森和夫、河村泉 能力開発の実践ガイド−15の教育ニーズから逆引きで使う 出版社:日本能率協会コンサルティング 出版年月日:2013年10月15日 定価:本体 2,940円  知識・技能・態度に関する能力達成の教育目標を掲げて授業を行うことは、学校教育の基本である。にも関わらず、いわば「冷たい」能力主義に関して、教育界にはこれまで強い抵抗があった。本書は、企業内教育の立場から、教育を、「人々の暮らしを支え、発展させるのに欠かせない活動」であり、「温かな人間観を土台にして成り立つ」能力開発の活動としてとらえる。   本書では、技能訓練用テキストがない・つくれない状況を打破したいなどの「技能教育を充実したいニーズ」、品質の考え方・取組み方を身につけさせたいなどの「海外の人材を強化したいニーズ」、教育訓練の診断をして教育をレベルアップしたいなどの「人材育成を最適化したいニーズ」の3種15項目の教育ニーズに対して、「逆引き」で即実践に使える方法が示される。  学校教育の立場からは、とくに「暗黙知の整理」と「クドバス(職業能力の構造に基づくカリキュラム開発手法)による能力構造化」の2点が注目される。暗黙知については、「環境=場の概念」「最終目標としての成果=到達目標概念」「行為(運動)=空間上の概念」「構成(作業計画)=手段と時間の概念」のもとに、技能分析表を作成する具体的方法が示される。クドバスについては、職業人としての到達像に基づく能力を「上から落ちてくる」のではなく「下から帰納的に積み上げる」方法で構造化し、具体的な教育計画及び達成度評価の基準を作成する方法が示される。「ルーブリック」など、あらめて生徒の能力達成に各教育現場で責任を果たそうとする動きの中で、それに先行する企業内教育のこのような方法論は示唆に富む。