合併時代のコミュニティにおける 市民活動とその支援方策に関する研究 研究報告書 2004年3月 NPO法人全国生涯学習まちづくり協会 W 合併時代に向けた南淡町のまちづくりに関わる市民活動と生涯学習の事例研究 徳島大学大学開放実践センター教授 西村美東士 1 南淡町の状況分析  われわれは以下のように「南淡町の概要」(1)から、市町村合併に向けた期待や不安の要因を分析した。 1-1 南淡町の位置と都市化の進行  南淡町は、淡路島南部とその南方に位置する沼島とからなり、北緯34度16分で兵庫県の最南端に位置している。東は洲本市と紀伊水道に面し、南は太平洋を臨み、西は鳴門海峡を隔てて四国に対し、北は西淡町、三原町と接している。  図1-1@及びA(ともに南淡町公式ホームページより)から兵庫県のなかでは一番「南はずれ」の位置にあることがわかる。 図W-1 南淡町の位置 図W-2 南淡町周辺の市町  図W-1から、本州四国連絡橋の開通により、神戸や徳島との交通が便利になったことは明らかである。とくに大鳴門橋はすでに昭和60年に開通しており、徳島市内からは車で半時間で南淡町に行くことができるようになった。しかし、とくに大都市に関心をもつ若者にとっては、神戸からは依然として一番「南はずれ」であることが、その精神的風土に影響を与えていると推察される。また、多くの町民にとって、「素朴」「のんびりしている」、反面、「世の中の趨勢にうとい」などの精神的風土として影響を与えていると推察される。  しかし、本州四国連絡橋の開通が、町民の精神的側面やその他の経済的側面などで、いわゆる「都市化」の進行に拍車をかけることは必須と考えてよいだろう。しかも、そういう状況下で、市町村合併が行われることになる。われわれは、「兵庫県最南端」に位置する南淡町の事例研究をとおして、今後の市民活動や生涯学習をいっそう活性化させるための課題を明らかにしたい。 1-2 産業 1-2-1 農業  農業は水産業とともに、南淡町の主要産業として町の発展を支えてきたが、高度経済成長期を通じての急激な産業構造の変化の影響を受けて、農家数の減少、農業労働者の高齢化及び後継者不足、また農産物の輸入自由化等により農業経営を取り巻く情勢は厳しいものがある。  現在の農用地面積は1,050ha、農家総数1,500戸で農家割合は22.9%となっている。また兼業農家率79.5%、平均耕作面積0.70haと小規模である。(2)  しかし、平均気温16度、年間降水量1,400mmと恵まれた気象条件と昭和40年代の栽培技術の開発により、水稲、レタス、白菜、玉葱の三毛作体系が確立している。また一部では、酪農和牛の飼育等との複合経営を展開し、農地利用率は190.7%に達している。  ほ場整備率は33.0%に過ぎず、農業生産基盤の整備が遅れているため、農業機械の導入に支障をきたし、労働生産性が悪い。 1-2-2 林業  南淡町の森林は、一般的に生産性が低く、造林の適地は少ないが自然環境の保全、水源涵養等の公益的機能を有している。森林面積は、5,832haのうち1,420haが保安林に指定され、自然環境の保全に貢献しているが、近年松くい虫の被害が著しく壊滅状態となっている。 1-2-3 水産業  南淡町の漁業は、小型底引き網、一本釣、船びき網、刺網、定置網等による漁船漁業のほか、のり、わかめ、ハマチ等の養殖漁業も盛んに行われ、その生産額は20億円に達している。とりわけ、鳴門海峡、紀伊水道を擁し、内海屈指の好漁場が数多く点在しており、高級魚の宝庫として、タイ、サワラ、カレイ、タコ等の島内屈指の水揚げを誇っている。  漁業経営体数は428、漁船数は720隻でほとんど3トン未満の小型漁船による沿岸漁業の零細経営であるが、徐々に動力化、大型化が進んでおり、近代的装備による能率化と操業拡大によって漁業生産力は確実に向上している。また、シラス、のり、蒲鉾等の加工産業も盛んに行われている。しかし、産業排水、生活排水等の流入は漁場の荒廃をもたらし、漁業生産力を低下させつつある。現在、漁業の基地として灘・仁頃・沼島の3漁港と阿万港内・福良湾内の漁業施設の55ヵ所があり、逐次整備が行われている。 1-2-4 商業  商業の中心として繁栄していた福良地区は、昭和60年の大鳴門橋、平成10年の明石海峡大橋の開通により島外・町外への購買者の流出が多く、また島外からの観光客が通過型になり福良の商店街はさびれつつある。このため、福良湾周辺を再開発し、昔の賑わいを再生しようと取り組みを行っており、平成11年4月ふるさと活性化センターが竣工し、活気を取り戻しつつある。  若手商業者を中心に新たな商圏拡大を求め、賀集地区に大型ショッピングセンターを出店した。また、ほぼ同時期に同地区に全国チェーンの大型店舗が出店されている。 1-2-5 工業  工業は、タイル・瓦等の窯業、小型鉄鋼船を中心とする造船、元禄末期にはじまったといわれる手延べ素麺といった地場産業、また一流企業の電池工場もある。 1-3 文化・観光 1-3-1 文化  500年の伝統をもった淡路人形浄瑠璃は大鳴門橋記念館で常時公演しているため、後継者も育ち、国内はもとより海外にも公演に出かけている。その他にも、だんじり歌風流大踊小踊、各町内会に伝わる伝統芸能も伝承されている。 1-3-2 観光  変化に富んだ海岸線を有しているため景勝の地が多く、とりわけ鳴門海峡に干満の差でできる渦潮は有名である。大鳴門橋・渦潮を望めるみさき荘・大鳴門端記念館、淡路人形浄瑠璃館、福良湾を取り囲むように南淡路国民休暇村・戦没学徒記念若人の広場・海洋センター・海釣り公園・オートキャンプ場がある。吹上キャンプ場・国立淡路青年の家・阿万海岸海水浴場が阿万地区にあり、また灘には500万本の花が咲き乱れる黒岩水仙郷があり、12月〜2月まで楽しめる。  さらに磯釣りのメッカの沼島等々の観光施設や資源が数多くあり、またホテル・旅館・民宿等の宿泊施設も十分にあり、年間の入り込み観光客は通年80〜100万人にのぼる。 1-3-3 文化施設  町内の主要な文化施設は図1-5のとおり、福良地区に集中している。しかし、他の地区公民館にも職員が配置されている。合併後も、これらの生涯学習基盤を充実することが重要といえる。 図W-3 南淡町の主要な教育・文化施設 1-4 その他人口動勢等  南淡町の人口(平成12年度国勢調査)は19,707人、世帯数(同)6,541世帯、面積86.92q平米である。平均年齢(平成12年国勢調査)は45.7歳(男44.2歳、女47.1歳)で、高齢化率は平成2年、7年、12年で、19.4%、22.8%、25.7%と増加している。(3)  賀集村、福良町、北阿万村、阿万町、灘村、沼島村が、昭和30年4月町村合併により、南淡町となった。予算規模(平成13年度)は10,360百万円(一般会計)、10,320百万円(特別会計)で、財政力指数(平成10年〜12年度)0.493、公債費比率(平成11年度)14.7、経常収支比率(平成11年度)77.5、ラスパレイス指数(平成12年度)97.1である。 1-5 ISO14001認証取得と環境意識  南淡町は2001年8月、環境マネジメントシステムの国際規格「ISO14001」の認証を、淡路島内の自治体では初めて取得した。(4)  町勢振興計画では、「生活環境の向上を目指し、環境に負荷をかけないISO14001の認証取得を推進することにより、行政、住民、事業所等が一体となった環境意識の醸成を図り、地域が連携して住みよい環境づくりを推進する」としている。そこで、行政自らが環境への配慮を率先垂範して臨むために、南淡町役場本庁舎における事務事業を登録活動範囲として、ISO14001認証取得を目指し、平成12年5月に、「環境管理推進委員会」を設置し、全庁的体制を組んだ。  この規格は、法的要求事項及び著しい環境影響についての情報を考慮しながら組織が方針及び目的を策定しうるように、環境マネジメントシステムの要求事項を規定し、組織が管理でき、かつ影響が生じると思われる環境側面に適用するものである。そして、環境マネジメントシステムを実施し、維持し及び改善することになっている。  南淡町公式ホームページでは、具体的には、南淡町が与える環境影響の継続的な改善及び汚染の予防を実施するための環境方針を作成し、ハイブリッドカー等の購入、毎月清掃の日の実施、環境パトロール実施等の一般事業、下水道整備による水質保全、道路・公園緑化推進等の公共事業及び電力・水道・燃料・紙類消費量削減対策等のエコオフィスなど36項目について全庁的な取り組みをしている。また、今後は、3ヶ月毎の自己診断と1年毎の内部監査と審査機関による定期審査が実施され、取り決め事項が正しく行われているかが厳しくチェックされることになっているとしている。  このような環境マネジメントの取り組みにとって、行政だけの独走で終わるのか、それとも「行政、住民、事業所等が一体となった環境意識の醸成」(町勢振興計画)が図られるのかということが成否を分ける重要な課題と考えられる。その意味からも、今後の市民活動や生涯学習に期待されるものは大きいといえる。 1-6 「21世紀総合計画」基本構想と教育・文化振興施策  南淡町は、2000年1月、「21世紀の南淡町のまちづくりを長期的な視野」から進め、「総合的かつ計画的な町政の運営」を図るため、南淡町振興計画「21世紀総合計画」を策定した。  南淡町長森紘一は南淡町公式ホームページにおいて、そのねらいを次のように説明している。  21世紀総合計画では、『こころ豊かな青春のまち』を町の将来像に掲げている。幻の詩人といわれるサムエル・ウルマンが「青春」という詩の中で「青春とは人生のある時期ではなく、心の持ちかたを言う」、そして「年を重ねただけで人は老いない。理想を失うとき初めて老いる」とうたっている。町民1人ひとりが、いつまでも心豊かで、理想を失うことなく希望にあふれた【青春】の心を持ち続けられるまち「南淡町」をめざしている。  21世紀のまちづくりは、町民の皆様が主役であり、主体的な参加・参画が必要不可欠である。先人に恥じない、子孫に誇れるふるさとづくりのため、夢をもって目標を創り、情熱をもって推進し、責任感をもって達成していきたい。  町民が主役になり、参加・参画することによって「まちづくり」を実現しようとしたものであり、後述する「コミュニティ・カレッジ」等の生涯学習振興施策の根拠としても重要な理念を表明したものととらえられる。  「計画策定の基本理念」も上記の理念に基づいて次のとおり定められている。  21世紀を迎えた今、少子高齢化、地球環境問題、IT(情報技術)の進展、経済のグローバル化、「物から心の豊かさへ」という価値観の変化、そして地方分権への移行など、社会全体の枠組みが大きく変化しようとしている。  このような情勢のもと、今後の南淡町の持続的発展を目指すためには、効率的な行財政システムの確立と、町民自身がまちづくりの主役であることを自覚し、創意と熱意と努力を持って、自主的にまちづくりに参加・参画する必要がある。  また、本振興計画の実施に当たっても、町民、地域、企業、行政が【自助・共助・公助】の役割分担を明確にし、各自が【自立・自律】の精神をもって互いに協力し、相互のパートナーシップ(協働)のもとに計画の実現を目指す必要がある。そのため、「町民主導の自立と自律のまちづくり」「自助/共助/公助による役割分担と相互協力」を、振興計画策定の基本理念とする。  このことから「町民主導の自立と自律のまちづくり」「自助/共助/公助による役割分担と相互協力」の当計画の基本理念は、「自立した市民像」を根底に描いたものであることがわかる。このような「自立した市民像」は、市民活動や生涯学習活動のなかでの市民の成長によって徐々に形成されるものと考える。  教育・文化振興については「ふれあいをはぐくむまちづくり」と題し、次のような施策が掲げられている。  学校教育については次のとおりである。  開かれた学校づくりを推進するとともに、施設等の拡充、教育環境の整備・充実を図る。また人権・同和教育を推進し、人を思いやる心身共に健やかな「生きる力」を身につけた児童・生徒の育成に努めるほか、ふるさと教育、いじめ・不登校指導や、養護教育の充実、国際化・情報教育を推進する。  ここで「生きる力」は、いうまでもなく市民の学校教育へのボランタリーな関与を必要とするものと考えられる。  青少年の健全育成については次のとおりである。  青少年の健全な育成を図るため、地域ぐるみの活動への支援や相談体制の充実などの環境づくりを進める。また野外活動やスポーツ・レクリエーション活動、トライやるウィークなど、青少年の自主的な活動を支援する体制の整備や、青少年が安全に活動できる施設の整備を進める。  このように、市民の地域活動としての「青少年健全育成」が重視されている。  