研究紀要「聖徳の教え育む技法」第6号(2011) 生涯教育文化学科におけるキャリア教育体系化の試み ―学科教員による専門教育の実践とその成果から― 西村美東士、長江曜子、清水英男、斉藤豊、齊藤ゆか、林史典 ◆ ◆ ◆ ◆ 1. 背景と目的 1.1. 社会的背景  大学におけるキャリア教育については、大学に対する社会的要請の大きさや、学生自身にとっての重要性が指摘される。  文部科学省中央教育審議会答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(2011年1月)では、大学における職業教育に関して、「『実践的な人材育成は企業の役割』といった考え方から脱却し、高等教育における職業教育を通じて、自立した職業人を育成し、社会・職業へ円滑に移行させる」よう提起している。  ここでは、「実践的な人材育成」というキーワードに注目しておきたい。  経済産業省は、2006年から、「基礎学力」「専門知識」に加え、それらをうまく活用して、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、「社会人基礎力」を意識的に育成するよう提唱している。これは、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力から構成されるものである。さらに、2009年度からは、社会人基礎力の効果的な育成・評価手法を構築するため、全国の大学を対象に公募する「体系的な社会人基礎力育成・評価システム開発・実証事業」を実施している。  ここでは、職場のみならず、地域社会でも「多様な人々と仕事」というキーワードに注目しておきたい。  文部科学省は、学生に対する「職業教育」を、経済産業省は、「社会人基礎力」の育成を、それぞれ大学教育に求めているという点で、ニュアンスの違いはあるものの、両者とも政策的視点からの「大学への社会的要請」の一環であることには変わりない。  また、学生が、卒業後、職業に就き、職業生活を送るということの重要性は、日頃の学生との接触のなかで、教員が体験的に痛感していることである。むしろ、学生の中にはその重要性に気づかない者や、そこから逃げ出そうとする者がおり、その対応に悩んでいる実態がある。  ここでは、本学科の「(社会での)実践的人材育成」及び「(地域社会での)多様な人々との交流」という特徴を前提として論を進めたい。     1.2. 研究課題の設定  一般には、社会的要請の大きさや、学生自身にとっての重要性にもかかわらず、大学としてキャリア教育に取り組むことに対して、教員の疑義や反発も多いように思われる。  関連する先行研究から、大学におけるキャリア教育に関する問題を次のように整理できる1。   問題1:業種についての理解はできても、各企業における具体的な仕事内容にそのままつながるものではない。 問題2:職業知識の付与は、大学では、各学科の専門性によって限定される。企業は、それを採用基準にはできない。 問題3:企業の側が具体的に要求する資質・能力のイメージがきわめて曖昧なままであれば、学生自身の能力の自己判断も曖昧にならざるを得ない。 問題4:職業に対する「構え」は、学生が職業知識に則して自らの振る舞いを制限したり、発現したりすることによって獲得できる。そのため、個々の学生のとらえ方そのものに規定されてしまう。 問題5:コミュニケーション能力や論理的な思考は、生得的、あるいは幼児期から形成されてきたものであり、大学教育によってどのように形成されるかを具体的に示すことはできない。 問題6:コンピテンシー(ここでは、コミュニケーション能力や論理的な思考)というのは抽象的な概念である。個々の具体的なコンテクストにおいて意味を変えるものともみることができる。  このように、大学教育においてキャリア教育を適用することは容易なこととはいえない。しかし、大学教育として「できること」はあるはずである。われわれには、「できることはやる」という姿勢が求められているのだと考える。そこで、われわれは、「大学の専門教育におけるキャリア教育は可能であり、有効である」という仮説を設定し、生涯教育文化学科においてこれを検証したいと考えた。  そのため、上に指摘された「問題」について、それぞれ次のようにキャリア教育の「課題」を設定した。   