樺沢紫苑 学びを結果に変えるアウトプット大全 Sanctuary books 2018/8/3  この本は、説明・アイデア・雑談・交渉などについて、「脳科学に裏付けられた伝え方・書き方・動き方」を解き明かす。樺沢氏は言う。本を読んだり、セミナーを受講したりしてインプットしても、アウトプットの方法を間違えていると、自己成長することはできない。なぜならば、それが脳の仕組みだからだと言う。そして、氏は、前者と後者の「黄金比」を3対7と見積もる。  以下、「伝わる話し方」「能力を最大限に引き出す書き方」「圧倒的に結果を出す人の行動力」等について、脳科学、心理学等を駆使して説明する。また、アウトプット力を高めるトレーニング法として、日記を書く、健康について記録する、読書感想を書く、SNSに書くなどを勧める。そのほか、雑談は長く話すよりもちょくちょく話す、記憶の定着のためには「読む」「講義を受ける」よりも「他人に教える」、成績を上げたりアイデアを出したりするためにはタイピングよりも手書きで、涙にはストレス発散効果があるなど、興味深い話題が続く。  教育界においても、充電だけでなく、放電が重視されるようになった。だが、評者は、最近強調されている「社会で役立つコミュニケーション力」と、この本の「自己成長に役立つアウトプット」との間に、微妙な差異を感じる。前者は、競争社会の生き残り手段、後者は相互関与による「学び合い支え合い」を表していると言ったら言い過ぎだろうか。前者の「コミュ力圧力」によって、若者がすりこぎのように自らをすり減らしているような気がする。教育においては、楽しい充電につながるような「支え合う放電」を追求したいと思う。