文化振興については次のとおりである。  創造性のある文化の香り高いまちづくりに向けて、多種多様な芸術・文化に触れる機会の充実、文化団体の育成など地域文化活動の支援に努める。また町立図書館や公民館等の機能、学習機会の内容の充実や、文化的資源の保護・活用、伝統的行事や淡路人形浄瑠璃などの民俗芸能の保存・継承など、地域文化の振興を図る。  このように、「文化の香り高いまちづくり」のための「地域文化活動」の役割が重視されている。  スポーツ振興については次のとおりである。  誰もが気軽に楽しいスポーツを続け、健康を実感できるような町民スポーツや生涯スポーツの普及・振興を図ります。また総合運動公園の整備を図り、町民がスポーツに楽しめる機会を提供するとともに、スポーツイベント・メニューの充実やスポーツ教室の開催などを進める。  生涯スポーツが競技スポーツ以上に重視されていることに注目したい。  「生涯学習社会づくり」については次のとおりである。  生涯学習と文化活動の拠点として図書館、公民館などの施設の拡充を行うとともに、各種講座の開設、サークル活動への支援、各種文化事業や町民の学習機会の提供等、様々な事業を推進する。また多彩なジャンルの文化の普及に努めるとともに、町民の交流支援や各種情報の提供、学習相談体制の整備等に努める。  拠点づくりとして施設拡充等の事業がはっきりと位置づけられている。  国際交流の推進については次のとおりである。  国際交流セミナーや広報誌、外国語教育の充実等により国際化の推進を図る。またアメリカ・セライナ市との相互派遣や、小・中学校との交流など国際交流、長期滞在型や日常的な国際交流、町民ボランティアの育成を図るなど、町民参加型の国際交流事業を展開する。  国際交流事業においても町民参加型の展開が志向されていることに注目したい。  以上に述べたように、南淡町「21世紀総合計画」の理念や施策には、市民活動や生涯学習の視点から見ても、積極的な側面がいくつか認められると考える。  合併後、「効率的な行財政システムの確立」(当計画基本理念)を追求しつつ、これらの積極的側面をどのように維持し、さらには新市全体にまで広げていくかということが重要な課題であると考える。 【注】 (1)平成13年度南淡町社会教育課作成資料より。以下同じ。 (2)平成16年度南淡町公式ホームページによると、農用地面積は954haとさらに減少している。農家総数はほとんど変化がない。 (3)それぞれ全国平均は12.0%、14.5%、17.3%、県下平均は11.9%、14.1%、16.9%である。 (4)南淡町公式ホームページより。 2 三原郡における市町合併の概要と住民意識の分析 2-1 三原郡合併協議の経緯  三原郡合併協議会の組織は図2-1のとおりである。 図W-4 三原郡合併協議の組織図  三原郡合併協議の経緯は次のとおりである。(1)  平成10年4月、「郡合併問題検討委員会」を発足。各町議会から5名選出され、20名で構成された。@三原郡だけによる合併(3町か4町)、A洲本市と三原郡を含めた合併、B淡路1市10町を1市に合併する、の3つの方向を含めて調査研究することになった。同年9月、淡路1市に向け、青年会議所が全自治体の議員や職員を対象に合併についてのアンケートを実施し、結果、多数が「合併は必要」とした。平成11年2月、自治省は市町村合併を促進するため、合併した市町村を財政的に支援する合併特例債を新設する方針を決定した。  平成13年4月、三原郡任意合併協議会が発足した。三原郡4町から職員各1名が派遣された。7月、協議会の活動を広くPRしていくため、広報活動を開始した。広報誌「合併情報ホットライン」第1号を発行し、ホームページも開設した。  平成14年2月には南淡町連合婦人会主催の「行政合併を考える女性会議」が行われ、森南淡町長が出席した。4月、緑町・西淡町・三原町・南淡町合併協議会発足式が行われた。10月、淡路青年会議所は、「淡路一市」の実現を目指して、住民発議制度による法定合併協議会の設置に向け、来年1月下旬に署名活動を行なうと発表し、一市10町の合併協議会設置を各市町に直接請求した。11月、洲本市を含む広域合併を目指す「市町合併を考える会」が事務所を開設し、住民投票に向けて活動を展開した。  平成15年12月6日、合併協定の調印式が行われ、三原郡4町を廃止し、新市「南あわじ市」を置く廃置合の申請が行われた。平成14年4月の合併協議会設置から1年9ヶ月を経て、合併協定の調印、4町議会の議決がなされ、合併の内容が確定し、知事の正式決定を受けるための県への申請が行われ、平成17年1月11日に、新市「南あわじ市」が誕生することになった。(2)  森紘一町長は次のように述べている。「住民にとってこれから本当に大切なことは、“どのようなまちになるのだろう”という消極的な不安を抱くことではなく、“このようなまちにしよう”という積極的な姿勢であり、意見や知恵を出し合い、立派な新市建設に取り組んでいこうという主体性であると考えております。このたびの合併は、行財政改革の始まりであると同時に、100年先、200年先の『夢のあるまちづくり』の第一歩でもあります」。(3)  森町長のいう市町村合併における住民の主体性の涵養や発揮のためには、市民活動やそのための生涯学習の活性化が求められていると考えられる。 2-2 合併に関する平成14年当時の住民の意識  新市建設計画に住民の意見を反映させることを目的に、平成14年にアンケート調査が実施された。本研究では、これをもとに合併に関する当時の住民の意識を分析した。アンケート調査の内容や、結果については次のとおりである。(4) 2-2-1 調査目的  三原郡4町が合併した場合の新しいまちづくりの方向性を示す「新市建設計画」の作成に向け、住民の生活、行動実態、行政サービスの満足度、地域の将来イメージ、重点的に取り組んでいくべき施策等について、住民の意識を把握する。 2-2-2 調査対象等 1. 調査対象:三原郡4町在住の20歳以上の男女(2,500人を無作為抽出) 2. 調査方法:郵送配布、郵送回収 3. 調査期間:平成14年5月10日〜5月25日 2-2-3 回収結果  配布数は2,500、回収率は42.0%であった。町別内訳は次のとおりである。 表W-1 回収結果 合計 緑町 西淡町 三原町 南淡町 回収数 1,050 120 236 306 378 2-2-4 結果1−合併への期待  「4町が合併するとしたら、どのようなことを期待されますか(3つ)」についての結果は次のとおりである。 (A) 公共料金など住民負担の低減と高い水準に合わせることによる行政サービスの向上 (B) 職員数や議員数の削減などによる行政経費の削減や行財政運営の効率化 (C) 地域のイメージアップや存在感の向上による企業誘致、若者の定着促進 (D) 道路や公共施設の効率的な整備など広域的視点にたったまちづくり (E) 利用可能な行政窓口の増加による住民票発行などの窓口サービスの向上 (F) 専門職員の配置などによる行政サービスの高度化、多様化 (G) 地域資源の連携による、観光・交流活動の活性化 (H) スポーツ・文化施設などの公共施設の相互利用と、類似施設の整備回避 (I) 重点的な投資による質の高い施設整備や大規模な事業の実施 (J) その他 (K) 無回答 図W-5 合併への期待  ここで上位に挙げられた「地域のイメージアップや存在感の向上による企業誘致、若者の定着促進」は、次の「道路や公共施設の効率的な整備など広域的視点にたったまちづくり」と同様に「広域的視点にたったまちづくり」の一環としてとらえられる。それらが合併への期待として「行政サービスの向上」や「行財政運営の効率化」の次に上位にランクされていることは、多くの市民が合併の積極面としての「広域化」を、まちづくりの範疇の事項としてもとらえていることの表れと考える。  また、「地域資源の連携による、観光・交流活動の活性化」と次の「スポーツ・文化施設などの公共施設の相互利用と、類似施設の整備回避」は、順位はやや落ちるものの、資源や人の連携・交流・相互利用が合併後の新市に期待されていることを示している。これらは「ネットワーク化」の志向としてとらえることができると考える。  以上のことから、市民は、行政のサービス向上や効率化の面だけでなく、「まちづくり」の面からも、「広域的視点」に立ち、「ネットワーク化」を進めることが重要と考えていると推察される。 2-2-5 結果2−合併への不安  「4町が合併するとしたら、どのようなことを不安に思われますか」についての結果は次のとおりである。 (A) 町の規模が大きくなり、行政と住民との距離が大きくなる (B) 公共料金が高くなり、住民負担が高くなる (C) 一部の地域だけが発展し、その周辺部が取り残される (D) 行政サービスや住民負担において地域格差が生じる (E) 不安はない (F) その他 (G) 無回答 図W-6 合併への不安  「町の規模が大きくなり、行政と住民との距離が大きくなる」という不安が第1位であることは、先述の「広域化」と「距離の近さ」との二律背反の重大さを表すものといえる。市民活動や生涯学習活動が前節で述べたように「自立した市民像」に向かうものであるとしたら、そこでの「行政との協働」は、この「二律背反」の問題を本質的に解決して、広域化、ネットワーク化に進むものでなければならないと考える。 2-2-6 結果3−合併後のまちづくり  「合併後のまちづくりについて(複数回答可・全体)」についての選択肢は次のとおりであった。 (A) 医療・救急、防災体制の整ったまち (B) 商工業の活性化、新産業の育成 (C) 環境を保全し、豊かな自然の中で暮らせる (D) 農林水産業のさかんなまち (E) 高齢、障害者の生活や女性の社会参加 (F) 通勤・通学が便利 (G) 道路・公園、商業施設など整備され便利 (H) 観光・リゾート、交流のまち (I) 地域住民の自治・コミュニティ活動が活発 (J) その他 (K) 不明  その町別の結果は次のとおりである。   図W-7 合併後のまちづくり 町別結果  年齢別の結果は次のとおりである。     図W-8 合併後のまちづくり 年齢別結果  大震災の影響もあり、「医療・救急、防災体制の整ったまち」への期待が大きい。とくに防災については、市民活動や生涯学習の果たす役割が重要と考える。  南淡町の場合、その次に「環境を保全し、豊かな自然の中で暮らせる」への期待が大きい。他方、「通勤・通学が便利」、「道路・公園、商業施設など整備され便利」などの「利便性」に関わる期待がそれほど大きくない。これは南淡町民が「便利さよりも環境」という意識を持っていることを示すものと考える。 2-2-7 結果4−まちづくりへの参加意識  「あなたは今後どのような形でまちづくりに参加したいですか(2つ)」についての結果は次のとおりである。  「特に参加したいと思わない」人たちが3分の一を占めている。一方で「地域や自治会での話し合いや討議の場への参加」、「個人または団体(グループ)で役場議会に提言・陳情」という従来型の参加のほかに、「ボランティア活動を通じてのまちづくりへの参加」、「まちづくりグループ、組織などへの参加・活動」、「住民自らが企画・運営を行うイベントへの参加」などの新しい形態での参加を志向する人も存在している。  従来型の参加の支援のためには、公民館等の地域施設によって「郷土を見直す」等の機会を提供することが効果的と考えられる。また、新しい形態での参加の支援のためには、ワークショップ等の学習機会を提供して、いわば「協働のための技術」の学習を促進することが効果的と考えられる。そして、「特に参加したいと思わない」人たちに対しては、従来型や新しい型の参加を行う人たちと出会う機会を提供することがもっとも効果的と考えられる。  このようなことから、合併後、広域化し、ますます多様になることが予想される市民ニーズに対して、一律、一斉、画一ではなく、ニーズの類型に応じた適切な支援を多様、個別、柔軟に展開する必要があると考える。 (A) 特に参加したいと思わない (B) ボランティア活動を通じてのまちづくりへの参加 (C) 地域や自治会での話し合いや討議の場への参加 (D) まちづくりグループ、組織などへの参加・活動 (E) 住民自らが企画・運営を行うイベントへの参加 (F) 個人または団体(グループ)で役場議会に提言・陳情 (G) その他 (H) 無回答 図W-9 まちづくりへの参加希望  「今後参加したいと思う活動(2つ)」についての結果は次のとおりである。  第1位の「環境美化活動や花づくり活動」をはじめ、第3位までの「老人クラブや婦人会などを通じた地域活動」、「不用品回収やリサイクル活動」は、従来型のコミュニティ活動の一環として受け止められて回答されたと推察される。