日本の生涯学習フェスティバルの現状と課題 2005年9月23日 韓国平成教育連合会主催講演会 聖徳大学教授 西村美東士 1 日本の生涯学習フェスティバルの現状 (参照:文部科学省ホームページhttp://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/ 等) 1-1 趣旨  広く国民一般に対し生涯学習に係る活動を実践する場を全国的な規模で提供すること等により、国民一人ひとりの生涯学習への意欲を高めるとともに、学習活動への参加を促進し、もって生涯学習の一層の振興に資することを目的とする。 1-2 事業の概要  全国生涯学習フェスティバルは、主に次のような事業で構成する。 ・生涯学習に関するシンポジウム、フォーラム、講演等 ・芸術、芸能、スポーツ、レクリエーション等の展示、公演、イベント等 ・生涯学習見本市(全国の市町村や団体・企業等による展示) ・生涯学習体験広場(工芸等の体験教室、イベントステージ等) 1-3 開催実績 開催地 期間 会場 会場数 出展数 入場者数 大会テーマ 第1回 千葉県 平成1.11.23〜27 日本コンベンションセンター(幕張メッセ) 56 444団体 24万4千人 会いたいのは新しい自分 第2回 京都府 2.10.31〜11.5 京都国際会館、パレスプラザほか 112 109団体 45万3千人 きのうよりあしたのわたしへ 第3回 大分県 3.11.1〜5 大分市、別府市、湯布院町の会館等 145 183団体 68万2千人 豊かなあすへ一人一学 第4回 宮城県 4.10.31〜11.4 仙台市、気仙沼市、白石市等の会館等 225 179団体 102万3千人 学べばそこは未知の国 第5回 愛知県 5.11.19〜23 名古屋市、岡崎市、一宮市等の会館等 254 239団体 104万2千人 学びあい知り合い広がる夢空間 第6回 富山県 6.10.6〜10 富山市、高岡市、黒部市等の会館等 283 150団体 65万5千人 高志のくにからひろがる学び 第7回 北海道 7.9.28〜10.2 札幌市の会館等 243 263団体 76万8千人 「まなび」でひらく北のふるさと 第8回 福岡県 8.11.6〜10 北九州市、福岡市、等の会館等 563 258団体 141万1千人 未知のわたしと出会う道 第9回 新潟県 9.10.9〜13 新潟市、長岡市、上越市等の会館等 308 183団体 83万4千人 「まなび」の環わたし発新潟発 第10回 兵庫県 10.9.30〜10.4 神戸市、姫路市、尼崎市等の会館等 279 235団体 97万3千人 「学び−生活創造」未来を創るわたし色 第11回 広島県 11.10.7〜11 広島市、呉市、福山市等の会館等 359 205団体 117万5千人 まなびが創る新たなかけ橋 第12回 三重県 12.11.1〜5 津市、四日市市、伊勢市等の会館等 271 230団体 97万8千人 発見!発揮!発信!まなびの三重奏 第13回 山形県 13.10.11〜15 山形市、米沢市、鶴岡市等の会館等 162 146団体 71万1千人 すてきだねまなびのきずなゆめネット 第14回 石川県 14.10.10〜14 金沢市、七尾市、小松市等の会館等 135 143団体 75万7千人 学びごころ伝えようかがやくあすへ世界へ 第15回 沖縄県 15.11.27〜12.1 宜野湾市、那覇市の会館等 29 85団体 35万人 ちゅら島で拓こう自分!つなげよう心! 第16回 愛媛県 16.10.9〜13 松山市、今治市、宇和島市、新居浜市、西条市、大洲市等 もてなしの心をつなぐまなびの輪 第17回 鳥取県 17.10.9〜15 夢砂丘まなびのオアシスさがそうよ 第18回 茨城県 18.10.5〜9 まなびこそ輝くあなたの第一歩  なお、上記開催実績表において、第15回の入場者数が少ない理由については、開催地が沖縄であったため、首都等から地理的に離れていたからであろうと思われる。しかし、それにしても、第8回の141万人という数は、突出している。