オタク的想像力のリミット −〈歴史・空間・交流〉から問う− 宮台真司、辻泉、岡部大介、伊藤瑞子ほか 出版社: 筑摩書房 発売日: 2014/3/26 定価:本体2,500円+税 クールジャパンとしてオタ文化が脚光を浴びるなか、著者は、海外の「ゲイシャ・フジヤマ・シンカンセン」と同列の「オリエンタリズム」を超えた理解を図ろうとする。そのため、コスプレ、鉄道オタク、萌え、格闘ゲーム、腐女子などについて、社会学の手法と知見で解説するとともに、次の文献を収録している。東浩紀氏の「小さな物語をデータベース消費する」とする『動物化するポストモダン』、北田暁大氏の「蛸壺の宇宙の中でつながりを求める」とする『嗤う日本のナショナリズム』、森川嘉一郎氏の「個室が都市空間に延長する」とする『趣都(アキハバラ)の誕生』。いずれも、オタク文化に、近代を超えるポストモダンの可能性を見いだそうとしている。われわれには、今の時代を理解しつつも、どう「大きな物語」としての歴史学等を教えるかが問われているといえよう。 オタクの「想像力」について、辻泉氏は「(私自身が)なぜ鉄道オタクなのか」という問いのもとに、敗戦までの「汽車の時代」を「空想の時代」、高度経済成長期の「電車の時代」を「夢想の時代」、低成長教育の「ポスト電車の時代」を「幻想の時代」、現在の「ポスト鉄道の時代」を「妄想の時代」と分析する。そして、このような「想像力の文化」を組み込んだ新たな社会を構想するよう提唱する。 終章において宮台真司氏は、オタク・コンテンツが持つ「文脈の無関連化機能」により、「オリエンタリズム」の曲解が乗り越えられるのは時間の問題とする。われわれには、彼らの想像力という内なる世界をより豊かにしながら、かつ、文化・価値の文脈をいかに伝承するかが問われている。オタクにはオタクの可能性がある。