他方、次の「福祉ボランティア活動」等は、コミュニティレベルを越えた「特定のテーマに基づく活動」、それも必ずしも地域団体に所属して活動するとは限らない活動として受け止められたと推察される。それに対してもある程度のニーズがあった。  すなわち、まちづくりへの参加希望についても、「コミュニティ型」と「テーマ型」、団体型と個人型などの「混在」が認められる。  その点からも、まちづくりへの住民参加のためには、先に述べたような支援の多様化、個別化、柔軟化が求められると考える。 (A) 環境美化活動や花づくり活動 (B) 老人クラブや婦人会などを通じた地域活動 (C) 不用品回収やリサイクル活動 (D) 福祉ボランティア活動 (E) 歴史遺産・伝統文化保存活動 (F) まちおこし活動 (G) 自治会活動 (H) 子ども会や青少年健全育成活動 (I) 農協や商工会などの組織を通じた地域活動 (J) 防犯・防災活動や交通安全活動 (K) その他 (L) 無回答 図W-10 今後参加したい活動 2-2-8 結果5−期待する教育・文化施策  「学校教育について4町が合併した場合、重点的に取り組んでいくべき施策は(2つ)」についての結果は次のとおりである。  「わかる授業など、基礎学力の習得の徹底」、「共同性や社会意識を育てる教育」、「生活習慣やしつけの習得の徹底」が上位3位を占めており、「ベーシックへの回帰」の傾向が指摘できる。しかも、「一人ひとりの個性を重視した教育の推進」はやや落ちて4位であり「個性重視の後退」の傾向も考えられる。  そして、IT、国際、産業、体験、ボランティア、パソコンなどの新しいキーワードに関連する項目は下位になっている。  ここで示された市民の意識が、「学校は学校のことを」(そして、家庭は家庭のことを、地域は地域のことを)という過去の保守的な学校観として逆機能しないよう、生涯学習社会の意義や構造、そこでの市民の学校教育への参加の役割等について理解を深めるように働きかけることが重要と考える。 (A) わかる授業など、基礎学力の習得の徹底 (B) 共同性や社会意識を育てる教育 (C) 生活習慣やしつけの習得の徹底 (D) 一人ひとりの個性を重視した教育の推進 (E) 高度情報化社会や国際化社会に対応できる人材育成を視野に入れた教育の充実 (F) 産業体験や環境学習、ボランティア体験など、実践的な体験学習の推進 (G) 校舎・校庭・パソコンなどの学校教育施設・整備の充実 (H) その他 (I) 無回答 図W-11 合併後の学校教育の重点施策  「幼稚園や小学校のあり方について」についての結果は次のとおりである。  「現在の幼稚園、小学校をそのまま残す」が「同級生が多く、子ども同士の交流が活発になるよう幼稚園・小学校の統合を図る」の2倍を占めた。上記結果と考え合わせると、「保守的」、「時代の趨勢よりも便利さ優先(近くにある)」という志向が指摘できると考える。 (A) 現在の幼稚園、小学校をそのまま残す (B) 同級生が多く、子ども同士の交流が活発になるよう幼稚園・小学校の統合を図る (C) 現在のままか、統合などの見直しかの判断に迷う (D) その他 (E) 無回答 図W-12 合併後の幼稚園や小学校のあり方  「社会教育・文化振興について4町が合併した場合、重点的に取り組んでいくべき施策は(2つ)」についての結果は次のとおりである。  「図書館や公民館など身近な文化的活動の場の充実」が群を抜いて第1位であることは、「施設提供」が社会教育行政の重要な機能であるからとはいえ、社会教育がやや古典的なイメージでとらえられていることの表れとも考えられる。今後は、市民の生涯学習活動に対して、選択肢以外にも多様な支援形態があることの理解を広げ、行政と協働できる「自立した市民像」をめざした働きかけをしていく必要があると考える。 (A) 図書館や公民館など身近な文化的活動の場の充実 (B) 質の高い音楽・美術、演芸などにふれる機会の充実 (C) 多くの住民が参加できる体育・文化イベントの企画・開催 (D) スポーツ・レクリエーション施設の整備充実 (E) 各種講座や催し物の内容の充実 (F) 歴史的遺産や文化財の保存 (G) 芸術文化団体やサークルの育成・指導 (H) その他 (I) 無回答 図W-13 合併後の社会教育・文化振興の重点施策  以上のように、教育・文化施策については、やや古典的でベーシックな市民の志向が指摘できた。合併後の新市の教育行政が、どのように「効率的」かつ「協働的」な教育・文化施策に向かって市民に能動的に働きかけることができるのか。このことが重要な課題になると考える。 2-2-9 アンケート結果の総括  以上の検討の結果として、合併に関する住民意識(平成14年当時の南淡町及び合併3町)について図W-14のようにまとめておきたい。今後の行政に望まれる住民への働きかけの方向を白抜き矢印で示した。 積極的側面 コミュニティ活動を 志向 従来型社会教育の 行政サービスを希望 従来型学校教育機能 を尊重 行政サービス向上を期待 行政効率化を期待 便利さより環境 防災意識が高い ネットワーク化を追求 広域化を追求 テーマ型活動を志向 ボランティア活動を志向 従来型 新型 行政との距離が大きくなるのが不安 まちづくりに参加しない 消極的側面 図W-14 合併に関する住民意識と行政の働きかけ  本節の小括として、本図をもとに、行政から住民への働きかけのあり方として、次の4点を強調しておきたい。 @住民の不安感や消極性に対して、積極性に転ずるための多様な働きかけを行うこと。 A住民の精神的風土のもつ積極的な側面を生かして、従来型、新型の活動につながるように支援すること。 B市民活動、生涯学習活動における従来型と新型の混在状況のなかで、それぞれのタイプに応じた効果的な支援を行うこと。 Cたとえば従来型学校教育志向などに対しては、「自立した市民」との協働によるまちづくりに向けて、新型の市民活動や学校教育観への転換を図ること。また、これと同様に、従来型の地域活動における過度な期待感や行政に対する依存的な態度に対しても、新型の市民活動や生涯学習活動への転換を図ること。 【注】 (1)緑町・西淡町・三原町・南淡町合併協議会『三原郡合併協議の現状等報告資料』平成15年5月及び緑町・西淡町・三原町・南淡町合併協議会公式ホームページより。 (2)「緑町・西淡町・三原町・南淡町合併協議会だより」第19号、平成16年1月。 (3)同上。 (4)グラフは緑町・西淡町・三原町・南淡町合併協議会公式ホームページより。 3 南淡町コミュニティ・カレッジの成果と合併に向けた課題 3-1 研究の対象と方法  南淡町コミュニティ・カレッジは、平成14年度から15年度の2カ年にかけて実施された。  初年度の平成14年度は、本事業は、「激しく変化する社会に対応するために、生涯にわたって学習できる環境を整え、学んだ成果が住民の生き方や個性的な町づくりに生かされることを期待」して実施された。コースは、ボランティアコース、ITコース、産業コース、福祉コース、環境コース、若者のまちづくりコースの6つである。  平成15年度は、「あなたの個性や思いをまちづくりに生かしてみませんか。個人でグループで、その思いを生かすためのボランティア活動のあり方を探ります」という呼びかけのもとに行われた。  その趣旨としては、次のように述べられている。「地方分権の時代と言われている今日、自治体に問われていることは、個性的な町づくりである。個性的な町とは、住民が安心して『教育』『福祉』『産業』『文化』を享受でき、民意と民力が反映される町である。このような町を作るためには、ソフト・ハード両面にわたる生活基盤の整備と生涯学習の振興を一体で推進することが肝要であり、そのことによって『人』は輝き、『町』も輝くのである」。  コースは、協働コース、環境コース、福祉コース、情報コースの4つである。初年度に行われた「若者のまちづくりコース」は2年次は実施されなかった。  当カレッジについて、われわれは次のような方法で、市町村合併の視点から、当該事業の意義と課題について検討した。 @各年次各コースの学習プログラム分析 A1年次各コース担当者の「反省」「感想」「コメント」の分析 B1年次「南淡町コミュニティ・カレッジ受講者調査」の分析 C2年次の企画のための各課長レベルの検討会における提出資料「わが課が町民に学習してもらいたいこと」とブレーンストーミング「合併市・市職員・市民、三者の理想像」成果の分析 D「昨年度担当者反省会、新市建設計画、管理職検討会のまとめ」の分析 E2年次「協働コース」成果の事例分析 3-2 各年次各コースの学習プログラム分析 3-2-1 1年次ボランティアコース  講義名は「学習支援ボランティアになろう!」、対象は「ボランティア活動に関心のある者」、ねらいは次のとおりである。「ボランティア新時代」と言われている今日、全国各地で生涯学習を支えるボランティアが多様な場で活躍し地域の教育力を高めている。このセミナーでは、ボランティア活動の基礎的な知識や技術について実践的に学ぶ。  以降に示す他のコースと同様、1年次からワークショップ等の能動的学習方法が導入されている。 表W-2 1年次ボランティアコースプログラム 回 テーマ 学習方法 学習内容 講師 第1回 ボランティア活動とは 講義 ボランティア活動への関心が高まっている。ボランティア活動とは何かについて学習する。 亜細亜大学教授 第2回 学校教育を支援するボランティアの現状と課題 講義 木更津市(千葉)では学校を支援するため市民が立ち上がった。学校教育支援ボランティアの現状について学習する。 千葉県君津出張所指導室 第3回 生涯学習を支援するボランティアの現状と課題 講義 人々の学びを支援するボランティアが増えている。全国の状況と今後について学習する。 国立教育研究所社会教育実践研究センター長 第4回 諸外国のボランティア活動 講義 主としてイギリス・アメリカのボランティア活動の現状とこれからの展望について学習する。 世田谷ボランティア協会 第5回 青少年を育てるボランティア ワークショップ 学校週5日制に対応する事業を企画する。 自然スクールTOEC代表 第6回 青少年を育てるボランティア ワークショップ 学校週5日制に対応する事業を企画する。 自然スクールTOEC代表 第7回 青少年を育てるボランティア ワークショップ 学校週5日制に対応する事業を企画する。 自然スクールTOEC代表 第8回 青少年を育てるボランティア ワークショップ 学校週5日制に対応する事業を企画する。 自然スクールTOEC代表 第9回 学校週5日制対応事業の実施 ワークショップ 子どもたちに呼びかけ、事業を実施する。 自然スクールTOEC代表 3-2-2 1年次ITコース  講義名は「インターネットによる人と人とのネットワークをしよう!」、対象は「文字入力ができる者」、ねらいは次のとおりである。今日の町づくりに求められている人材、すなわちITを便利な道具として使いこなして、人々の自由で活発なネットワークを進めることのできるインターネットボランティアを養成する。 表W-3 1年次ITコースプログラム 回 テーマ 学習方法 学習内容 講師 第1回 ネットワークの作り方 ワークショップ 発言者を一人ぼっちにさせない、たがいに理解しあおうとする「メーリングリスト」シミュレーション(オフライン) 徳島大学教授・技官 第2回 早わかりパソコン入門 実習 何ができるか、仲間づくりでの利用法、ファイル操作と文字入力、ワードを使ってチラシを作ろう 徳島大学技官 第3回 早わかりインターネット入門 実習 接続方法、電子メールとメーリングリスト、チャットと電子掲示板(BBS) 徳島大学技官 第4回 インターネットを体験しよう 実習 チャットで自己紹介してみよう、電子掲示板に自分の意見を書き込んでみよう、他者の発言にレスポンス記事をつけよう 徳島大学技官 第5回 インターネットでおしゃべりをしよう 実習 チャットで気軽なサロンを開こう、匿名やオンライン交流のメリット、デメリットを検討、チャットによるコミュニケーションの留意点 徳島大学技官 第6回 インターネットで意見交換をしよう 実習 BBSで異質の価値を認め合うしゃべり場を開こう、BBSのルール、自分とは異なる他者の発言を支持、支援する 徳島大学技官 第7回 インターネットで発信しよう ワークショップ オンラインとオフラインによるワークショップ、南淡町ならではのIT推進のアイデアをまとめる 徳島大学教授・技官 第8回 インターネットで発信しよう ワークショップ オフラインによるワークショップ、南淡町ならではのIT推進のあり方についてプレゼンテーションをまとめる 徳島大学技官 第9回 まとめ(南淡町のITに参加しませんか) ワークショップ 広く町民に呼びかけ、「私たちの手で南淡町IT推進を」というテーマでプレゼンテーションを行う 徳島大学技官 3-2-3 1年次産業コース  講義名は「目指せ!