課題1:具体的な仕事内容の理解促進 課題2:必要な職業知識の明確化 課題3:具体的必要能力の明確化 課題4:学生個人の「職業への構え」の育成 課題5:職業上必要な交信力と論理力の育成 課題6:社会対応型能力活用力の育成  これらの課題は、「大学としてできることはやる」という観点から、学生の(職業)生涯にわたる充実と幸福追求に資する課題として重要であると考えた。 1.3. 生涯教育文化学科としての取り組み  生涯教育文化学科では、2007年3月に、学科教員全員参加(当時)のもとに、学科ID(アイデンティティ)作成ワークショップを実施し、下図1のとおりチャート「学科が求める教育イメージ」を作成した。 (注)各カードを集約し、次のIDを設定した。 ID_01(白地) 子どもからお年寄りまでの「学び」とその支援について学びます。 ID_02(黒地) 人々の生活や学習・文化・レクリエーションをお世話する資格が取得できます。 ID_03(網掛) 組織や団体の人間関係と生産性を改善し、子どもや大人を笑顔にする人材として活躍できます。 図1 クドバスチャート「学科が求める教育イメージ」  このようにして、学科のキャッチコピー「本学科の特徴は、社会で即戦力、プレゼン・コミュニケーション実践、多様な体験、交流・連携、そして夢のある人生です」がまとまった。このような「社会で即戦力」などのキーワードは、いうまでもなく学科創設以来のキャリア教育志向を示したものである。  以降、生涯教育文化学科では、キャリア教育の体系化をめざして教員間で議論を積み重ね、現在では次のようなキャリア教育の取り組みを行っている2。   1 一年次 ・キャリア教育T:2011年度より導入。県の委託事業。 2 三年次前期 ・生涯教育総合演習T:生涯教育に関するキャリアを学科各教員によるオムニバス授業で学ぶ。学生各自の自立した女性としてのライフスタイル、ライフデザインを、ライフデザインノート作りをとおして、考え計画することを目的とする。 ・アンケートの実施:各学生の進路のイメージ作り。学科教員の学生支援体制作りにも役立つ。クラス担任の教員と就職支援担当教員との連携強化。 3 三年次後期 ・女性のキャリアチャレンジ:キャリアノート作成をとおして女性のライフキャリアを学ぶとともに、雇用者の現状を捉え、女性としての労働や自立に向かう態度を身につける。 ・職業意識と自己開発:キャリア支援室との連携により、実践的な就職指導を含む進路を考える授業を行う。 4 三年次通年 ・総合特別講座「環境と職業」:企業の環境に携わる非常勤の実務家教員により、テーマに関する体系的知識とともに、「企業人としての常識」を身につける。 5 四年次前期 ・総合特別講座「情報と職業」:4年のクラス担任と就職支援担当教員とが共同で担当。具体的な就職のための個人面談を行なう。四年次アンケートを毎月行い、学生の状況をクラス担任が把握し、科別会議で報告を行い、全学科教員による学生支援のあり方を点検・評価する。 6 四年次後期 ・「就職支援特別ゼミ」を正規の科目外で開講し、クラス担任と就職支援担当教員により、職業意識向上のため、就職後の充実まで視野に入れたフォローアップを行う。また、卒業までに進路が決まるように、卒論指導主査を含めた三者の連携により、最新情報の共有と支援体制の整備を図る。必要に応じて、各教員がそれぞれの立場で個人面談を行う。    本稿では、総合特別講座「情報と職業」を取り上げ、その分析をとおして、本学科の今後のキャリア教育体系化検討の一助としたい。   2. 課題解決の展望−学科専門科目における実践と考察 2.1. 本授業の目的  本稿で対象とした科目は、平成23年度前期専門科目「総合特別講座W−情報と職業」(4年次)である。科目全体の学習目標は、(情報ツールを活用した職業情報の収集、整理、加工、提示をとおして)「自分がその職業をめざす理由について、『好きだから』ではなく、『このようなことを、このようにしたいから』という展望をまとめることができる」である。  学生が自己の職業選択の理由を「(その業種を)自分が好きだから」と規定する場合、実際の職業人像をイメージできていないため、具体的な仕事との適合性についての検討が十分でない場合が多い。それは、課題1「具体的な仕事内容の理解促進」につながるものである。具体的な仕事内容へのアプローチを通して、「このようなことを、このようにしたいから」という展望を持つことができるようになれば、これは現在の学生の立場からではなく、未来の職業人の立場から現実的、主体的に職業に向かう態度を身につけたことになると考えた。  