中野 円佳 (著) 「育休世代」のジレンマー女性活用はなぜ失敗するのか? 光文社新書 2014/9/17 950円  中野氏は、1999年の改正均等法以降入社の旧帝大出の一流企業総合職女子を中心に、15人のエリート女子の育休取得後の挫折を追う。彼女たちは、男並みに仕事で自己実現すること(バリキャリ)と、早めに出産して子育てするという「産め働け育てろプレッシャー」のジレンマに陥るという。「生きずらい」などと口走れば、他の女子から「あの人たちは勝ち組だから」と距離を置かれる。育休明けに復職しても、周りから「配慮され」、バリキャリの時のようには働かせてもらえない。彼女たちは、子にはお受験をさせない。自らは高い学業と社会的地位を達成しながらも、今となっては喜べないでいるのだ。  エリートの割には、妊娠時期については無計画で、また、結婚前に家事分担について相手と話し合いもしていない。同類婚といって、自分と同等以上の時間のない相手を選ぶが、海外出張に飛び回る夫をずるいと思ってしまう。そもそも就活中も、やりがい重視のため、復帰に不都合な職場を選んでしまっている。  すべてが自己決定に帰結され、社会に対する無関与が広がるこのような状況に対して、中野氏は、「既存の構造を疑い、新しい価値を生み出し、社会を変えていく人材を育てる」よう提唱する。  評者は次のように考える。エリート女子といえども、一般の現代青年と共通の課題をもっている。現実社会において重要なのは、自己実現を自己内で完結させずに、他者と自己実現を互いに支え合うということである。夫ともコミュニケーションをとらなければならない。職場や地域の未来のリーダーを育てるためには、このような視点が求められる。