明日の農業経営者」、対象は「農業経営者および農業に関心を持つ者」、ねらいは次のとおりである。地元地域の農業経営や新しい町づくりを考え、斬新な視野を持った人材、将来を見通せる能力を持った人材を育成する。 表W-4 1年次産業コースプログラム 回 テーマ 学習方法 学習内容 講師 第1回 地元地域の農業の現状を知る 講義 地元地域農業の現状について学習する 徳島県農業大学校 第2回 ここが気になる農業 ディスカッション 農業・農村の問題点の整理 JAあわじ島職員 第3回 見てみよう○○町 講義 先進地を訪ねる前に、少し事前学習を 大塚化学(株) 第4回 魅力ある農業経営の体現者 現地学習会 魅力ある農業経営、農作物、生産状況、栽培技術等のノウハウを学ぶ 大塚化学(株) 第5回 考えよう!私たちの農業経営 ディスカッション 現地学習会を終えて、各々がまとめた所感を発表し、それについての意見を交換する JAあわじ島職員 第6回 生産者と消費者との共存 事例発表 生産者と消費者が共存共栄している事例報告から、私たちの地域で生かせる道を考える 長井市レインボープラン推進係 第7回 よい経営への挑戦 事例発表 労働力を極力おさえ、且つ儲けを落とさない農業経営のノウハウを、実践している方の話を聞き、私たちに生かせる道を考える 南淡町認定農業者 第8回 知らないと損する農家の税金対策 講義 農家の年金、および税金申告時の節税に対する知識を学ぶ JAあわじ島営農指導員 第9回 魅力ある農業経営を実践するために ディスカッション これまで学習してきたこと、体験したことを参考に、魅力ある農業経営実践のための確信に迫る JAあわじ島職員 3-2-4 1年次福祉コース  講義名は「福祉とは何か? 福祉を楽しく学ぼう!」、対象は「地域福祉に関心のある者」、ねらいは次のとおりである。地域の福祉を学び・体験することにより、一人でも多くの住民に「福祉の大切さ!」及び「福祉を自分たちでつくる」といった意識を育成し、実践方法を学ぶ。 表W-5 1年次福祉コースプログラム 回 テーマ 学習方法 学習内容 講師 第1回 福祉ってなあーに? 講義 「今、あなたは幸せですか?」幸せ度をチェックしながら、私たちの暮らしを見つめ、福祉のあゆみと理念を考える。 四国大学教授 第2回 のぞいてみよう福祉の世界 講義 各地の色々な福祉サービスや制度・理念を学び、これからの福祉の制度やサービスの在り方を私たちの暮らしを通して考える。 四国大学教授 第3回 チャレンジ!「福祉生活体験!」 実習 実際に高齢者(身体に重石をつけたり)や障害者(車椅子を使ったり)の立場になって生活を体験し、その大変さを体感する。 すいせんホール施設長 第4回 人にやさしい住まいづくりと町づくりを考えよう! 講義 住み良い安全な家づくり・住まいのリホーム及び福祉にやさしい町づくりなどについて学習する。 県立福祉のまちづくり工学研究所 第5回 我が町探険!「わたしたちの町は人にやさしいかな?」 管内視察 実際に町に出て、道路とか公共施設など町の状況を点検してみる。 県立福祉のまちづくり工学研究所 第6回 身近な暮らしの中から福祉問題を探ろう!南淡町の課題は? 講義・ワーク 講義・体験学習から気づきへの確認をしてみよう!「暮らしやすい私たちのまちとは?」地域福祉の視点から考える。 四国大学教授 第7回 健やかなライフスタイルを目指して! 講演 より質の高い生活を実現するために欠かせない健康づくりについて学習する。 三原健康福祉事務所 第8回 私たちができる福祉活動があるよ。「支え合うとは何か」考えてみよう 講義・ワーク 私たちが忘れていたもの。少しの気づきでできる支え合いのある活動やボランティア活動と実践を学び考えます。 四国大学教授 第9回 豊かな暮らしを目指して「作ってみよう私たちのまちづくり実践!」 ワーク・発表 初回からの講義を振り返り、私たちができる支え合いの活動実践を南淡町の実態から一つ創り上げてみよう! 四国大学教授 3-2-5 1年次環境コース  講義名は「環境革命」、対象は「環境問題について関心のある者」、ねらいは次のとおりである。環境問題について学習し、自らが環境づくりの一員であることを確認した上で環境保護への取組について学習する。 表W-6 1年次環境コースプログラム 回 テーマ 学習方法 学習内容 講師 第1回 身近な環境問題 講義 環境についての知識を深め、あらゆる方向からとらえた環境問題の実態を学ぶ。 岐阜県立森林文化アカデミー 第2回 環境問題を見つめよう 講義 第1回の講義をふまえて、身近な環境問題について話し合い・分かち合い。また、スライド等で南淡町の実態を感じてもらう。 都エコロジーセンター 第3回 ゴミの削減方法 講義 ゴミを根本から減らすことを目的として、ゴミの価値などについて学び、また生産者・消費者・自治体の立場とあり方を学ぶ。 ゴミ減らし通信舎 第4回 リサイクルの知恵袋 ワークショップ リサイクル法の理解と並行して、各々のリサイクルの体験談を発表しあい、環境づくりへの意識の高揚をはかる。 淡路島地球会議 第5回 農・林・漁業の環境問題〜産業と環境の関わり〜 講義 美しい町づくりに取り組むために、第1次産業の占める重要な割合とのつながり、課題について学ぶ。 滋賀県琵琶湖環境部 第6回 はじめよう!環境づくり ワークショップ 自ら取り組むことのできる環境づくりを探る。実習を通して自分に合った環境づくりへの意識を育てる。 環境共育カラーズ事務所代表 第7回 環境に熱心な企業を選ぼう 講義 環境に関する活動内容を「環境報告書」として開示する企業が増えている。環境に熱心な企業とはどのような企業か探る。 (財)地球環境戦略研究機関 第8回 かしこい消費者になろう!〜それぞれの環境〜 ワークショップ かしこい消費者になるためのヒントを現場(スーパー)から得る。体験談等もふまえてそれぞれの立場から感じたことを話合う。 グループ・フラップ 第9回 私たちの環境革命 講義・ワーク これまで学んだことを分かち合い、更に町全体によびかける活動を提案する。 岐阜県立森林文化アカデミー 3-2-6 若者のまちづくりコース  講義名は「将来のまちづくりリーダーになろう!」、対象は「18歳以上35歳までの青年」、ねらいは次のとおりである。若者が自分たちの町の現状を探り課題を明確化することによって、問題意識と自らまちづくりに参画する意欲を持たせる。また、この講座から将来のまちづくりリーダーが誕生することをねらう。 表W-7 1年次若者のまちづくりコースプログラム 回 テーマ 学習方法 学習内容 講師 第1回 意外と知らない、私たちの町 講義 町民でありながら意外と知らないような、南淡町の歴史や文化、産業、生活等について学ぶ。 南淡町文化財調査専門員 第2回 我ら!わが町鑑定団 ワークショップ 自分たちが日頃感じている南淡町の良いところ、悪いところ等を出し合い、明確化し、満足度を点数づける。 徳島大学教授 第3回 あの手、この手のまちづくり体験ツアー・パートT 視察 住民パワーでまちづくりを推進している特色のある町づくり先進地を訪ね、南淡町との違いや工夫を学ぶ。 西脇市まちづくりコーディネーター 第4回 共に考えよう阿波路の明日 交流・ワーク 徳島の若者と一緒にそれぞれの町の良いところ、問題点等を出し合い、共通する課題解決にむけた糸口を見出す。 徳島大学教授 第5回 大学生に学ぶ、まちづくり 講演・ワーク NPO法人等の若手リーダーを招いて活動内容などを聞く。また、まちづくりと若者の役割について考えてみる。 NPO法人ブレーンヒューマニティー 第6回 海釣公園でバーべキュー大会 交流・レクリエーション 徳島の若者と、自然の中でレクリエーション交流を行なう。(海釣り公園での釣り大会とバーべキュー) 徳島大学教授 第7回 あの手、この手のまちづくり体験ツアー・パートU 視察 住民パワーでまちづくりを推進している特色のあるまちづくり先進地を訪ね、南淡町との違いや工夫を学ぶ。 阿波町タイムダラーの会代表 第8回 今日からあなたはプロデューサー 講義・ワーク まちづくりプログラム作成にかかる手順の手ほどきを受けたうえで、課題解決にむけた案をまとめていく。 徳島大学教授 第9回 南淡フロンティア計画始動! ワークショップ これまで学んできたことをまとめ、夢ある町にするための課題解決にむけた「まちづくりプログラム」を完成させ、町長に提案する。 徳島大学教授 3-2-7 2年次協働コース(新規)  講義名は「ちょボラ仕掛人講座」(ちょボラとは「ちょっとボランティア」の意)、学習内容は「ボランティアのまちづくり方策」、ねらいは次のとおりである。それぞれの地域で、グループや個人に対してボランティア活動を誘発するコーディネーターを目指す。「あなたまかせのまちはいやよ」というメッセージのもとに実施された。  学習方法はすべての回でワークショップが行われ、最終回の第9回は「発表会準備」に当てられた。 3-2-8 2年次環境コース  講義名は「ISO認定ニューライフスタイル修得講座」、学習内容は「地域・家庭・農業が担う環境づくり」、ねらいは次のとおりである。ISO(国際標準化機構)の基準を満たす地域・家庭・農業の担い方を学ぶ。「アフリカのタコより阿万のタコ」というメッセージのもとに実施された。  学習方法はすべての回でワークショップが行われ、最終回の第9回は「発表会準備」に当てられた。 3-2-9 2年次福祉コース  講義名は「住民の手による福祉計画づくり講座」、学習内容は「個別に対応できる福祉計画づくり」、ねらいは次のとおりである。介護保健は住民参加の学校である。その他、自助・共助の精神で助け合い、活躍する福祉を創り出す。「個性も福祉も十人十色」というメッセージのもとに実施された。  学習方法はすべての回でワークショップが行われ、最終回の第9回は「発表会準備」に当てられた。 3-2-10 2年次情報コース  講義名は「ITボランティア養成講座」、学習内容は「自分のできるITボランティア」、ねらいは次のとおりである。ITは今後ますます不可欠になるであろう。さらにITを仲間づくりに生かし、ITボランティアとしてまちづくりに貢献するために学ぶ。「パソコンで仲間づくり、パソコンで助け合い」というメッセージのもとに実施された。  学習方法はすべての回でワークショップが行われ、最終回の第9回は「発表会準備」に当てられた。 3-2-11 1年次各コース担当者の「反省」「感想」「コメント」の分析  われわれは、各コースの担当者のコメントを得た。その結果は次のとおりである ボランティアコース @講義の開催曜日、時間帯について ・各種行事と重なることが多かった。(突発的なイベントが入り、それに対し動員がかかったことがあった。) ・主婦層の方々から、午後7時開始は時間的に余裕がなく、できれば開始時間を遅らせてほしいとの要望があった。(7時30分開会が妥当か?) A開催時期について ・前年度の実績から、単年に2コース受講したいという要望もあったので、10〜12月、1月下旬〜3月の2パターンで進行してはどうか。 B募集の仕方 ・前回は半強制的に各種団体に声をかけたので、出席者の数は確保できたが、実際に参加意欲のある人に参加いただけたか疑問。去年と同じやり方ではどうかと思う。 C各担当課の協力 ・協力は必要不可欠。ただし、話のもって行き方に注意し、積極的な協力をお願いしたい。 D修了証の授与 ・好評であったので、ぜひ今年度もお願いしたい。 ENPO法人化について ・時期尚早と思う。もう少しNPOについての知識を高める必要がある。行政主導でNPO化するのではなく、あくまでも参加者の気運の高まりがあって自主的な運営が可能な段階になってからでも遅くはないと思う。 F講義の進め方 ・講義形式が多いと、どうしても「難しい」とか「わからない」といった意見が出、欠席者も多くなると思う。アイスブレークなどを有意義に活用し、硬軟織り交ぜた講義を進めていく方が、参加者も退屈せず欠席者も少なくなるように思う。 G講師の選定 ・できれば中心となる講師の方を決め、その人の紹介等で講師陣を編成する方がよいのでは。中心となる講師がいれば、その分講師と受講者のつながり、また講義の流れにつながりができてくるのではないか。 Hその他 ・講義形式が多かったが、講師陣のレベルが高く、有意義であったとの意見があった。 ・参加者の内訳が、教職員と民間と約半数ずつで、民間の方々が教職員の方々と親しくなることができ、先生というイメージが身近に感じられてよかったとの意見があった。 ・週5日制に対応するメニューでウォークラリーを実施したが、いろいろな面で新たな発見があり、スタッフは少数であったが、逆に一つにまとまることができ、子どもたちにも楽しんでもらうことができよかったとの意見があった。 ・現在大学院生の参加者の方が、今回の講義を受講して「自分の進路」の参考としていただくことができ、担当者としてうれしかった。 ITコース ・受講者のレベルのバラツキがありすぎた。 ・指導者育成が先決である。 ・ITコースだけが中央公民館での開催だったので、開講式等他のコースと別の形式だったことが少々残念 ・受講生相互の意見交換、情報交換に大きく役立った。 ・お互い良い刺激を受け、未知の分野に取り組む意欲につながった。 産業コース @受講者 ・産業コースに興味を持っていると思われる方への周知が徹底できなかった。 ・女性後継者が少なかった。 A内容 ・見学会に実習を取り入れたほうが良かった。 B講師 ・各方面の方で良かった。(専門家・地元) C成果 ・交流会が良かった。 ・受講者同士の交流が図られつつある。 ・産業コースへ参加し、他のコースへの関心も深まった。 福祉コース ・地域福祉の学びや体験を通して、「福祉の大切さ」「自分たちでできる福祉」の意識の育成、実践について学ぶことをねらいとして9講座の機会を提供した。受講者それぞれの立場からバリアフリーの目的を深く考え、共生する福祉についての施設整備や地域が支える福祉へと視点が移った感がある。講座生36名を擁して始まったが、6割程度の出席率にとどまり、日程や時間、一貫した講師また身近な講師の選任、会場、期間など、かなりの検討課題があった。 若者のまちづくりコース @目的をしっかり理解する(役場職員各コース担当者他)、理解させる(各コース受講者へ) ・いちばん最初の講義で『目的を理解』させる。(なぜ勉強するのか、ゴール地点は) ・いちばん最初の講義で『仲間づくり』をする。(その後の活動が意欲的になるため) ・いちばん最後の講義で『振り返り』をする。(目的に到達できたか、発見したことを共有化) ・間の講義で、『つなぎ』をする。(前回と今回のつながり、どういう位置づけの講義か?) ・この南淡町コミカレは、単発物の打ち上げ花火ではないと思う。年度を越えた戦略を考える必要がある。 A『受講者の立場に立って』、開催要項等を作成する ・時には、専門知識を持った人のアドバイスを受けて、『質の良い』ものにする必要がある。 ・役場担当者、関係者も自己研鑽し、『質の良い』ものにしないといけないと思う。  とくに最後の「若者のまちづくりコース」の担当者のコメントは1年次の本質的な課題を指摘していると考える。すなわち、後述するように、とくに当コースは現代青少年の傾向を反映し、また、初年度ということもあって、自らコミュニティ活動や市民活動をしようとする自発的な意思をもって参加したわけではない若者が多くいた。そういう場合の企画のあり方として、目的・目標の明確化、それに基づいたプログラムの一貫性と計画性の確保、年度を越えての戦略化が必要であったと考える。 3-3 1年次「南淡町コミュニティ・カレッジ受講者調査」の分析 3-3-1 当調査の概要  われわれは南淡町コミュニティ・カレッジの課題を明らかにするため、1年次のスタート当初に「南淡町コミュニティ・カレッジ受講者調査」(研究代表者・木村清一亜細亜大学教授)を行った。調査方法は、調査票調査(自記式)で、2002/6/29オープン記念「まちづくりフォーラム2002」にて配布・回収した。回答者数は196人であった。  これを分析し、次の結果を得た。 3-3-2 受講申込は町職員の貢献大。しかし、口コミ、自己決定も大きい。  「町役場の人から勧められて」28%、「家族・知人に勧められて」18%、「職場から勧められて」12%、その他は「趣味を豊かに」、「教養を高める」など。「他人・世の中の役に立ちたい」も10%ある。  「町役場の人から勧められて」は、役場と住民との信頼関係を表すものとも考えられる。しかし、初年度ということもあって、自主的、自発的な選択のもとに参加したわけではない者が多かったことは否めないと考える。 1町役場の人から勧められて 55 2家族・知人に勧められて 36 3職場から勧められて 24 4教養を高める 24 5他人・世の中の役に立ちたい 19 6チラシ等を見て 17 7趣味を豊かに 16 8地域社会をよくしたい 10 9専門知識を身に付ける 8 10仕事に必要 7 11ボランティア活動に必要 6 図W-15 受講のきっかけ(複数回答、n=222) 3-3-2 男性もたくさん参加している。  回答者数は、男96名、女100名であった。  大学公開講座等の他の生涯学習機会では男:女は1:2ぐらいになる。それに対して、健全な町づくりやコミュニティ形成のためには望ましい比率だと考えられる。 3-3-3 いつもの学習は「趣味・教養」が1/3、あとは健康・家庭・職業など。  「趣味」20%、「教養」5%、「社会問題」6%、「健康・スポーツ」10%、「家庭生活」7%、「育児・教育」4%、「職業上必要な知識・技能」9%、「語学」6%、「ボランティア活動」6%であった。 1趣味 39 2健康・スポーツ 20 3職業上必要な知識・技能 17 4家庭生活 14 5社会問題 12 6語学 11 7ボランティア活動 11 8教養 10 9育児・教育 7 図W-16 カレッジ以外の学習内容(複数回答、n=141)  カレッジ以外でも「コミュニティ学習」(社会問題、ボランティア等)をしていた「キーパーソン」は1割弱程度と考えられる。カレッジにとっては、それらのキーパーソンが、趣味等の生涯学習を楽しんでいる「一般住民」とつなぎあう場としてどう機能するかが課題になるといえよう。  ただし、「場」で考えると社会教育関係が2割いる。公的学習機会利用者が多数派であるということができる。しかし、そのような「従来型」のキーパーソンの活用も重要と考える。 1教育委員会、公民館等 39 2自主的集まり 26 3民間教室、スポーツ教室等 12 4会社・組合 11 5ラジオ・テレビ 6 6通信教育 5 7PTA開催の講座 4 8個人教授・塾 3 9放送大学 2 10学校の公開講座 1 図W-17 カレッジ以外の学習の場(複数回答、n=109) 3-3-4 コミュニティ・カレッジでは「異なる価値観にふれたい」そして「仲間をつくりたい」。  カレッジに希望する内容トップ2は「異なる価値観にふれる」36%、「友達・仲間の発見」28%であった。これを考え合わせると、「他者との交流によって、別の見方、考え方を発見したい」という志向が読み取れる。 1異なる価値観にふれる 71 2友達・仲間の発見 55 3情報・意見交換 39 4お喋り(講座のテーマ) 31 5お喋り(意思疎通のため) 20 6インターネット等の交流 17 7勉強会 16 8公開講座の企画 6 9掲示版での交流 6 図W-18 カレッジに希望する内容(複数回答、n=261)  「異なる価値観にふれる」ことは、個人がその出会いによりより深まる意義を有する。同時にそういう市民の集合がより健全な民主社会の支えになることに注目したい。 3-3-5 コミュニティ・カレッジで学びたいテーマは高齢化社会、まちづくり、地域の連帯。 1高齢化社会 42 2まちづくり 37 3地域の連帯 36 4地球環境 27 5家庭・家族 23 6共生・バリアフリー 22 7児童・青少年問題 22 8子育て支援 16 9人口・食糧 16 10資源・エネルギー 15 11科学技術・情報活用 14 12消費者問題 13 13生命倫理 12 14国際理解・交流 12 15人権 10 16男女共同参画 7 17交通問題 6 18知的所有権 3 図W-19 学習したい現代的課題(○は3つまで、n=333)  「学習したい現代的課題」について聞いたところ、トップ3は「高齢化社会」21%、「まちづくり」19%、「地域の連帯」18%であった。地域活動や団体活動への志向が指摘できる。4位に「地球環境」があがっているのは、これまでの検討から南淡町特有の傾向と考えられる。また、固そうなテーマでも参加者の2割程度は「学習したい」と考えているということが指摘できる。これをどう学習行動に結びつけるかが支援のポイントになると考える。  これに対して「生命倫理」「知的所有権」などの個人サイドの問題は少数であった。しかし、これらは合計すればそれなりの数になる。そして、各分野のキーパーソンとなる可能性があると考える。  「合併に関する平成14年当時の住民の意識調査」の検討において、従来型のコミュニティ活動によるまちづくりのほかに、新型の参加形態の存在と可能性を指摘した。それはたとえば今回の選択肢のような「青少年問題」というタームでではなく、「若者によるまちづくり」などというように表記される性格のものと考える。  新型のまちづくり活動への支援や、それとの協働のためには、「現代的課題」に関するキーワードや、さらには基本的考え方の再検討が必要と考える。 3-3-6 受講者調査結果の総括  町民の「いつもの学習」と異なって、コミュニティ・カレッジでは高齢化社会、まちづくり、地域の連帯などについて学びたいと思う人が多い。そして、「異なる価値観にふれる」と「仲間をつくる」という2つの民主主義社会の困難ではあるが重要な市民像が、受講者のなかに健在であることが明らかになった。以上から、次のように推察される。  今回この講座に応募した受講者は、多くの人が「人から勧められて参加した」とはいえ、本講座の性格上、趣味や個人的学習にとどまらず、「学びのコミュニティ」やそこでの出会いに対して比較的強いニーズを持っていた。これらのニーズは、これまでは適切な実現の機会が身近にはなかったため、潜在化していた。そのため、今回の本講座の開講は、受講者にとって、新鮮な機会として大きな期待が寄せられるものになった。  以上のことから、「異なる価値観にふれたい」「仲間をつくりたい」という町民の健全な学習要求をどう「参画」やキーパーソン育成に結びつけるかが最重要課題であると考える。 3-4 管理職コミカレ検討会における資料「わが課が町民に学習してもらいたいこと」とブレーンストーミング「合併市・市職員・市民、三者の理想像」成果の分析 3-4-1 本章における分析の対象  当南淡町コミュニティ・カレッジ検討会開催の通知では、当カレッジについて、「激しく変化する社会に、当町と近隣市町住民が生涯にわたって学習できる環境を整え、かつ、対応するため実施しているものであり、合併を控えた今、新市のまちづくりのあり方を生涯学習社会構築の観点から積極的に推進しているもの」であり、「従って、自治体とその住民の生き残りをかけた事業」と述べられている。その上で、「全庁的な取組みとして実施要領骨子を練るべく」当検討会を開催したとしている。  当検討会のねらいは、南淡町コミュニティ・カレッジの運営スケジュールからは、図W-20のとおり位置づけられた。 図W-20 検討会の運営スケジュール上の位置づけ  検討会は、2003年6月30日、南淡町中央公民館で町四役と各課課長の参加を得て開かれた。その内容と時程は次のとおりである。 @14:30〜15:00 発表「わが課が町民に学習してもらいたいこと」 A15:00〜16:45 ブレーンストーミング「合併市・市職員・市民、三者の理想像」 B16:45〜17:15 まとめ「文章化作業」  本研究では、この@で集約された資料と、Aの成果まとめを分析の対象とする。 3-4-2 「わが課が町民に学習してもらいたいこと」の分析  本項では、事前提出資料の内容を分析する。当資料は、職員研修の一環として課内での協議を経るよう指示されて作成されたものである。  町長公室は、「わが課が町民に学んでもらいたいこと」として次のように述べている。やや長くなるがここに引用したい。「地球環境の破壊が叫ばれている昨今、地球人として『何をするべきか』を考え、行動する段階にきている。各人が「省資源」、「省エネルギー」を実践し、CO2、NOx・SOx等の排出ガス、電気、水、紙等の削減に取り組むことにより、地球にやさしく、地球を守ろうという意識の醸成が図られる。その実践の一例としては、各家庭において『環境家計簿』を付け、省資源、省エネルギーに取り組みながら同時に電気代、水道代等経費の節減にもつながるというささやかではあるが一石二鳥の手法もある。現在、「環境家計簿」を作成中であり、おもに子どものいる家庭で実施してくれるのではないかと期待している。さらに、省資源、省エネルギーだけでなく、例えば風力、太陽熱、バイオガス等の『自然エネルギー』を有効活用する施設を建設し、従来から依存している石油エネルギーの使用量を削減していくような大掛かりな施策を展開していくことも必要であろうと考えられる。また、将来的には、それら自然エネルギーを燃料電池(水素を活用)に変換し、それを活用していくということも考えられる。