すべて遅刻でした。申し訳ありません。毎回とまどいながらも結果的に楽しい時間を過ごすことができました。計10回位あれば良かったのに‥と勝手に思ってしまいました。残念です。mitoさんのお話はとても楽しかったのですが、ある意味では「独自の見解」で話をしているようにも思えましたので、70%位の受け止め方でいます。(mito)↓ そうです、ぼくの話は、ぜひ、「まゆつば」で聞いてください。それは主体的学習態度のひとつだと思います。 ◆自分が疑問になっていたことをmito先生が教えてくださり勉強になりました。(mito)↓ 疑うこと、疑問を持つことは、重要な学習権です。自分が知らないということを知ることです。これを無知の知といいます。 ◆「ロールプレイ」どうなることやら‥と思っていましたが、話し合っているうちに解決の糸口が見えて(mitoさんのお陰で)見ている方たちにも納得していただいたようなのでよかったと思いました。色々なやり方を教えてくださり有り難うございました。皆様全員に感謝します。(mito)↓ どうなるかわからない状態、ぼくもみなさんもそれが不安なのも事実だけど、じつはその状態が、「みんな違ってみんないい」という支持的風土さえあれば楽しい状態でもあるんだということでしょうね。それは、『かくろん』で展開したMAZE(迷路)を楽しむ自由でわがままな子ども心の発想なんだと思います。 ◆今回のmitoさんの講義はほとんど出席できなくて残念でした。ロールプレイは難しかったですが、楽しかったです。今後は自分らしく少しずつでも誰かのためになり、しいては自分のためにもなる何かをしたいと思っています。(mito)↓ 「自分のためにやってます」という言葉は、潔くて気持ちのいい自己決定の言葉ですよね。 ◆5回出席できました。久しぶり新鮮な時間を過ごせました。家庭に引きこもっていたので、お話にすんなり入るのに少し努力が必要でしたけど、とにかく皆勤できました。ありがとうございました。(mito)↓ 家庭に引きこもっていた主婦が社会参加するときのためらいの一番の原因は、理由のはっきりしない漠然とした「変化を恐れる心」なんでしょう。そのときのコツは、「初めの一歩」を何メートルもという無茶をせずに、「何センチか少しずつコケないように」ということなのでしょう。 ◆みとちゃんのお話って表現はかるーくなんですが、とっても深いんですよね。生活のなかでいろいろと、こんなことって‥みとちゃんだったらどんな風に話すのかなあって考えています。難しいことを言うのって簡単ですよね。でも分かりやすく伝えることってとても大切な気がします。たくさん伝えてくださってありがとうございました。自分自身、らせん状に少しずつ変わっている気がします。今までは、まだここにとどまってる!と思っていたんですが、まてまて違うぞ!って気づかせていただきました。たくさんのカケラをいただいたので、宝物にします。(mito)↓ 自分が自分と向き合っているとき、つまり自分の快感の実感と、そのための自分の行為の現実検討を大切にていねいに続けているかぎり、人は螺旋状の成長ができるのでしょう。その方向が変えることのできない「過去と他人」に向いて固定化してしまったとき、悩みは自動化し、自身がロボット化し、無限ループ(繰り返し)にはまってしまうのでしょう。でも、そういう落ち込みのときって大いにありますよね。ぼくなんか、そういう潔くない学ばない部分がとても大きいと自覚しています。その場合は、それでもなおかつそういう自分を受容し、「できないものはできないんだから仕方ない」という諦観を得ることが大切なんでしょうね。 ◆ロールプレイ、先週の時点ではどうなることと思いましたがとても素晴らしかったです。どのグループも皆さん考えや思いか深いなあ...とあたたかい気持ちになりました。そう、今回区民カレッジに参加した大きな収穫の1つに、「何と魅力的な熟女が多いことか!」と感心したことがあります。年代が違う人たちと触れ合うのは貴重な体験なのです、私にとって。自分にとって本当に大事なこと、気の持ちよう、本当に素敵と思える人、感心できる人などが新しく認識できるカレッジでした。(mito)↓ 数年前に、18、19歳の女子学生たちが、「ハタチすぎたらもうオバサン」ということをしきりに言っていた時期があります。それって、時代の文化がますます「死に急ぎ」の精神的老化に向かっていることの表われだと思います。この出席ペーパーは、そういう現代の「おばすて的価値観」に対抗する、とても若々しい文章だと思います。すてきな高齢社会を作り上げたいものですね。 ◆mitoさんのこと、わたしはやっぱり先生と呼びたい。mitoさんは「先生と呼ばれたくない」と言ってましたが、私は呼びたいのです。それは教えてくれるエラい人という意味ではなく、わたしが大学の教授からの講義を受けたことがないから、大学で学んだことがないからです。高校の先生とは違う大学の先生を知ったうれしさから、大学に(mitoの?)行きたかったんですよ。5回にわたっての講座、とてもタメになりました。結局は自分に自信をもつこと(私にとってはたぶんそうなんです)、それが第一歩につながるのですね。その自信のつくりかたの大きなきっかけになりました。(mito)↓ 自分を信じて生きていけるって素晴らしいことですよね。そのためにも、生涯学習、ボランティア、市民活動などの貴重な自己決定活動のなかで、この世にまれなる「癒しのサンマ」をこれからも味わっていきたいです。 注:「サンマ」のあり方については、自著『癒しの生涯学習 −ネットワークのあじわい方とはぐくみ方−』(学文社、一九九七年)を見ていただけるとうれしい。 「江戸川区民カレッジ」 江戸川区教育委員会学習・スポーツ振興課生涯学習係 担当:高野正樹 5662-1628(直通)