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職業能力の見える化がもたらすものは何か

職業能力の見える化がもたらすものは何か

職業能力の見える化がもたらすものは何か

若者文化研究所 西村美東士

2023年2月11日 第2回CUDBAS研究大会
主催 一般財団法人職業教育開発協会 VEDAC

大会プログラム講演要旨集 参照:プレゼン資料



 最近の「生きる力」「非認知能力」などの議論や「新しい能力論」が、教育側だけでなく、雇用者側や世論を含めて、盛んに主張されるようになっている。これらの能力論に基づくと、現場での必要能力からかけ離れた「教育目標」が観念的、演繹法的に「抽出」され、恣意的に精神論が並べられる結果になりがちである。
 これに対して、クドバスでは、職業人が必要と感じている当該現場での能力をすべて(能力カードとして)リストアップし、それらを帰納法的に(いくつかの仕事カードとして)構造化するため、全体像を把握することができる。そこで作成したクドバスチャートが、該当する現場の他のメンバーに承認され、追加の能力カードはほとんど出されないということをわれわれは経験している。このように、現場に限って言えば、必要能力をほぼ完璧に網羅し、構造的に「見える化」するクドバスの威力は大きなものがある。これが提示されていない職場で、能力獲得目標が不明確なままに、「自分にはこの仕事があっているのだろうか」という漠然とした悩みを抱える職業人にとっては、クドバスの導入は自己のスキルアップの展望を、育成者にとっては職員が主体的に参加できる人材育成の方向を、それぞれ「見える化」する結果につながるといえる。
 このようなクドバス作業の最初に設定されるのが、「職業人像」である。職場の理念と課題を共有し、これを解決する職業人としての「仕上がり像」を設定するのである。これはクドバス作業の「目的」の設定にほかならない。これを共有したメンバーが各自の個性の発揮や自己内対話を通して、多様な側面からの能力カードを書き切るのである。それが先述したように、ほとんど漏れのない必要能力のリストアップとしてまとまっていく。
 それでは若者は、どのような「職業像」を描いているのか。自己の生き方を説明できるようになることは、若者の自己成長にとって大きな意義をもたらすと考えられる。そのために仕事、関係、生き方、見通し・将来・未来について問いを発し、これを若者に回答させた。
 「仕事」に関する問いは次のとおりである。生活における仕事の割合は/働くことはつらいことか/楽しい仕事はあり得ないか/どうだったら楽しいのか/仕事はクリエイティブではないか/感想/会社の上司はいい人がいないか/従わなければ金はくれないのか/どう働きたいか(現実無視の場合)/何を仕事にしたいか/仕事に就けないのは自分のせいなのか/自分の理由/分析
 若者は、スプレッドシートで、自分と他の学生の回答を振り返ることによって、自己を相対的に見ることができるようになる。
 そこでは、「ひきこもりの若者」も「就活中の大学生」も、職業人像が当然ながらぼんやりしていて、なおかつ、やや「無能感」に陥りつつも、主観的には「きちんと働きたい」と思っていることがわかった。ここで、(それほど無理のない)職業人像と必要能力がもっと「見える化」されれば、安心して、かつ主体的に職業に向かうことができるのではないか。このような意味で、職業能力の見える化がもたらす成果には、大きいものがあると考える。
 クドバスによって、若者に対して精神論ではなく、職業人の具体的な姿を示したい。それが「社会の中でこそ、個人としてより充実して生きる」ということにつながると考える。
参照:クドバス、自己相対視トレーニングのスプレッドシート


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