あとで参加団体の人数の適正規模については述べるが、同様に、入場者数に象徴される、大量宣伝による大量動員の時代は終わってもよいといえるかもしれない。 1-4 国の姿勢(平成16年度) @事業名 全国生涯学習フェスティバル A主管課 生涯学習政策局生涯学習推進課 B施策目標 生涯を通じた学習機会の拡大 C事業の概要  生涯学習の一層の振興を図るため、平成元年から開催都道府県との共催により、民間の企業、団体、個人等の参加を得て、生涯学習に関する各種イベント・学習成果を発表するための場・講演会・シンポジウム等を集中的に実施している。 D予算額 123百万円 E必要性  国民の生活水準の向上、自由時間の増大、高齢化の進展等、時代や社会が大きく変化していく中で、国民の誰もが生涯のいつでも、どこでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価されるような社会を実現することが重要である。とりわけ、生涯の各時期、各領域において、人々の学習意欲は増大するとともに多様化しており、こうした中で、生涯にわたって生き甲斐のある生活を送るために、日常生活の場で各種の学習・文化・スポーツ活動に親しみ、あるいは親しもうとする人々の意識が高まっている。  また「学習の成果を幅広く生かす(平成11年生涯学習審議会答申)においても、「住民の自主的な活動へ意欲をどう引き出して、適切な活動の場をどう設けるか、参加を希望する人と求める人のマッチングが円滑・効果的に進められるよう、行政の枠を越えた総合的なシステムの構築が必要となる」としている。  このため広く国民一般が日々の学習・文化・スポーツ活動を幅広く実践し、また、その成果を発表する場としての「生涯学習フェスティバル」を全国的規模で開催することにより、国民一般に生涯学習について考える機会を提供し、新たな生涯学習の在り方をさぐり、より多くの人々に生涯学習への参加意欲を促し、生涯学習のより一層の振興を図る必要がある。 F効率性  国と地方公共団体とが共催して実施をすることにより、生涯学習に係る活動を実践する場を全国的な規模で提供できるだけでなく、開催県におけるその後の生涯学習の気運の盛り上がりにも寄与しており、効率的に実施されているといえる。  また、大会運営において、開催都道府県のニーズが十分に配慮されるようにするとともに、過度の負担とならないよう、市町村、PTA、社会教育関係団体、経済団体、企業など、幅広い機関・人材が参画し、各団体がそれぞれの役割に応じ、連携を密にしながら、効果的かつ効率的な運営に配慮している。 1-5 最近の特色 (平成17年度鳥取県ホームページhttp://www.pref.tottori.jp/kyouiku/)  フェスティバルの特色は、国、開催地都道府県・市町村・生涯学習関係団体等で組織した実行委員会が用意した会場に、団体や企業、学校、学習グループ、行政機関などがそれぞれの事業を持ち寄り、主体的に実施する「参加型」のイベントであるということである。 2 日本の生涯学習フェスティバルの課題と展望 (韓国の生涯学習フェスティバルへの提案を含む) 2-1 少子化ダメージ縮小の視点 2-1-1 少子化ダメージ縮小の視点の必要性  朝日新聞アジアネットワーク客員研究員のベイ・グギン(韓国・東亜日報経済部記者)は、「日本よりハイピッチ、韓国の少子化」と題して、次のように述べている。  問題は社会全体に「ディンク族」(DINK=Double Income, No Kids)が拡散しつつあることだ。少子化の根っこには、共働きをしながら子供を育てられるような職場環境、社会環境が整っていないことがある。こうした「ディンク族」の風潮がさらに広まったら、少子化社会に悩んでいる政府がどんな対策を立てても歯止めがかからないだろう。  日本では少子化社会基本法が7月23日に参院本会議で可決、成立した。韓国でもいま少子化対策が緊急課題で、政府も新人口政策に取り組んでいる。少子化傾向は韓国の方がもっと厳しく、危機感もより深い。  韓国の統計庁が7月に発表した統計によると、韓国の昨年の推定合計特殊出生率(可妊女性1人が出産する平均新生児数)は1.17人。