世界一やさしい精神科の本 (河出文庫) 斎藤 環 (著), 山登 敬之 (著) 価格: ¥ 691 発売日: 2014/4/8 「14歳の世渡り」という副題の「使える」精神科の本が文庫化された。  山登氏は、今の「発達障害」を障害として扱う必要のない文化もあることを指摘する。斎藤氏も、引きこもりについて、文化の影響を指摘する。欧米では、成人後に親と同居するのを恥じとするが、日本や韓国では、儒教文化の影響が強く、家を継いで親の面倒をみて一人前の大人とみなされる風土があるというのだ。だが、若者の「非社会的」な傾向は問題だという。よっぽどの才能と意志があれば「健康的に引きこもる」ことができるかもしれないが、普通なら、人間関係がなくなると「生きる意味」さえも見えなくなると警告する。対人恐怖、摂食障害、解離、PTSD、人格障害、うつ、統合失調症などについても、「14歳の世渡り術」が述べられている。  斎藤氏は、「ナンバーワンよりオンリーワン」や「みんな違ってみんないい」という言葉に偽善性を感じ、「多様性」とは、人の心の限界や不自由さという壁があってこそ生まれるものと主張する。そして、望まれる多様性とは反対に、スクールカースト(生徒間身分制)の格差決定要因が「コミュニケーション・スキル」に一本化されていると指摘する。笑いをとるなどの対人操作能力が高いヤンキーが最上層に位置づき、ほかのオタクなどの能力は評価されないというのだ。こういう生徒間の熾烈な生存競争の中で、キャラを演じながらも、カーストの価値観に染まりすぎずに自分を守ることが大切だと助言する。  ヤンキー的な生徒の能動性だけを評価するのではなく、受動的な生徒に対しても、多様な評価基準をもって接することが望まれよう。