このような展望を持たせることが、感覚的次元ではなく、実際に働くことの具体像を深めて、PDCサイクルを可能にし、企業人事側のいう高業績遂行能力としての「キー・コンピテンシー」における現実的、主体的な問題意識、論理的思考、関係調整力などにつながるものと考える。  もちろん、学生は小学生から大学生の今日まで、ある意味では、各科目・教科、各単元においてPDCサイクルを学んできたといえる。しかし、そのサイクルを現実の職業に結びつけて実現するためには、教育内容を職業に特化した働きかけが有効であると考える。大学での専門領域の学問のPDCサイクルを身につければ、それは「学力」といえよう。その「学力」を「職業力」として生かすための教育が「大学としてできる範囲内で」必要である。  なお、本授業において、ワークは、受講者22人を、「デパート(伊勢丹)」、「レジャーランド(ディズニーランド)」、「市役所(川崎市役所)」の3チームに分けて行わせた。   2.2. 「自分」から「お客様」への視点の転換−ワーク「幸せの瞬間」  「このようなことをこのようにしたい」という展望を学生に持たせるためには、「自分は好き」から「お客様にとってはどうか」という視点に転換させる必要がある。  そのため、「幸せを人に配れる人になる」をテーマに、ワーク「幸せの瞬間」を行わせた3。本ワークは、通常は自分の視点から、自分自身の「幸せの瞬間」を書かせるのだが、ここでは、「お客様にとっての幸せの瞬間」を自己の体験から想像して書き込ませた。次に、ブレーンストーミングの手法に基づき、チームでカードを集約させ、いくつかの要素にまとめさせた。  デパートチームは、店員、得、設備、商品、食べ物の5要素でカードを集約した。「店員」という要素には、「店員が自分についてこなかったとき」と「案内のお姉さんがきれいだったとき」のカードが含まれていた。それは、「うるさくつきまとわれないほうがよい」と「素敵なほうがよい」という、店員との望ましい距離感に関するお客様の相反するニーズといえる。  そこで、教師として、「デパートにいらっしゃるお客様のなかには、素敵な店員がいてほしい人と、店員には近づかないでほしい人がいるようだ。それでは、店員は、お客様に対してどのように接すればよいのか」と発問することによって、「揺さぶり機能」を発揮した。  「自分はどちらがよいか」ではなく、お客様を理解して、お客様のニーズに応える視点を提供できたといえよう。このように、本ワークでは、「自分」から「お客様」への視点の転換が図られた。そのことにより、課題6の社会対応型能力活用力を育成するための糸口としての効果が生じたと考える。  なお、このようなワークは、課題5の「交信力と論理力の育成」について一定の効果のあることは認められようが、「職業上必要な」といった場合には、両者の関連は必ずしも明確ではない。これについては、キャリア教育研究の今後の課題としたい。 2.3. 各企業のもつ個性への認識の深まり−企業比較研究による学習効果  ここでは、学生に当該企業と対照群企業との比較研究を行わせた。具体的には、ネットなどをとおして、「就職したい企業」と「同業種の他企業」を比較して相違を見つけるよう指示した。そのことによって、通常は業種で「好き嫌い」を判断する学生に対して、その判断は、各企業に普遍的には通用しないこと、各企業が異なる個性を持つことを認識させようと考えた。  デパートチームの成果を下図2に掲げる。   図2 デパートチームの比較研究成果    図2において、デパートチームは、とくに企業理念及び環境活動における相違を見出した。そこでの地域社会や心の交流の重視に関する相違の発見は、生涯教育学の観点からの社会貢献理念の比較研究として評価できるものであった。  大学という場で生涯教育学を学び、学卒者として職業に就く学生にとって、職業生涯を充実させるためには、このような大学で育んだ自己の関心や問題意識を生かして、自己の職業に向けたPDCサイクルの方法や考え方を自ら学ぶ構えを身につけさせることが有効であると考える。そこでは、学生は、むしろ他社(希望する三越伊勢丹以外)の姿勢に共鳴し、その理由を述べた。このような視点をもつ学生を(たとえば三越伊勢丹に)送り出すことは、本学科の理念に根ざしたキャリア教育のあり方として重視すべきといえよう。  