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若者理解のための図書コーナーCONCEPT

この20年に若者の意識、生活、考え方はどう変化したか


 若者文化研究所 西村美東士
この20年に若者の意識、生活、考え方はどう変化したか
−個人化に対応する青年団体育成の方法を考える−

聖徳大学文学科教授 西村美東士
2014年2月、全日本社会教育連合会企画・日本青年館 『社会教育』、69巻2号、pp.26-33
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1. 若者理解のしかたにはポイントがある
 若者理解のためには方法がある。それが実現できていないのはなぜか。若者を育成する立場の者(以下、育成者と呼ぶ)が、とらえるべき点をとらえていない、あるいは、視野に入れていないのではないか。
 若者を見るためには独特の方法論がある。まずは個人差を見る必要がある。その前提の上で、第一に、青年期特有の不変の課題を見いだす。これは、育成者自身の青年期を振り返れば、それなりには理解できよう。第二に、時代の変化を見る。育成者も同時代を生きる者として、一定の理解はできよう。第三に、世代としての変化(コーホート効果と呼ぶ)を把握する。加齢及び時代の影響だけでなく、今日の「団塊の世代」への理解などと同様に、同年齢のときに同じ時代を経験してきた者としての共通する特徴を見いだす必要がある。
 
2. 青年団体育成をどう進めたらよいか
 少年団体については、衰退の実態が指摘されるなかにあっても、「生きる力」育成の理念は生き続け、その意義は学術的にも裏付けられつつある。明石要一『ガリ勉じゃなかった人はなぜ高学歴・高収入で異性にモテるのか』(講談社、2013年)において、子どもの体験活動の意義と必要性が論じられている。
 それにもかかわらず、青年団、サークル、青年教室メンバー等の青年団体については、その育成の実態も理念も停滞している現状が見られる。その理由は「少年はまだしも、青年は集まらない」、すなわち「遊べるところはほかにいっぱいある」、「青年対象の団体活動へのニーズがない」あたりか。
 これに輪をかけるトレンドも指摘されている。NHK放送文化研究所の2012年調査からは、中高生の幸福感の上昇が著しいことがわかる。「とても幸せだ」とする中学生2002年41.4%が2012年54.7%に上昇している。このような急激な上昇は、同調査が始まった40年前から10年前までなかったことである(同研究所『中学生・高校生の生活と意識調査2012−失われた20年が生んだ“幸せ”な十代』、NHK出版)。この世代が、数年後、若者の仲間入りをしてくることになる。「とても幸せ」な若者に対して、ことさらに青年団体活動の機会を提供しようとする意味はどこにあるのか。
 教育は、人格の形成とともに、職場、家庭、地域での生活を通して、社会を支え、社会をより良くしようとする人材を育成することを目的としている。そのために、これまで築き上げてきた価値を伝承するとともに、彼らと一緒になって、次の社会が求める新たな価値を創造しようとする。その意味で育成者は、学校教育と並ぶ社会教育の重要な一環を担う役割をもっている。
 育成者がその役割を現実のものとするためには、自らが伝えようとする価値を、「教育目標」として具現化し、提示する必要がある。到達目標なしの教育はそもそもありえない。目標を設定するからこそ、実践ができ、到達度が評価でき、改善ができる。それは、血の通った温かい双方向の活動である。「実践あるのみ」と考える育成者にとっても、その熱意が報われる方法である。
 