もし、これが自治体主体で実行できたなら、『電気代が無料のまち』も夢ではなく、そうなれば定住化促進や人口増のための施策など不必要になると思われる。しかしながら、それを実現するためには大きな障害がある。それは、住民の意識と理解と協力の問題である。多数の住民が利益を享受するために、自分たちに若干の被害があり、自分たちだけが我慢しなければならないということについて『我慢できない』という意識がある。この意識がある限り、すべてのすばらしい企画、事業は進展しない。住民には、『意識の持ち方』を変えていただきたいと願う。もちろん、大きな公害が発生しないということが大前提ではあるが」。  その他、町長公室としては、「町民に学んでもらいたいこと」として「ITの向上」を挙げている。  総務課としては「学んでもらいたいこと」として、@選挙制度について(選挙の種類、選挙権・被選挙権等、明るい選挙推進協議会の取組み)、A交通安全対策の推進について(交通対策協議会の取組み、交通安全の啓発)、B情報公開制度及び個人情報公開制度について、C町の予算・決算について、の4点を挙げている。  商工観光・環境課としては、次の5点を挙げている。@消費生活相談に関連する法律の基礎知識(消費者トラブル最前線)、A地域産業の元気回復と新たな活力の創造(TMO)、Bまるごと南淡、C循環型社会を目指す環境学習(感動の感性=センス・オブ・ワンダー)、D5R生活「ごみを減らすアイデアを考えよう」(Refuse=ごみになりそうなものを断りましょう、Reduce=ごみとして出す物を少なくしましょう、Reuse=くりかえして使いましょう、Repair=こわれても、修理して使いましょう、Recycle=新しく生まれ変わったものを使いましょう)。  農林水産課は、食の安全安心、地産地消、農地の保全がなぜ必要か、食料自給率の実態、ほ場整備がなぜ進まないのか、農業の法人化、野菜残渣があふれている、漁業の実態、海の再生、森林の役割、等を挙げている。  建設課は次の5点を挙げている。@道路・河川等へのポイ捨て防止対策及び清掃ボランティア団体の育成方法。A不法駐車対策について(モラルが原因であるが各団体で検討してはどうか)。B道路整備の必要性(なぜ、用地買収してまで道路を整備しているか)。C町営住宅はどうして安い使用料で入居できているのか。D今後建設するにはどんな町営住宅がいいのか(老人夫婦・一人暮らし老人のためのバリアフリー住宅など)。  会計課は「会計課の仕事は役場内部の事務が主」としながらも、「公金を管理するうえで感じることは、低金利時代の資金運用及び平成14年4月解禁のペイオフ対策については、町民も関心をもっていると思います」としている。  議会事務局は、現行の活動として、@議会活動の周知(議会広報紙での議会活動報告、定例会の開催月、委員会活動=定例会開催月の付託案件審査・その他の月の所管事務調査等、本会議・常任委員会・特別委員会の傍聴・傍聴に関しての注意事項、会議日程及び一般質問等の内容の町内全世帯新聞折り込み)、A町議会に対する請願・陳情制度、B会議録の閲覧(閲覧場所:議会事務局、各地区公民館及び図書館、定例会・臨時会・各常任委員会・特別委員会において展開された質問や答弁等の状況を記録)を挙げている。  学校教育課は「学校・家庭・地域の連携を図るための各種事業や制度について」を挙げいてる。また、「国・県・町等の教育的事業」として「ふるさと先生招聘事業」、「いきいき学校応援事業」を挙げている。  社会教育課は、課内のミーティングの結果として、@生涯学習の薦め、ANPO法人の活動・運営、Bボランティア社会の構築、C生涯スポーツのあり方、D郷土(風土・伝統文化等)を知ろう、の5点を挙げている。また、「国・県・町等の教育的事業」として、次の所管諸事業を挙げている。男女共同参画のための教室(男女共同参画政策局)、博物館出前講座(博物館協会)、キンボール国際資格認定教室(国際キンボール連盟)、普通救命講習修了認定教室(淡路広域消防事務組合)、B&G海洋スポーツ教室(南淡町)、生活科学講座(消費者協会)、人権教育・啓発指導員派遣講座(兵庫県)、著作権セミナー(兵庫県)、兵庫オープンカレッジ(兵庫県)、手作り講座「郷土の歴史を語る」(南淡町立図書館)、ニュースポーツ普及講座(南淡町)。  国体推進室は「町民に学んでもらうというよりも、住民がどういうかたちで関わるかの意識づけとして、町民の意識の高揚を図る」として、「町民の健康増進と体力向上」と「スポーツを通じて健全な心と身体を備えた人づくりをめざす」を挙げたうえで、次のように述べている。「全国からの選手団を暖かく向え、友情の輪を広げるとともに南淡町の豊かな生活文化を全国に紹介する。また、のじぎく兵庫国体は、全国に披露する絶好のチャンスであり、『する、みる、ささえる〜町民一人ひとりが創る国体』を基本目標とし、町民ボランタリー活動の推進として、既存施設を活用した簡素な中にも温かみのある大会を目指し、特に、観光立町を目指す当町にとっては全国に発信する絶好のチャンスでもある。この大会は、『する人』だけでは開催できない。『みる人』や、さらにはボランティアとして『ささえる人』があって、はじめて開催されるものである」。  また、「住民との関わり方(受け入れ態勢)」としては、花づくり等の緑化運動や会場他でのサポートなどをとおして、「全国から選手他関係者が南淡町へ着てよかったと思っていただけるようにする」と述べている。 3-4-3 ブレーンストーミング「合併市・市職員・市民、三者の理想像」の分析  当検討会後半ではブレーンストーミング「合併市・市職員・市民、三者の理想像」のワークショップを行った。これは、以下のルールのもとに実施された。@自由奔放な発言を歓迎する。夢物語でも良い。A質より量を求める。B他人のアイデアに便乗する。C他人の発言を批判しない。実現しない、空想的だ、くだらない、わかりきっている、コストが高い、意味がない、以前に失敗した、などの批判的な発言は控える(禁句)。  われわれは、事務局の社会教育課の協力を得て、その成果を次のようにまとめた。「市職員の理想像」については図3-4-2@、「新市の理想像」については図3-4-2A、「市民の理想像」については図3-4-2Bのとおりである。なお、本図の作成に当たっては、社会教育課職員の熱意と努力に負うところが大きい。ただし、文責はわれわれにあることを付記しておきたい。 図W-21 ブレーンストーミング「市職員の理想像」成果 図W-22 ブレーンストーミング「新市の理想像」成果 図W-23 ブレーンストーミング「市民の理想像」成果 3-5 「昨年度担当者反省会、新市建設計画、管理職検討会のまとめ」の分析 3-5-1 当「まとめ」の性格  われわれは、南淡町コミュニティ・カレッジ事務局(社会教育課)と共同で、昨年度担当者反省会の結果、新市建設計画の内容、そして先述のブレーンストーミング「合併市・市職員・市民、三者の理想像」の成果を考え合わせ、以下に示すような「昨年度担当者反省会、新市建設計画、管理職検討会のまとめ」をカード式発想法によって作成した。なお、前掲図と同様に、本図の作成に当たっては、社会教育課職員の熱意と努力に負うところが大きい。また、町長から事務局職員への「事業実施の根拠をしっかり示すように」という強力な指導が当「まとめ」の成果につながったといえる。ただし、文責はわれわれにあることを付記しておきたい。  当「まとめ」は、2003(平成15年)年度コミュニティ・カレッジを全庁的な気運の高まりのもとに企画・運営するため、南淡町コミュニティ・カレッジ事務局により各課に次のように通知された(「南淡町コミュニティ・カレッジに関する報告について」社会教育課長発、各課長宛、平成15年7月31日)。  「平成15年度南淡町コミュニティ・カレッジの実施に向けて計画討議を重ね、各課からたくさんの意見や情報をもらってブレーンストーミングを実施した結果について、別添ファイルのとおり徳島大学西村美東士教授にまとめていただきました。新市では、住民・行政がパートナーシップを発揮し、いつでもどこでも学べる安心・安全なまちづくりができるような生涯学習基盤となる事業として期待する内容ができましたのでご報告します」。  当通知の文面から、事務局は、「住民・行政のパートナーシップの発揮」及び「いつでもどこでも学べる安心・安全なまちづくり」の2点において、当コミュニティ・カレッジを新市(合併後の市)に向けた重要な学習機会として位置づけたのであり、当「まとめ」はそのために作成されたものということができる。 3-5-2 平成15年度南淡町コミュニティ・カレッジ「実施計画」の分析 図W-24 カード式発想法「実施計画」成果 3-5-3 平成15年度南淡町コミュニティ・カレッジ「各コースの根拠」の分析 図W-25 カード式発想法「各コースの根拠」成果(全体像) 図W-26 カード式発想法「各コースの根拠」成果(コース別) 3-6 2年次「協働コース」成果の事例分析 3-6-1 第2回成果  当コースの概要は、すでに述べたとおりである。  第2回は図3-6-1の成果を得た。 図W-27 「協働コース」第2回成果 3-6-2 第4回成果  第4回は図3-6-2の成果を得た。 3-6-3 最終成果  その後、当コースは、企画書作成の段階に移行し、2004年1月30日に国立淡路青年の家で行われた成果発表会では、町長を含めた関係者の出席のもと、図3-6-3のようなプレゼンテーションを行った。  プレゼンテーションでは、図3-6-3の発表の後、「あわじうまいもんプロジェクト」の第1弾として「どろんこ祭り」が提案された。  協働コースの環境チームのメンバーで、図の作成者である武田憲人は、地域の若者サークル「ナイス」のスタッフであり、1年次は「若者のまちづくりコース」に参加していた。しかし、武田はわれわれからの取材で、2年次の「協働コース」は、1年次の「若者のまちづくりコース」と比較して、メンバーに自主性があったため格段に楽しかったと語っている。 3-6-4 2年次「協働コース」成果から見た南淡町コミュニティ・カレッジの成果と課題  以上の検討から、南淡町コミュニティ・カレッジは、とくに2年次においては、町民に対して「社会貢献」や「自然環境」について関心を掘り起こすなどの一定の役割を果たしたと考える。しかし、行政との望ましい形態での「協働」によって市町村合併時代を主体的に切り開くことが迫られているとすれば、合併に関する住民意識の検討において明らかにした諸点、とくに「従来型と新型のタイプに応じた支援」や「新型への転換」についてはまだ十分ではないことが指摘できる。 図W-28 「協働コース」第4回成果 図W-29 「協働コース」最終成果(環境チーム) 4 「若者版エンデ・ワールド2003in南淡」の事例研究  われわれは、若者による「まちづくり活動」の一つとして「若者版エンデ・ワールド2003in南淡」の事例に着目した。「エンデ・ワールド」は、淡路県民局が設置している淡路地域ビジョン委員会の県民行動プログラムの一つであり、ビジョン委員会の目標「人と自然の豊かな調和をめざす環境立島『公園島淡路』」を推進するための取組みである。具体的には、ドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデが提唱した人と自然の豊かな関係を淡路島でも実現しようとするイベントであり、2002年に洲本市で、2003年には西淡町で行われた。  「若者版エンデ・ワールド2003 in 南淡」を企画した彼らは、イベント実施の前に独自に調査を行った。そこでは、淡路島内に百数十団体あるといわれる青少年団体の現況を把握する目的で、ヒヤリング・アンケート等が実施された。同時に全島交流イベントとしての本企画に呼びかけを行い、その結果20団体程度の参加承諾を得た。  われわれは、今後、その調査結果や、事業企画にあたった若者自身へのインタビュー内容、さらには主宰者の若者の論文を分析して、市町村合併に向けた若者のまちづくり活動の意義、特性、課題を検討する必要がある。  キーパーソンの一人である賀集弘貴は、ある勉強会で「若者による地域おこし」というテーマで「若者版エンデ・ワールド2003 in 南淡」について次のように述べている。以下、口頭発表原稿のため、多少修正して示すこととする。  淡路島には面積の半分を占めている自然、くにうみ神話に代表される歴史文化、そして何より豊かな人情等、たくさんの魅力がある。これは個人的に関係している風土資産の調査でも明らかになったことである。とはいうものの、ここを直せばもっと魅力的な島になるという意味で、淡路地域の課題を申し上げたい。一つは、街並みの表情が乏しい、そして二つ目は普通に生活していて元気な(活動が見える)人が少ないということである。  