松戸の親子・子育て産業振興に関する研究 西村美東士 1. 目的  松戸市内事業所の「子育てまちづくり」への参画と、それによる親子・子育て産業の振興のあり方を明らかにする。 2. 方法  松戸市内の事業者の参加を得てクドバス・ワークショップ「わが事業所ができること」を実施し、その成果から、事業所の参画を実現するための要素を抽出する。 3. 経過  平成18年3月23日、「松戸の親子・子育て産業振興のための検討会」(仮称)を実施した。  その概要は次のとおりである。 (1) 趣旨 おばあちゃん秘伝の手作り柚子胡椒を使った簡単鍋を試食しながら、子どもと親に優しい「子育てのまちづくり」の一環としての産業振興策の検討を行なう。また、松戸商工会議所等と本研究との連携を図るため、クドバスの手法を用いたワークショップによって、「各事業所が子育てまちづくりのためにできること」をチャートにまとめ、商品開発等の今後の方向を見いだす。 (2) 担当研究員 総合文化学科   長江曜子(主担当) 現代ビジネス学科 眞壁哲夫 児童学科     西村美東士 (3) 参加者  松戸商工会議所メンバー(事業者)及び聖徳大学子育て支援社会連携研究メンバー(学内教員)。 (4) 会場  聖徳大学生涯学習社会貢献センター10階 キッチンスタジオ (5) 日時  平成18年3月23日(木) 18:00〜21:00  クドバス・ワークショップ「わが事業所ができること」については、そのうちの19:30から21:00までの1時間30分で実施した。 4. 結果  結果は図1のとおりである。学内教員の提出した能力カードは網かけをして示してある。  能力カードをクドバスの手法によって分類し、いくつかの「事業」に集約して整理した。その結果、学内教員のみで構成される事業(「子育ての専門的知識の提供」)を除くと以下の9事業に集約された。 @ 親子ものづくり教室 A あのころの心のふるさと・語り部活動 B リトルシェフ C 仕事体験教室 D 安全・防災 E 子育てネットワーク F 心の居場所・異年齢の集まり G いのち・人・家族そして日本文化を伝える H サイエンス・子育て産業の育成  本図の能力カードの分布から、大学が中心になる事業は「子育ての専門的知識の提供」、事業者が中心になる事業は、「親子ものづくり教室」、「リトルシェフ事業」、「仕事体験教室」、「安全・防災事業」、「いのち・人・家族そして日本文化を伝える事業」、協働が求められる事業は、「あのころの心のふるさと・語り部活動」、「子育てネットワーク事業」、「心の居場所・異年齢の集まり提供」、「サイエンス・子育て産業の育成」であると推察される。  また、事業者の提出した能力カードについては、「わが事業所」や自分自身がもつ、子どもたちへの教育機能を提供しようとする意志が強く表れていると考える。これは、事業者と親・市民との「協働」(それぞれの立場を生かした協力)の意義とともに、「共同」(同じ立場からの協力)の可能性を示すものととらえられる。 5. 課題  今後の課題として、次の3点を挙げておきたい。 (1) 事業者一人一人がもつ「子どもたちへの教育機能を提供しようとする意志」を、「子育てまちづくりへの参画活動」に結びつけていくためには、各事業者が自発的意志に基づいて選択できるようにする必要がある。そのためには、先に挙げた9事業をはじめとして、その選択にたえうる実際の事業展開が必要と考える。 (2) 事業者としての立場を離れて、自分自身が市民として参画しようとする意志も表れている。これについては、多くの事業者が他の市民といっしょに参加できるような事業の展開も必要と考える。 (3) 事業者が、他の親や市民と協働して、上記事業を発展させるかたちで「産業振興」や「商品開発」を進めることができるよう、その発展プロセスを明らかにし、実践的に検証する必要があると考える。 