現在の人口構造を維持できるぎりぎりの出生率(2.1人)はもちろん、1.32人の日本の出生率も割り込んでいる。 (http://www.asahi.com/)  日本や韓国で、生涯学習フェスティバルへの参加者層として高齢者への偏りが見られないか。日本では、以前、生涯学習を、高齢者の余暇活用中心の活動としてとらえる誤解があった。もし、生涯学習フェスティバルが、たんに中高年の余暇活用のためだけに機能しているとすれば、生涯学習のまちづくりの大きな意義を失うことにもなりかねないと考える。  両国の少子化ダメージを縮小することに貢献するよう、生涯学習フェスティバルを運営する必要がある。そのためには、子育て支援及び青年の社会参加促進の視点が求められると考える。 2-1-2 子育て支援と生涯学習フェスティバル  われわれは、文部科学省の補助金を受け、本年度から、下記の研究を開始している。 研究の名称 :連鎖的参画による子育てのまちづくりに関する開発的研究 実践研究拠点 :聖徳大学子育て支援社会連携研究センター 研究期間 :平成17年度から21年度までの5年間 予算規模 :2億7560万円 研究理念  学生、教員、市民、親子、関連産業、自治体のすべての連鎖的で主体的な参画を実現し、わが国の子育て支援、次世代育成と、子育てを中心とした地域振興の質的向上に資することによって、ひいては日本の子どもたちがすこやかに成長できるような地域環境づくりのために貢献する。  われわれは、本研究をとおして、少子化社会における親教育のあり方を明らかにし、また、親の参画による「子育てのまちづくり」を実現したいと考えている。このような「親教育」や「子育てのまちづくり」が、生涯学習フェスティバルと連動することによって、「生涯学習のまちづくり」がいっそう促進されることになると考える。  本研究の概念図は次のとおりである。 2-1-3 青年の社会参加と生涯学習フェスティバル  また、われわれは、「少子化対策」として、出生率の向上だけでなく、青年の社会参加の意欲と能力を高めることが重要と考える。その点で、生涯学習フェスティバルは、そのための絶好の機会として活用されるべきであろう。 2-2 学びによる仲間づくりと「癒し」  生涯学習のもつ「癒し」の効果について考えるため、自著『癒しの生涯学習』の一部を紹介したい。  ここで癒しとは、心の傷をなおすことである。英語でヒール(heal)という。  ある学生が卒業後もぼくに「出席ペーパー」(後述)を渡し続けてくれている。そこには人間疎外の現代に生きる心を的確に表すたくさんの真実の言葉がひしめきあっている。「私は夜中一人で動き出すおもちゃです」。自分は自分らしくありたい、他者によって取り替えることのできない自分の人生を実感したいと思ったとき、昼間の世界の仮面や演技に耐えられなくなって、夜中の一人ぼっちの世界で自己のアイデンティティを見つけようとするのだ。しかし、彼女はこのようにも書いている。「放っておいてほしい、でも、気にかけてほしい」。落ち込んでいたいときには一人で落ち込んでいたい。自分のことをよくわかってくれていない人からの中途半端な慰めや、現代の競争主義にはまりこんでいる人からの優越感を伴った励ましは、かえって自分がみじめになるだけだ。だが、もし本当にだれもかまってくれなくなってしまったら、それでは人は淋しくて生きていけなくなってしまうということなのだろう。  引きこもりのカウンセラー富田富士也は「人は人によって傷つき、人によって癒される」といっている。また、「個は他者と関わることによってより深まる」という言葉も真実を感じさせる。ぼくの提唱している「個の深み」の味わいも、このような他者との出会いと自己への気づきのなかで肯定的に味わうことができるものだ。しかし、同質の者たちが画一化した価値基準のままに上下競争に追いまくられる現代社会(学校歴偏重社会)においては、人とのせっかくの出会いが仮面や役割演技に侵食されて、彼女のようにかえって苦しみ、個性を自己抑圧する結果を生じがちである。  このようにして現代人は癒しを必要とする状態に落ち込む。それゆえ、癒しとは、傷ついた心がもとの状態に戻ることをいう。