このことは、問題2「職業知識の付与は、大学では、各学科の専門性によって限定される」という指摘に対して、新たな視角による課題2「必要な職業知識の明確化」を、限定的にではあるが可能にするものといえる。  通常考えられている「職業知識」は、在学中ではなく、むしろ職に就いてから身につければ事足りるものが多いのかもしれない。しかし、学んだ学問のたとえ一部でも、その後の職業知識の一環として位置づけるためには、学科としてのキャリア教育を意識した専門的教育力の発揮が求められるのだと考える。  ある学生は、同チームでの学習成果を深め、次のようにレポートで記述している。「高島屋は人と人とのつながりを重要視しているといえる。イベントを行うにしても地域を通した交流があることは前提であり、環境への取り組みも人と人との支え合いによって成り立っている」。このような「職業知識」を持った学生が、高島屋以外のデパートに就職した場合、自社の「環境活動」については、主体的な問題意識をもち、論理的思考ができると推察される。その意味で、企業が求める高業績遂行能力としての「キー・コンピテンシー」の一部を育てることができたと考える。  たとえ、「企業は、それを採用基準にはできない」(問題2)としても、学生の職業生涯を充実させるという視点から、大学教育としてできること、すべきことはあるのだといえよう。 2.4. 必要職業能力の構造的理解−クドバス・ワークショップ  レジャーランドチームにおいては、インターネットで流されている噂として、「ディズニーランドで働く人たちは、お客様の目に触れて夢を壊すことのないよう、地下で働いている。就職するまで、その実態はわからない」ということが話題となった。  「それでは、君たちは、仕事の実際のイメージがつかめないまま就職することになってしまうではないか」と問いただすと、学生から、「夢が大切だから、それでよい」という答が返ってきた。職業人像を把握できず、それゆえ必要とされる能力も「地下のブラックボックス」にあるとすれば、学生は、在学中、どのような達成目標を掲げて学ぼうとするのだろうか。  それでも「好きだから」と学生が言う場合、職に就いてその実態と自己のイメージとの落差に愕然とし、長年あたためてきた特定の仕事への夢を、「私は向いていない」と言ってあっさりあきらめてしまうような事態さえ想定される。  そこで、それぞれのチームに、必要能力をクドバスでまとめさせた。「クドバス」(CUDBAS=CUrriculum Development Method Based on Ability Structure)は1990年に森和夫らによって開発されたカリキュラム開発手法である4。クドバスによって、教育内容項目を具体的な行動目標として能率的に記述し、カリキュラムもしくは教育計画を立案することができる。ここでは、職業能力の構造的把握のために、この手法を導入した。  作業の指示としては、各自、具体的必要能力を(想像して)20枚ほど「能力カード」に書き出し、これを「仕事別」にまとめて、「仕事カード」、「能力カード」を優先順に並べ直して、「クドバスチャート」を作成するよう求めた。  しかし、学生たちはもちろん現職に就いてないため、クドバスが前提とする現職の職能者とは異なり、想像に頼って作成させるほかなかった。そのため、必要能力の十分な書き出しには至らなかった。  たとえば市役所チームにおいては、仕事「地域でコミュニケーションをとる」のなかに能力カード「町民の気持ちになって考えることができる」が含まれていたが、教師としては次のように指導した。「町民の気持ちは多様であり、それぞれの特徴を把握しなければ、達成不可能な能力目標になってしまう。クドバスにおいては、達成不可能な能力を欠いてはいけない」。  ただ、知識・技能・態度に分解された能力カードから、仕事カードを作成して、必要能力を配置することにより、必要能力の構造的理解のための方法論を教えることができたことは有益と考える。  問題4で「(職業に対する『構え』は)個々の学生のとらえ方そのものに規定されてしまう」という指摘を挙げたが、これに対して、「具体的必要能力」を学生に考えさせることによって、課題4の「学生個人の『職業への構え』の育成」は、限定的にではあるが可能であると考える。  だが、本授業における取り組みは、「必要職業能力の構造的理解」自体としては、不十分であったといわざるを得ない。