赤坂 真二 ○×イラストでわかる! 小学校高学年女子の指導 価格:¥1,058 出版社: 学陽書房 (2015/10/17) 発売日: 2015/10/17  小学校高学年女子について、教師になれなれしくしてみたり、それを注意すると今度は無視をするなど、関係づくりが難しいと赤坂氏は言う。そして、教師との関係づくりを困難にしているのは、彼女たちの形成する私的グループの存在だと言う。グループの一人を叱るなどして関係が悪くなると、グループの全員と関係が悪化すると言うのだ。「教師と」よりも「ピア(仲間)と」の関係が小学校高学年女子にとっては格段に重要なのだろう。  このことについて、赤坂氏は次のように分析する。男子にとってグループは共通の取り組みをするための手段だが、女子にとっては、グループは居場所そのものである。しかし、男子の暴力等の「オモテ攻撃」に対して、女子は無視、手紙回し、陰口、ネットいじめなどの見えにくい「ウラ攻撃」が横行しがちである。さらには今日の@自信の喪失、A個人攻撃しやすい密室性のあるメディア、B他者への共感性の未発達が、このような「女子特有の不易の傾向」を増幅させていると言う。  赤坂氏は、このような女子の傾向について、アドラー心理学の立場から「(居場所への)所属欲求」の表れととらえた上で、彼女たちとかかわるポイントとして、「全員をひいきする」「グループ全体を視野に入れる」「感情を理解する」よう提案し、いじめ、仲間はずし、グループ対立、集団反抗などへの対応術、予防法を具体的に解説する。  評者は次のように考える。自立の遅れと性差の縮小傾向を考えると、この小学校高学年女子の傾向は、今後、男子も含めた中高大学生にまで敷衍するかもしれない。最近の調査では、小学生が不登校となったきっかけは、いじめが2%弱なのに対して、いじめを除く友人関係は11%強である。スクールカーストなどの格差の拡大のなかで、他の層との交友が遮断されて共存状態になり、その分、閉鎖した仲間内部の関係が難しくなっていると考えられる。そして、若者のときに「仲間以外はみな風景」と称された世代の教師が、このようなより閉鎖的な友人関係に取り巻かれた子どもたちと格闘している。このようなとき、学校を居場所とするだけでなく、たとえ今の同一化集団からいっときは孤立したとしても、一人で調べ、考え、答えを見つけ、社会への視野拡大と自立に向かえるような「生きる力」を育てる教育の役割を忘れてはなるまい。そのときには、学校内、学校外の、異年齢・異世代間の交流体験が大きな意義を持つことだろう。