今までの教育がつねに成長や生涯にわたる発達を第一義としてきたのに対して、癒しとは回復やいっときの安らぎしか表さない。そんな癒しの観点を後ろ向きだと批判する教育関係者もいるだろう。しかし、イルカと泳ぐ、水晶玉を買ってきて見つめる、など、若者たちが癒されようとしてさまざまな工夫をし、なおかつ癒されていない今日、彼らが後ろ向きだろうが何だろうが、彼らの幸福追求の営みにとって有効な、かつ、社会的にも望ましい結果が期待できるような支援の手を社会から差し伸べる必要がある。あるいは、「社会に適応するために成長、発達ばかり追い求め続けること自体が空しい。生きる意味をあえてあげるならば癒ししかないのではないか」と考えることもできる。  ぼくは、人びとを癒されない状態に追い込む「上下同質競争社会」において、癒しを提供する「水平異質交流」を生み出す時間・空間・仲間が突出的に存在していると考えている。それは、自己決定活動としての@生涯学習、Aボランティア、B地域活動(市民活動)の3つである。そこでは、「仕方ないから頑張る」などというぼくたちのいつもの奴隷の習性などはいらない。そういう人がいたらかえって邪魔になる。自立した者どうしが相互承認しあい、あるがままの自他を肯定的に受け入れあって(自他受容)、のびのびと異なった個性を育くみ、発揮しあうというところがサンマの魅力なのである。さらには、そこで、他者や社会に貢献できる有用な自己を再発見し、また、他者からその認知を受けて自他への信頼を深め、個を深めることができる。そこでは図(略)のような好循環が成立する。本書では、このような現代のリアリティを探りたい。  生涯学習フェスティバルは、「フェスティバル」という名が示すとおり、「楽しさ」が重要であるといえよう。しかし、その「楽しさ」とは、上記のような「学びの仲間」がつくりだす「楽しさ」こそがもっとも重要なのだと考えたい。  それを実現するためには、参加する団体の人数について適正規模を考慮する必要があるといえよう。たとえば、あまりに大きな団体であれば、いくつかのプロジェクトグループに細分化して、展示、イベント等を行ってもよいのではないか。このようなことによって、メンバー間の望ましい交流が図られるとともに、来客者に対しても、「手作り」的で温かな対応が可能になると考えられる。 2-3 地方と中央の関係  日本では、中央(国)の支援のもとに全国フェスティバルが開催された後、その地域のフェスティバルが独自に開催される事例が見受けられる。  このようなことは、生涯学習のまちづくりの観点からも、望ましいことといえよう。中央は、このような傾向を助長するよう配慮する必要があると考える。 2-4 大学との連携  日本では、生涯学習フェスティバルの日程に合わせて、現地で、「大学開放の在り方に関する研究会」、「生涯学習実務者協議会」が開かれ、各国公私立大学・高等専門学校の生涯学習担当者、公開講座等大学の開放に係る教職員が参加している。これは大学関係者の生涯学習に関する認識を高める上で、有益と考えられる。  また、大学との連携が強まることによって、生涯学習フェスティバルへの学生の主体的参加が促されることも期待したい。われわれの大学で生涯学習を学ぶ学生たちは、自主的な生涯学習サークルを結成してまちづくりや文化活動等に取り組んでおり、すでに日本各地から協力を依頼されている。学生の生涯学習フェスティバルへの参加は、現実の社会が求める人材を育てるという点で効果が高いと考えられる。  われわれは、来年度、聖徳大学において、「生涯教育文化学科」を新設する。そこで「地域社会に貢献するプロデューサー」を育てようと考えている。これは、読書アドバイザー、NPOのスタッフ、子ども会の指導者、青年の家、少年自然の家の職員、市役所の教育スタッフ、企業の企画員、社会体育の指導者、地域ボランティア、レクリエーションリーダー、演劇やダンスのリーダーなど、幅広い生涯学習の場で活躍する人の総称である。本学科では、社会教育主事を基礎にして、図書館司書、博物館学芸員、中学校・高等学校教員免許状、読書アドバイザー、レクリエーション・インストラクター、まちづくりコーディネーターなどの資格取得をとおして、地域に貢献し、教育文化の分野で活躍する人を育てることになっている。  