今後は、実習先の職場における必要能力を分析させたり、職場取材や職業人へのインタビューによって、その職業人像をチーム内で共有させたりしてから、「能力カード」の書き出しをさせるなどの改善が必要であると考える。  それでは、チーム全員で特定の職業人にインタビューをさせ、職業人像を共有してからクドバスチャートを作成させた場合、職に就いていない学生でも、一定の成果を出すことができるのか。  その点を検討するため、ここでは、平成22年度後期「生涯教育指導者論」において、「准教授能力分析チーム」が作成した「子育て中の准教授に必要な能力」のクドバスチャート成果を、下図3に示す。   図3 クドバスチャート「子育て中の准教授に必要な能力」    1年生の授業であったため、必要能力の表現において、適切性及び具体性に欠けるところはあるが、@ワークの時間として、クドバスが想定する2時間を確保することができた、Aこのチームは、現職で子育て中の准教授に対して30分程度のインタビューを行ったため、学生の想像だけではなく、現職者からリアルな職業人像を聞き取ることができた、などの面から、職業能力の構造的理解の方法論を教える点では、より効果的であったと考える。  前掲問題3では「企業の側が具体的に要求する資質・能力のイメージがきわめて曖昧なままであれば、学生自身の能力の自己判断も曖昧にならざるを得ない」とされている。しかし、具体的な必要能力についていえば、じつは、現職者でさえ、多くは当該職業人としての必要能力を構造的、明示的に把握できているとは限らないのではないか。課題3「具体的必要能力の明確化」は、現職者教育、大学のキャリア教育双方の共通の課題であると考える。  また、職業の場とは異なる大学教育の場だからこそ、このような手法を用いて、必要能力を科学的に分析し、構造的に理解する方法論を教えるべきであると考える。   おわりに  生涯教育文化学科においては、「社会で即戦力」というキャッチコピーのもとに、教員全員がキャリア教育についての議論を積み重ね、教育実践に取り組んできた。  本稿で取り上げた「総合特別講座W−情報と職業」を対象として学科としての授業研究を行ったときの結論は、次のようなことであった。「学科としてのキャリア教育体系化を進め、本授業もそこに明確に位置づける必要がある。そのためのポイントは、年次ごとにキャリア教育の達成目標を掲げ、卒業時には、就職及び職業生涯を充実して送る資質・能力をもった卒業時の達成像に到達できるようにキャリア教育を構造化、計画化することである」。  本授業の開始時期の再検討など、本学科における個々のキャリア教育授業の多くの検討課題は、このキャリア教育体系化を基本的視点として取り組まれなければならない。そこでは、前述のようないわば「キャリア教育の達成目標自体、曖昧にならざるを得ない」という難題に立ち向かって、学科アイデンティティに基づいて設定する卒業時の達成像の明確化のもとに、各授業が再統合されるものと考える。  本学科では、全教員で学科キャリア教育の体系化に取り組み、本研究を発展させたいと考えている。   1 本稿では、おもに次の論文から問題点を導き出した。金子元久「キャリア教育−小道具と本筋」、IDE大学協会『現代の高等教育』No.521、p.4-10、2010年6月。大学におけるキャリア教育に関する先行研究において指摘されてきた課題についての研究結果は、詳しくは、聖徳大学生涯学習研究所紀要『生涯学習研究』10号(2012年3月発行予定)において報告する予定である。 2 本学科の就職支援担当教員である長江曜子のまとめによる。 3 西村美東士「親子関係における気づき過程とその支援−公開講座による子育て支援の実践」、徳島大学大学開放実践センター紀要12巻、pp.76-77、2001年6月。 4 西村美東士「クドバスを活用した子育て学習の内容編成−高校生の子をもつ親のために」、聖徳大学生涯学習研究所紀要『生涯学習研究』3号、pp.41-54、2005年3月。 --------------- ------------------------------------------------------------ --------------- ------------------------------------------------------------ 1