前者の街並みの表情が乏しいという課題に対しては、そこに住む人の思いが共有されなければ、実現困難であり、また一方で職業柄(引用者注・建築設計事務所勤務)、ライフワークとして取組むべき長期的な課題であると考えている。しかし、後者の元気な(活動が見える)人が少ないというのは、比較的とっかかりやすく、自分の見聞として現況を把握する必要を感じていたので、時間の許す限り各方面の地域活動に参加した。その結果、イメージと実態が異なることが検証された。  実際は、地域おこしをするといっても、行動哲学あるいは基本認識がない活動にはあまり効果が期待できないと思われる。そこで、自分なりにとらえている地域おこしの基本認識について述べたい。まず、地域の課題を的確に捉え、地域の社会資源、例えば自然、歴史文化、環境、経済、人材等を活かし、地域構成体、例えば住民、自治体、企業、団体等の参画を得て、自らの地域生活空間をデザインすることを地域おこしの基本認識としてとらえている。  このような基本認識は、地域おこしをされておられる方ならどなたでもお持ちだと思うが、成功事例にあるものを参照することによって何かが見えてくると思い、ここに列挙する。まず、一つ目は危機感(ハングリー精神)。淡路島は恵まれすぎてこれが少し足りないように思われる。そして、契機(動機づけ)。農耕的な風土の淡路島では、きっかけさえあればという方はたくさんいらっしゃるように見受けられる。そして、種(宝物)。これに関しては、数え切れない位宝物があるのは、各方面の調査で明らかである。そして、仕掛け人・リーダーによる演出と企画力。これは先ほどの契機とオーバーラップするが、ここが非常にセンスが問われるところであるように思う。そして、達成感という意味で、住民主体・地域主体というこだわりが成功事例にはみられる。  これらの成功事例にみられるエッセンスを鑑みつつ、次のようなものが、地域おこしを推進する上で不可欠ではないかと考える。まず、客観的な視点をもったよそもの、時代を先取りしすぎて理解されにくいが、こだわりのあるばかもの、そして、経験は乏しいが行動力のあるわかもの、の三者である。先ほどの基本認識のもと、成功事例に見られるエッセンスを踏まえて、この三者を巻き込む事によって地域おこしはうまくいくのではないかと考えている。  次に、それらを実際に意識して取組んだ事例として、若者版エンデ・ワールド2003 in 南淡の報告をしたい。まず、実施に至るまでの企画フローチャートについては、“調査なくして計画なし、計画なくして行動なし”といわれるように、ここにあげたフローにしたがって実施することにより、うまくいくのではないかと考える。  まず、イベント実施の前に調査を行った。具体的には、淡路島内に百数十団体あるといわれる青少年団体の現況を把握する目的でヒヤリング・アンケート等を行った。同時に、全島交流イベントを企画しているため、この機会に是非PRしませんかという依頼も行った。結果としては、20団体程度の参加承諾を得て、それをもとにイベントの企画を固めていった。  大きな柱は二つである。前半は淡路全島の青少年団体のプレゼンテーション。もちろん団体PRブースも設けた。そして、後半は、全国的な支持を得ているよさこい踊り、さらに付加的にニュースポーツ(キンボール)で体を動かす事により楽しく終えようという内容であった。最終的に青少年団体プレゼンテーションには14団体の参加を得て、よさこい踊りも本場高知と兵庫県加古川市から団体・講師を招き実施することができた。その結果、淡路の宝である若者同士の新たな交流の創出ができた、キーパーソンの発掘ができた等の検証ができた。参加者は約1000人、関係者は約20人であった。  このイベントを実施して明らかになったことは次のとおりである。まず、@淡路地域には、地域を元気にする青少年団体が数多く存在するということがわかった。百団体以上存在していたのがまずもって驚きであった。また、今回参加はいただけないけれど、次回は是非という声をたくさん聞いたのも心強いかぎりである。次に、A青少年団体のみならず、地域活動のキーパーソンが相当数存在するということである。調査の中、交流会の中、そして後日の打上げの中で、まちづくりに興味がある、あるいは実際にやっているという人々が相当数存在していることが第一の発見であった。今、それらの人たちと定期的に集まり、今後の淡路島づくりについて自由な議論を重ねている。そして、次に、B仕掛けによっては比較的難なく合意形成でき、今後の交流への布石を打つことができたということである。今回はよさこい踊りという仕掛けを使った。唄と踊り、成功事例の援用により、思いの共有、交流の促進が比較的難なく図れたのではないかと考えている。そして、最後に、C新しい形でのイベント実施が可能であることがわかった。今回のイベントの実行委員は5人で、実際に中心的に動いたのは3人であった。しかし、その少数の実行委員と、数多くのサポーターが当日スタッフとして参加してくださったおかげで、大過なくイベントを完遂できた。これは、何らかの提案になったのではないかと考えている。  今回のイベントは青少年団体の実態をつかむ、キーパーソンを発掘するという目的を達成するための手段にすぎない。そこで得られた淡路島内の青少年団体の実態に関する情報、そしてそれらを踏まえて、意識のあるキーパーソンとともに、今後の地域おこしはどうすべきか、まちづくりNPOができないか等について、現在自由な議論を重ねている。今後この組織が、他団体とどう連携し、また多様な主体の参画を得て、どれだけ地域おこしに寄与できるか、真価がとわれるところである。成功事例になれば最高だが、現時点ではまだ確かなことは言えない。しかし、そのような一生懸命な取組みこそ島の光であり、それを見るために淡路島に来ていただくのが本当の観光だと考える。それらの積み重ねが結果として、淡路島ブランドの達成につながるのではないだろうか。  賀集の上記発言から、われわれは次のように考える。若者を含めたまちのリーダーを育てることなくして、市町村合併時代に向けた真の官民協働はありえない。そのためには、彼らや町民の「社会に意味ある存在でありたい」「仲間をつくりたい」というごく自然な「学習要求」を、どう「参画」やキーパーソン育成に結びつけるかが問題となる。紆余曲折の多い市町村合併だからこそ、コミュニティ・カレッジなどの自治体生涯学習施策や、さらに広く市町村行政一般に、このような点での配慮が求められると考える。 5 コミュニティ活動及び生涯学習活動を行う市民へのインタビュー調査結果の分析 5-1 本調査の目的と方法  以上に述べたような本研究で進めてきた考察が、市民活動を行う者のもつ希望や考え方と一致するかどうか確かめるため、われわれは次のようにグループインタビューの方法により調査を行った。 @時期   2004年4月15日午後(3時間) A場所   南淡町庁舎会議室 B被調査者 市民5人(女4、男1)、職員2人(社会教育主事) A 農業、ボーイスカウト指導者(青年男子) S 近隣町教育委員会職員(青年女子) I 農業、南淡町連合婦人会副会長 O 会社役員、南淡町連合婦人会会長 Y 農業、南淡町消費者協会会長 K 南淡町教育委員会社会教育課参事 T 南淡町教育委員会兵庫県派遣社会教育主事 C調査者  西村美東士 5-2 通学合宿は有意義 A ボーイスカウトのリーダーをしている。最近は参加者が減っている。登録は多いのだが、土日曜、休日など、リーダーがそろう日に活動しようとすると、サッカー、野球等と重なってしまう。サッカー、野球のある日がわかったら活動しやすいと思う。そういう情報が早く入れば、活動の可能性が広がる。 K 社会体育のグループの情報が必要だ。とくに合併後は、子どもの行事が空いている日を情報提供する必要がある。 A 通学合宿の実行委員長を務め、勉強になった。 K 通学合宿は意義深いと思う。一事業の規模を広げるのではなく、あちこちで実施するとよいと思う。老人会、婦人会等の協力も得られた。合併後、うずしおマラソンは続けることになっているが、通学合宿も引き続きやっていければと思う。 Y わたしも通学合宿にはたくさんの参加を願っているが、小・中学生の保護者の理解がまだ足りないようだ。子どもに自立心を持たせるには最適だと思うので、大勢の参加を期待したい。  以上の発言内容から、合併による広域化において、学習情報提供がより重要になることと考える。  また、通学合宿については、先述の「学校教育は学校だけで」という「従来型」の発想を打破する契機としても効果的と考える。 5-2 合併後、人のつながりがますます希薄にならないように O 親に対する教育が必要になっていると思う。ある新興住宅地で婦人会への加入をお願いしたところ、「払うべきお金は(国や町に)払っているのだから、加入しなくてもよいでしょう」と言われてしまった。 Y 役場の職員の奥さんなのに、地域への意識の低い人がいる。おかしいと思う。 A わたしはキャンプから帰った子どもの親に、「着せていった服がキャンプで汚れた」というクレームを受けたことがある。 O 婦人会で「ゴミを出しません」という活動をし、ゴミ袋の斡旋を行ったところ、会員脱退者が増えている。 Y わたしは人とのつながりや対話が大切だと思う。 O 災害時の自治的組織の呼びかけをしても、「何の迷惑もかけていないのだから」、「今後も役所や地域の世話にはならないから」という人が多い。 Y 今後の人づきあいがITやメールのやりとりばかりになるような気がする。 O 婦人会でも、役員がまわってきたらやめる人が多い。 Y 合併後、町の人同士のつながりがますます希薄になるような気がする。  以上の発言内容には、多くの「まちづくりに参加しない」住民の実態と、そういう人たちと何とか接点を持とうとする活動を行う者の悩みが示されている。先述の「従来型、新型の参加を行う人たちと出会う機会」を提供する行政の役割発揮と、その効果的な手法の開発が求められていると考える。 5-3 合併後も細やかな地域活動と行政サービスが必要 K 新市は分庁方式を決めていて、教育は西淡町に移る。西淡町公民館には役場職員が配置されていないので心配だ。 I 合併後、住民サービスが低下するのではないかと心配だ。年寄りが遠くの役場に行くためにコミュニティ・バスを出してほしいのだが。 Y 現在でも、住民への対応時、役場の職員に笑顔がない。聞くに聞けないという感じになる。 I 合併よりも小さな単位での人の「和」が大切だと思う。阿万西町では、老人会、婦人会、子ども会、町内会、そして青年がいっしょになって防犯活動に取り組んだ。「オレオレ詐欺」への防犯対策などである。だまされないよう、住民一人一人と顔見知りになることが必要だ。「合併してみんなで一緒」より、もっと小さなところで身近な活動をしていく必要がある。合併は合併でやればよい。しかし、それより小さな所で結束したい。そして、子どもにもっと声をかけられる地域をつくりたい。 O 現在、三原郡連合婦人会は4町から成り、南淡支部は負担金を払ってこれに加入している。合併後は、婦人会のメリットを今まで以上に追求しなければならないだろう。手をわずらわせないように、そして「勤め」を持ちながらも活動できるようにしたい。実際、4町のうち2町は学校教師が婦人会長を務めている。むしろ専業主婦の参加が少ない。 O 敬老の日の行事である「敬老会」は、分割方式でやっていくようだが、合併後も年寄りのためには地区ごとに開催してほしい。現在は、午前10:30から1200人収容の文化体育館の元気の森ホールでやっている。しかし、行事は午後7時まであり、バスで帰ることができない時間になってしまう。洲本の由良地区でアンケートを行ったところ、地区開催は「友達がたくさんいる」、「嫁が踊る」などを楽しみにしていることがわかった。年寄りには一本化は、魅力が減る、不便になるなどのデメリットが大きい。合併後も地域での細やかな活動が大切だ。 K 世話役がいないところでは差が生ずるかもしれない。地域のリーダーを養成する講座が必要だろう。 Y 町職員に親しみができても異動してしまうのは残念だ。 K 合併後は職員はより専門的になることが予想される。 O 合併後、市になったら、福祉課等にボランティア、手話通訳者、盲人介護者を置き、障害者の立場を理解した庁舎管理をしてほしい。  以上の発言内容には、「従来型、新型の参加を行う人たち」のなかにも、とくに前者においては、合併について「行政との距離が大きくなる」と心配する者が多いことが示されている。「広域化」と「距離の近さ」との二律背反の問題を解決する展望を創り出すことが重要であると考える。 5-4 結局は人の確保が問題 A 合併にどんなメリットがあるか見えない。職員削減で不便になるかもしれない。 