可能な事業 能力1 能力2 能力3 能力4 1 1-1 1-2 1-3 1-4 親子ものづくり教室 物づくりの楽しさを知っている 物づくりをする場所と道具を提供できる 竹・木などで、遊び道具が作れる 印刷物ができあがる工程を体験させられる 1-5 1-6     親子で楽しく石を素材としてもの作りができる 落花生を育成栽培することができる     2  2−1  2−2  2−3  2−4 あのころの心のふるさと・語り部活動 古い環境、昔の景色を知っている 昔遊んだところで何をして遊んだか説明することができる 江戸川等、昔の遊び場を知っている 子どもを楽しませることができる  2−5  2−6  2−7   子どもが遊ぼうとやってくる 取っ手を回してカプセルの中に入っている品物を取り出す喜びを知っている 八柱霊園の歴史を話し伝えることができる   3  3−1  3−2  3−3  3−4 リトルシェフ事業 自分の店で子どもに調理体験をさせることができる 子どもたちが自ら作り、それを食べることができる お菓子のおいしさ、楽しさを教えることができる お菓子をつくることができる  3−5  3−6  3−7  3−8 手づくりのお菓子を製造できる 落花生を加工する場所を提供できる さつま芋堀をしたり、野菜の育ち方をお話ししたりできる 塩分を制限されている子どもに塩分のないパンを提供できる 4  4−1  4−2  4−3  4−4 仕事体験教室 自分の店で子どもに接客体験をさせることができる 中高校生の職場体験ができる 両親が汗して仕事をし、給与を頂き、子どもを育てていることを教えられる 技能は自分で見て学び取ること、他人から指導を受けるものではない 5  5−1  5−2  5−3  5−4 安全・防災事業 事故・場所の資料を提供できる 災害について資料を提供できる 子どもの通学路であるため、安全に信号を渡らせることができる 警察署にこうしてほしいという案があったら伝えることができる 6  6−1  6−2  6−3  6−4 子育てネットワーク事業 子育てネットワークの構築をすることができる(各団体の仲介役) 子育て中の母親がミニ運動会を行っているグループを知っている 異業種交流の場を提供できる 松戸市の健康推進員をやっていました 地域の親子を知っている  6−5       子どものためのコンサートやワークショップができる       7  7−1  7−2  7−3  7−4 心の居場所・異年齢の集まり提供 子育て家庭のたまり場ができる 寂しい気持ちでいる子どもにほっとする居場所を提供できる 家庭内暴力や子への虐待に悩むお母さんの悩みを聞き、場を提供できる 悩んでいる親の相談に応じることができる  7−5  7−6  7−7   親と子の心のよりどころを提供できる 子育ての悩みを共有し、受容することができる 子どもからの相談や話し合いに応ずることができる   8  8−1  8−2  8−3  8−4 子育ての専門的知識の提供 乳幼児年齢別発達を知っている 子どもの興味・関心を知っている 幼児教育ができる 親子教室(2〜6歳)ができる 子どもへの素話ができる  8−5       子どもに対して楽しい読書指導(導入)ができる       9  9−1  9−2  9−3  9−4 いのち・人・家族そして日本文化を伝える事業 家族としての関わりの中で仲間になって命の尊さを伝えるができる 人と人とが関わることの大切さを伝えることができる お墓作りを通して家族(いのち)の大切さを教えることができる 和菓子を通しで日本文化を伝えることを(場所)  9−5       茶道を通して日本の伝統文化を多少なりとも伝えることができる       10  10−1  10−2  10−3  10−4 サイエンス・子育て産業の育成 繊維製品の説明をすることができる 子どもにキャラクター商品のプリント工程(繊維)を見せることができる 昔の繊維のプリント技法の説明、体験してもらうことができる 千葉の特産物落花生について知っている  10−5  10−6  10−7   石を通して自然の大切さ(環境)を教えることができる 商品開発のファイナンスを考えることができる 商品開発の採算性を検討できる   図1 クドバスチャート「わが事業所ができること」平成18年3月23日(注:網かけは大学側カード)