日本青年心理学会企画 君の悩みに答えよう 青年心理学者と考える10代・20代のための生きるヒント 出版社:福村出版 発売日:2017/12/2  同書は「若者よ、おおいに悩むべし!」と訴え、生き方、政治・宗教、進路・就職、学業、友人関係、SNS・ゲーム、親子関係、気分・性格、恋愛、身体などの若者の悩みにQ&A形式で回答する。大野久氏は、青年心理学の研究者は、アンケート結果の統計的分析だけでなく、授業の中で提出される悩みに関するレポートやリアクションペーパーを読む機会が多いと述べているが、同書は、その強みを発揮して、同時代の若者の空気をよくつかまえたものになっている。  「キャラを演ずる」という傾向については、「キャラは一種のコミュニケーションツール」として受け入れ、@人間関係の単純化、A享楽的なコミュニケーションの促進、B居場所の獲得というメリットを挙げる。その上で、「等身大のあなたを受け入れてくれる友人をつくろう」とアドバイスする。  恋愛や性への失望や物格化の傾向については、「それなら恋愛しなくてもよい」と受け入れつつ、「恋愛は必要だからするものでなく、楽しいからするもの」とし、「愛される喜び」だけでなく「愛する喜び」を大切にするようアドバイスする。  だが、「若者よ、おおいに悩むべし!」という同書のメッセージは、一部の「悩める若者」を除いた一般的な若者にどう受け止められるのだろうか。今日の時代においては、中教審が指摘した「自分探しの旅」について疑問視する「現実主義」からの批判も強い。そういうなかにあっても、教育は、今日の課題に対応したかたちでの若者の自我の確立の支援という役割を放棄することはできない。教育現場で個人に応じた解を積み上げる必要があると評者は考える。