本学科の内容は次のとおりである。 @ 特色 生涯教育と文化を結びつけた初の学科 生涯学習社会貢献センターをホームグラウンドにして、研究成果を全国に発信 全国の自治体やNPOと結び、ホットな情報を入手して授業展開・共同研究 各地の「輝いている人」から、その人の夢や課題を聴き取り、交流・研究 A 現実社会に通用する指導者の育成 生涯学習社会に求められる生涯教育に関する指導者 社会教育主事資格を持つ教師や図書館司書、地域の文化活動の指導者 地域文化活動の担い手をめざす実践的な指導者 民間も加えた幅広い領域の資格が取得可能 B そのために学ぶ多様でユニークな内容 地域の活動を加えた実践的な学習 生涯学習のまちづくりを通じた全国の自治体との連携によるまちづくり学習 シリーズコンサートや礼法など文化に係わる科目 C 実践的で楽しく、心温まる学習方法 公民館・図書館・博物館など社会教育施設における実習 生涯学習社会貢献センターを拠点とする実務研修の充実 D 教育・研究ともに優れ、かつ実践現場に根ざす教授陣 教育・研究・実践経験豊富な教授陣が、学生と一緒になって研究 学習だけでなく生活指導、就職指導など、一人一人の学生をサポート E 卒業時の「仕上がり像」 生涯教育がわかるオープンマインドと若者の気持ちになって考える能力をもつ中学・高校教師 自治体の教育、文化、まちづくりなどの生涯学習に関する専門職 地域において「市民の図書館」を経営し、子どもの読書アドバイザーもできる図書館司書 公民館、図書館、博物館、少年自然の家などの社会教育施設スタッフ 教育・文化・スポーツ関連の施設や企業の専門的なスタッフ 生涯学習、まちづくり等に関わるNPOや各種団体などの専門職員 スポーツ・レクリエーション、文化活動等の社会的活動を行う指導者  生涯教育文化学科の想定する学生像は下図のとおりである。ここで「みんなぼっち」という言葉は、日本の青年が、「社会よりも仲間が大切」という状態でありながら、その仲間同士のなかで一人一人が「ひとりぼっち」であることを示している。  本学科の私費留学生の入学試験は、本年10月に実施される(http://www.seitoku.jp/)。本学科で学ぶ日韓両国の学生が深く交流し、友好を深め、たがいに自国、隣国のまちづくりや生涯学習フェスティバルに積極的に関わるようになるとしたら、国際的にも大きな貢献ができるだろう。  また、本年度は韓国の高校生が本学科に入学しなかったとしても、韓国生涯学習フェスティバルの一環として、本学科に所属する日本の学生がわが生涯学習社会貢献センター(http://lll-studies.ddo.jp/xoops2/modules/enterprise/)において展示、イベントなどの協力事業を実施することができれば、国際的規模での生涯学習の推進や国際交流にとって大きな成果になると考える。 2-5 生涯学習フェスティバルのエコ・ミュージアム化  地域全体を活用したミュージアム活動をエコ・ミュージアム(Eco Museum)という。  これまでの生涯学習フェスティバルは、いくつかの拠点が置かれるものの、開催期間を過ぎてしまえば、その拠点はもとの施設等に戻ってしまい、フェスティバルも終わってしまう。しかし、本来、生涯学習をする人の喜びは、日常的にそれと関わるところから生ずると考えられる。その点で、数カ所の拠点以外にも、地域のあらゆるところで、多様な人々が、生涯学習フェスティバルに協賛して、展示やイベントを開くことになれば、大きな効果が期待できよう。その後の日常的活動につながりやすいと考えられるからである。また、来客者のほうも、その後、再び訪れたいと思うようになるだろう。  生涯学習という言葉を人々に知らせるために派手なイベントを行うべき時期は、日韓両国ともすでに過ぎたと考えてよいであろう。今後は、自由で多様な生涯学習活動をとおして、人々が日常的にまちづくりや社会参加を行うことが求められている。生涯学習フェスティバルは、そのための促進剤として、転換を図る必要があると考える。