藤川大祐授業づくりエンタテインメント 藤川大祐 (著) 授業づくりエンタテインメント! ―メディアの手法を活かした15の冒険 出版社: 学事出版 (2014/12/5)  精選した内容をびっしりと詰め込んで、@導入、A展開、Bまとめで進行させる。毎回の授業を、このように埋めていく。教師が一生懸命働いている姿とは、そういうことだという誤解が、教師を苦しめてきたのではないか。これに対して、藤川氏は、@予告、Aライブ、B余韻で授業を構成するよう勧める。教師がすべてを背負い込むのでなく、子どもたちを没入させるエンタテインメントを活かした仕組みをつくり、余裕をもって日々の授業に取り組めるようにしようというのである。  そのため、次の手法が盛り沢山に紹介される。「ほにゃらら」発問による回答制約、お笑い芸人の「おもてなし精神」などのMC力の応用、伏線の張り方と「回収」、太字のフリップによる子どもの意見の見える化、承認による利得構造の実現、少数意見を出させるための抽選指名、説明不要のアフォーダンスによるシート・板書、認知リソースの負荷を下げるカンペ・掲示、客に受け入れさせてしまう「フットインザドア」「ローボール」などのセールステクニックの応用、プレゼンの動画記録による自己点検の促進。  また、「社会とつながる学校教育」の章では、@ゲストを招いて、教師はコーディネーター役を務める、A地域からの「正式な依頼」を受けて、地域社会に貢献する、B大人の力を借りて、子どもが他人任せにせずに問題を解決する、などの方法も紹介される。最後に、ゴールとルールを定めて、地域イベントのゲームを作らせる「ゲーミフィケーション」の事例が紹介される。ICTやSNSを活用することによって、教師は楽になり、若い魂が解放されるという。  評者は次のように考える。個人のペースで学習できる教材が簡単に入手できる現在において、次世代のプロの教師の仕事とは、全力を注入して個人学習に匹敵する授業をすることではなく、生徒を楽しませて、意欲向上や方法論獲得を支援することにあるのだろう。「しゃかりき」ではなく、このような双方向ライブ感覚のエンタテインメントによってこそ、「ゆとり教育」も実現するのだと考える。