ワークショップデザイン論―創ることで学ぶ 山内祐平, 森玲奈, 安斎勇樹 1,890円(税込) 発売日:2013年06月07日 慶応義塾大学出版会  筆者らは、「これからの社会のために、よりよい学びとは何かを考え、学びの場を自ら創りだし、増やしていく」というコンセプトのもと、NPOのスタッフとして、ワークショップの理論と実践を往復しながら学ぶ大学生向けの勉強会をネット上で展開している。  筆者は述べる。「学術の世界においては、様々な人が改善できるように研究の問題・目的・方法・結果を公開することが大切にされている。新しいアイデアを持つ人々がその知見を利用し、イノベーションを起こすことができるからである」。本書でも、あくまでも教育の視点から、一見「遊び」に見えるような活動も許容されるワークショップについて、活動目標と学習目標を設定し、これを達成するための「P企画‐D運営‐C評価」の各段階の展開について、既存の理論を援用して実践的に解説する。  ここで、相対的評価から診断的評価への転換が重視され、新しい評価手法が紹介される。とくに、「予期されていなかった学習」を見落とさず、次のA改善に反映させる、いわばPDCAサイクルの実現が目指される。このとき、一般的な論では、AからPに循環するのであるが、ワークショップではもっと実践的なモデルが想定されている。適切な評価による修正が、分析、設計、開発、実施のすべてのプロセスに対して迅速に、直接的に行われるのである。  フィールドに出て、地域で暮らし、働く人々に接しながら学ぶことができない場合でも、このような実践的PDCAサイクルに基づいたワークショップの展開によって、自由で柔軟な教育活動としての可能性はより高まるものと考えられる。