溝上慎一(著) アクティブラーニング型授業の基本形と生徒の身体性 2018/3/1 出版社:東信堂 1080円  講義を受けるとなると、ノートを取るなど、いかにも講義を聞いているように見える「身体化」が生徒には確立されている。これに対して、AL(アクティブラーニング)では集中度が低い。そのため、教師には「講義の方が良い」という本音がある。このような「従来の教授学習の枠組み」を、その外にある「仕事・社会へのトランジション(移行)」につなぎ直すよう筆者は提唱する。「主体的・対話的で深い学び」というALについても、県や学校によって相当な温度差があり、格差が生まれている。二〇三〇年、二〇五〇年社会を乗り越える準備である改革に対応できない学校に対して、筆者は警鐘を鳴らす。「(関係者の無知により)県や地域、学校が衰退していくのは勝手だが、そこに居住し、大人になっていく子ども・若者の未来が危ぶまれるのには心が痛む」。そして、進学実績や就職率に一喜一憂するのではなく、ALに適した目標設定とアセスメントが必要だと言う。  AL改革の喫緊の課題は、「一方通行的な知識伝達型としての講義型を講義+AL型授業に転換すること」であり、そのことによって、主体的学習は、面白さなどの即自的な「課題依存型」から「自己調整型」、そして自身を認知する対自的な「人生型」へと深まると筆者は言う。  評者は考える。ときの教育政策に振り回されて、卒業までの教育に追い回される。これでは教育は創造の楽しさを失ってしまう。学校からのトランジション後の生涯の充実を目指すとともに、二、三十年後の社会に向けた価値をともに創り出す、そこにこそ改革とALの神髄と楽しさがあると言えよう。