S 通学合宿はとても魅力的なので続けてほしい。今後も若手ボランティアや青年が活動できる場としてこれを確保してほしい。人がいるから集まってくるのだと思う。 O 「うずしお交遊塾」は主催団体の一つである国立淡路青年の家が町内にあるおかげだと思う。しかし、4町になっても、ぜひとも続けてほしい。 K 人の確保が問題だと思う。 Y 合併後、4町の人たちや子どもたちが通学合宿を媒体にして集まるとしたらいいことだと思う。 K 70人ぐらいの規模で実施したことがあるが、そのときは50人ぐらいが限界だと思ったが。また、リーダーとして残っていく人たちがどのくらいいるかがポイントになる。今は20人ぐらいいて、高校生にも人材がいる。兵庫県縦断チャレンジキャンプでは、一週間にわたって関わるスタッフが必要だった。兵庫県民大学等では、大学生の指導が重要だと感じた。これはプロが行う必要があるだろう。  以上の発言内容には、「まちづくりに参加する人たち」にとっての公的社会教育からの働きかけの重要性が示されていると考える。行政側は、合併によってその働きかけが後退するのではなく、効率的かつ効果的に行われるように努めるとともに、その意図を「まちづくりに参加する人たち」に十分に伝え、協働に向けた条件を整備する必要があると考える。 5-5 地域活動のなかで学ぶ O アートフラワーを「女性ふれあい学級」という名称で、婦人会独自事業として実施した。1回目は講演、2回目はブドウ狩り、これでコミュニケーションがとれた。3回目は1月だったため初詣、4回目からアートフラワーを行った。閉講式では、「白玉つばき」が好評だった。賀集公民館で行った教室では、合併後もやってほしいという声が上がった。しかし、4町すべてで実施するとなると大変だ。予算は確保できるだろうか。下敷きのビニールだけでも値が張る。下準備の手伝いをしながらおしゃべりもできるのだが、そのようにして各町のグループに手間をかけてやってもらうか。また、合併後は4町に支部を作り、婦人会をシステムかする必要がある。地震、津波等の防災訓練はとくに切実だ。炊き出し等、婦人会員が動かないと何もできないものがある。 K 行政としては、関係団体に対して、合併後は「一つにまとめて」といういわば節減の意向はあると思う。しかし、合併後も会員を減らさないためにはどうしたらよいか検討する必要がある。 Y 消費者協会の副会長の活動をしていて感じるのは、事件は多いのに指導がいきわたっていないということだ。とくに高齢者などの理解が十分ではない。消費者の相談相手としてクリエーターの活動をしていて、消費者と警察との関係が密着していないと感じる。クーリングオフ制度等も知らない人が多い。去年から除々に会の活動を広げているが、たとえば今の西淡町にはこれらの活動はない。三原町からは要請があった。 K 「南淡町にはこのような熱心な会長がいる」ということが、このような活動が実現する基盤となっている。地域に何かあればすぐ現場に行く。警察では動けないことでも、地域活動として取り組めることがある。このような地域活動は、合併した後も続けていかなければいけない。むしろ広めていくようにしたい。 Y 昔から海岸よりにすむ人のなかに平気で海に油を捨てる人がいる。生活ゴミも捨てる。年寄りでこれをやる人が多い。これは重大な環境問題だと思う。そこで廃油を集めて石けん作りをしている。コミカレの環境コースでは、そのための石けん作りの機械を、西淡町の「海峡レストラン」の所有者が個人で持っていることを知った。 K 南淡町も消費者協会で声をあげたらよいと思う。東浦地区ではやっている。月1回実施するので大変なようだが。しかし、消費者協会はどこの地区でもある。婦人会は消滅してしまったところもある。地区婦人会長のなかには独裁的な人もいて、高齢になっても役職から退かないため、跡継ぎ問題が生じている。 I 婦人会活動は負担が大きく感じる。しかも、行政のお手伝いがほとんどという感じだ。また、自分たちの企画で何かしようと思っても、役員に負担をかけると思うと遠慮してしまう。でも、苦労した中で仲間ができてくる。一緒に苦労することが次へのエネルギーにつながってくる。合併後の活動も、地区から南淡、南淡から新市へと広がっていくような活動の仕方をやっていきたい。世話役の活動をする前に引いてしまったら、きっとわからなかったことだと思う。やってみたからこそ「良かった」といえる。だから、まず地域の人々を地域活動に引っ張り出すことが大切だと思う。  以上の発言内容には、市民が主人公になって行政と協働でまちづくりを進めていくことの意義がよく示されていると考える。また、行政としては、市民が活動のなかで学び、学びのなかで活動することによって「自立した市民」として成長することに注目する必要があるだろう。効果的な支援方策はそこから生み出すことができると考える。 5-6 人を集める工夫 Y 必要経費1000円の内500円だけ負担すれば寄せ植えをおみやげに持って帰れる。知名度のある人を講師に呼ぶ。そのような人を寄せる工夫が必要だ。 I 魅力ある企画ができるといい。 O 古典の夕べ、たきぎ能、淡路だんじり歌などに取り組んでいる。男女共同参画社会の活動で「女もだんじり」にも取り組もうとしている。 I 青年団がなくなってきている。春祭りに若者が出てこない。青年団のボランティア活動で、子ども対象に演奏を聴かせるという活動をしていた。こういう活動がもっとできないか。 A 青年団でそのような練習をしようとしても、練習に来てくれる人数はたかが知れている。それよりも「ナイス」(若者サークル)などのほうが参加度が高い。 K 「ナイス」は、青年団が衰退しているので企業に声をかけ立ち上げたものだ。 I 行政が企画をしても枠があるので、それより自由な発想で、公のお金は使わないでやっていくといいのではないか。たとえば、ボランティア団体と協賛で開催したらよい。 K 国の補助金もますます厳しくなっているが、それでもやる気のある自治体はやっている。しかし、合併しても、地区にキーパーソンがいないと地域活動は難しいだろう。行政に「おんぶにだっこ」状態になるのではなく、手を携えてやっていく方向が求められている。8泊の通学合宿も、民間と関わり、教育委員会がすべて指導者になってやったのではこのような広がりは見せなかっただろう。若者、婦人会、老人会に協力してもらったのがよかったのだと思う。 T 町長は「成果主義」だが、教育委員会の仕事には長いスタンスが必要な部分がある。そういう意味で、行政合併後に委託が進むのではないかということが心配である。合併したから行政サービスが悪くなったといわれないようにしたい。合併後、市民の課題がどうなるかを知ることが大切だ。 A 青年団・消防団の人数は決まっている。たとえば、消防団は長男だけであり、次男、三男で入りたい人もいるのに入れない。女の人も入れない。このようなことは改善した方がよいと思う。  以上の発言内容には、「まちづくりに参加する人たち」も、「人集め」をはじめ、多くの課題を背負いながら活動していることが示されているといえる。これを行政の立場から効果的に支援する役割の意義には大きいものがあると考える。 5-7 今回のインタビューに参加しての感想 S 他の町の職員として、今回はいい話が聞けたと思う。合併後は、これを機会として、いい方向に転換していきたい。今回のような話し合いによって、ネットワークができるのだと思う。合併の悪い方向に合わせるのではなく、良い方向に向かっていきたい。 O 地方では嫁探しが大切で、交流の場が必要だ。若い人たちが寄ってくる行事をしなければいけない。何をすれば若者が来てくれるのか。 I 以前は、合コンやダンスパーティをやっていたが。また、農漁村の健康づくり、フィットネスなどできるホールが、若い人に求められていると思う。 Y ITが進むほどに、人々の対話が切れているように思う。若い人ともっと交流しようと思う。やさしさの根本には対話があると思う。そのためには人づくりが重要である。自分のことしか考えられない子どもたちとどう接すればよいのか。接点が見つからないが、彼らが大きくなったときがよけいに心配である。この問題を解決して、明るくて勢いのある町にしたい。 I 合併後は、とくに弱者への心配りを求めたい。障害者、老人など、車に乗れない人にとってはバスでは不便なため、結局タクシーを使うことになってしまう。コミュニティ・バスが必要だ。弱い者にしわ寄せがいく合併にならないようにしたい。 K 皆さんの話を聞いていて対話のある町をめざしたいと思った。人の時代、心の時代だという。「地域のおじさんおばさん運動」のなかでの大人の声かけ運動は、大人の意識改革の試みだとは思う。しかし、これをさらに一歩踏み出したい。  このように、今回のすべての被調査者の市民が何らかのまちづくり活動に参加する者であったにも関わらず、ニーズや関心は多様である。一人一人のそれに対応した効果的支援が求められていると考える。 5-8 討論−インタビュー調査結果の総括  以上のインタビュー調査結果の分析から、前節までの考察が、市民活動を行う者のもつ希望や考え方と多くの部分で一致することがわかった。しかし、同時にそれらの者のなかでさえ多様性が認められた。  その場合、行政が彼らの多様な実態のそれぞれに適切に対応した効果的な支援方法を工夫する必要があることは、すでに述べたとおりである。しかし、行政が彼らに「能動的に働きかける」という場合、「多様」だけではなく、一貫した根拠が必要であろう。  ここでは、その問題を取り上げ、これまでの検討結果も考え合わせ、「討論」として提起したい。  「協働」という場合でも、市民のなかには、従来型や新型のどちらかに偏る者があってよい。自分の活動を「地域活動」や「市民活動」、ましてや「生涯学習活動」とは自認しない者があってよい。  しかし、行政には、そのような「自由な市民」とは異なる独自の役割があると考える。それによって、互いの役割を果たすことを前提とする「協働」が成り立つと考えられるのである。  第1に、従来型、新型、さらには「参加しない者」のそれぞれの立場や関心に応じた適切な支援方策をとるということである。それは、今回のインタビュー調査結果において、「参加する者」のなかにも合併に向けて多くの実践課題、学習課題が存在し、「参加しない者」ともミスマッチが生じていることが明らかになったことからも、行政の独自の重要な役割ということができると考える。  第2に、合併によってますます都市化が進行することが予想されるなかで、時代に対応した新型の市民活動の意義をよく理解し、これを促進するように努めることである。プロとしてまちづくりに関わるのであるから、そのための総合的視点と、それに基づく新たな展望につながる段取りを示せなければならないと考える。  第3に、コミュニティ活動や市民活動における学びの機能と意義についてよく理解し、その学習が効果的に進むように努めることである。生涯学習社会の形成や生涯学習のまちづくりなしには、「自立した市民像」は望めないと考える。  「まちづくりに参加する者」であろうとなかろうと、「自立した市民像」に向かって成長するかどうかは市民一人一人の自己決定事項であると考える。これに対して、「自立した市民像」と、それとの「協働」によるまちづくりへの展望をもち、これを計画的に進めるということは、合併時代の行政にとっては「選択事項」ではなく、「必須事項」と考える。  合併時代の行政が市民に対してなすべきことは、市民活動の方向性に対して干渉することではなく、活動する者、しない者の一人一人に対して適切な学習支援(=「教育」)を意図的に行うことなのではないか。  本研究の終わりにあたり、以上のとおり問題提起をしておきたい。 平成15年度 全国生涯学習市町村協議会調査研究事業 文部科学省生涯学習政策局「生涯学習施策に関する調査研究」委託事業 <執筆者一覧> 代表 福留 強  (特定非営利活動法人・全国生涯学習まちづくり協会理事長兼 聖徳大学生涯学習研究所 所長) ・・・・T,V5 齊藤 ゆか  (全国生涯学習まちづくり協会企画専門員)・・・・U   豊村 泰彦  (教育新聞社部長)     ・・・・V1,V3  武笠 和夫  (教育評論家・作家)・・・・V2 江里口 充  (福岡県筑後市生涯学習センター サザンクス館長・・・V4  西村美東士  (徳島大学大学開放実践センター教授)・・・・W 李 昶基*  (大田大学行政学部、大田地域生涯学習情報センター長・教授)                          ・・・・特論    研究協力 金 得永  (岐阜韓国教育院 院長・教育学博士)   崔 英美  (元お茶の水女子大学発達心理学講座 研究生) 山下真由美  (まちづくりコーディネーター) 小林優子  (まちづくりコーディネーター) 編集 齊藤 ゆか  (全国生涯学習まちづくり協会企画専門員)