高橋孝雄著 小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て 出版社:マガジンハウス 発売日:2018/9/6 ¥ 1,404  高橋氏は「持って生まれた才能は、いつか必ず花開く」として、「親がすべきことは、その才能が花開くのを温かく見守ること」と言う。「子育てにいちばん大切なこと」としては、「共感力」「意思決定力」「自己肯定感」の3つを挙げる。氏は、「小学1年生は家庭からの脱皮。先生を尊敬し、信頼して任せてください」と言う。子どもへの愛の伝え方については、たとえば子どもがお母さんにかまってほしくて「おなかが痛い」などと訴えたりする「アテンション・シーキング・デバイス(注意喚起行動)」については、「そうだったの、つらい思いをさせてごめんね」と感じるだけで、子どもには十分に愛情が伝わると言う。  子どもの自己決定の尊重については、かたくなに手術を拒んで「絶対イヤだ。おれ死んじゃう」と駄駄をこねるのをなだめて、手術室へ運び、二度と帰ってこなかった子どもの例を挙げ、後悔の念を述べる。おそらく子どもなりに死期が迫る予感があったのだろうと言うのだ。  社会的視点から見た子育てについては、次のように述べる。子どもアレルギーのような社会は、どの世代にとっても暮らしやすいはずがない。見も知らぬ子どもに「ここにいてくれてありがとう」と感謝し、子どもに共感できることが、文化度の高さだと言う。そして、自分の子どもを育てることはなくても、社会の中で子育てに参加してみませんかと呼びかける。電車の中で子どもに出会ったとき、目が合ったらそっと微笑みかけるだけでも、それは社会的な育児参加だと言う。  評者は考える。教育の側から今の親を批判したり、絶望したりするだけでは、問題は解決しない。自己肯定感を持てず、ときには、人生の大切なワンシーンである子育ての時期に、抑うつ状態にさえ陥る親の悩みを受け止め、「親は子どもの才能が花開くのを温かく見守るだけでよい」というメッセージを伝えることこそ、重要なのだろう。そして、個人完結型の子育てから、社会的な育児参加を進め、誰もが「子ども時代の宝物」を大切にする豊かな文化をもつことができるよう支援することこそ求められていると考えたい。