3. 個人化への理解の必要性
 ここに至って、「個人化」というテーマが焦点化される。青年団体は、社会化及び社会形成の一員としての青年の育成という社会教育機能を有している。その機能を十分に発揮させるためには、若者の個人化への理解が求められる。
 現在、個人化は、二つの側面から「敵視」されている。一つは、若者の個人化により社会性が阻害されるという側面であり、もう一つは、社会全体が個人化することにより、すべてが個人の自己責任の問題に帰結され、結局、個人は不安にさいなまれるという側面である。
 しかし、個人化は、じつは現代社会の必然の産物である。個人化を積極的に取り上げ、個人化と社会化とを統合することによって道は開ける。
 個人化社会において、若者個人としては、「社会(職場・家庭・地域)の一員として充実して生きていくための能力獲得過程としての社会化」とともに、「個人として充実して生きていくための能力獲得過程としての個人化」の両者を達成することが求められる。青年団体活動は、この統合的発展によって、個人の充実と社会の形成に貢献することができる。これが、自立と参画をめざす青年団体活動のあり方であろう。
 中央教育審議会第一次答申(1996年7月)は、「教育は、子供たちの『自分さがしの旅』を扶ける営み」とした。だが、その後、フリーターやニートなどの問題を意識して、各種審議会などでも「自分さがしばかりしていて、いつまでも見つからない」などの否定的な意見が目立つようになった。青少年文献の要旨分析においても、90年代に激増した「自分らしさ」というキーワードの出現率が、00年代初頭に激減している(西村美東士『現代青少年に関わる諸問題とその支援理念の変遷−社会化をめぐる青少年問題文献分析』平成17〜18年度科学研究費補助金研究成果報告書)。社会学の視点からは、若者の「ライフコースの個人化と問題解決の私化」の傾向について、「何がやりたいことなのかを自問自答するなかからは、やりたいものをみつけることはむずかしい」という危惧が指摘された(宮本みち子『若者が≪社会的弱者≫に転落する』洋泉社、2002年)。
 しかし、青年団体活動などの社会教育を含む教育全般は、「自分さがしの旅」(教育基本法では「人格の完成」)を促進することによって社会化機能(同「国家及び社会の形成者の育成」)を発揮することを不変の本質としている。そのためには、われわれが築き上げてきた価値を伝承するとともに、彼らがそれを乗り越えて今後の個人化社会に対応した価値を創出できるように育成する必要がある。
 
4. 個人化・社会化の変化理解の方法
 筆者を含む青少年研究会は、都市青年文化の経時的実証に関する研究のため、1992年、2002年、2012年に、東京都杉並区、兵庫県神戸市灘区・東灘区在住の16歳から29歳の若者、合計2000人規模の量的調査を実施した。2012年調査では、30歳から49歳の壮年対象の調査も並行して行った。
 本研究では、個人化・社会化の変化を見るため、「友達と意見が合わなかったときには、納得がいくまで話し合いをする」、「どんな場面でも自分らしさを貫くことが大切」の2つの設問を取り上げ、それぞれの肯定・否定によって、「交渉型」と「非交渉型」、「貫徹志向」と「状況対応」に分類した 。このことによって、次の4タイプを設定した。
 
@貫徹志向交渉型=「どんな場面でも自分らしさを貫くことが大切」だと思っていて、「友達と意見が合わなかったときには、納得がいくまで話し合いをする」タイプ
A貫徹志向非交渉型=「どんな場面でも自分らしさを貫くことが大切」だと思っているが、「友達と意見が合わなかったときには、納得がいくまで話し合いをするということはない」タイプ
B状況対応非交渉型=「どんな場面でも自分らしさを貫くことが大切」だとは思っておらず、「友達と意見が合わなかったときには、納得がいくまで話し合いをするということはない」タイプ
C状況志向交渉型=「どんな場面でも自分らしさを貫くことが大切」だとは思っていないが、「友達と意見が合わなかったときには、納得がいくまで話し合いをする」タイプ
 
 この4タイプについて、他の設問から有意差検定(ピアソンのカイ二乗検定)を行った。ここで5%レベルの有意差とは、95%以上の確率で他と差があるという意味であり、1%レベルの場合は、その確率が99%以上ということになる。本稿では、有意差5%レベルを○、1%レベルを●で示す。
 以上のようなタイプ別比較や、その変化の理解、壮年との比較などを通して、それぞれのタイプに適切に対応する育成の内容と方法を導き出した。
 
5. 2012年現在の若者の20年前、10年前との量的比較
 状況対応が、20年前(2012年現在から、以下同じ)から10年前に大きく増加し、現在では貫徹志向とほぼ半々になっている。また、10年前には49.8%であった非交渉型が、63.7%と大きく増えている。なお、「友だちとの関係はあっさりしていて互いに深入りしない」の肯定者を「淡泊型」として、比較のためグラフに加えた。状況対応と非交渉型の増加に比べて、淡泊型は、20年間でも1割を超える大きな増加はないことがわかる。
 
 
グラフ  このグラフから次の3点が読み取れる。第一に、「友達と意見が合わなかったときには、納得がいくまで話し合いをする」交渉型は、今や貴重な存在になっていること。第二に、「どんな場面でも自分らしさを貫くことが大切」とは思わない状況対応の若者が10年前に急激に増えており、青年期の発達課題であるアイデンティティの内容に重要な変化があったことが示唆されること。第三に、このような変化に比べ、「友だちとの関係はあっさりしていて互いに深入りしない」とする淡泊型の若者の増加は、すでに限界域に達しつつあると思われ、上の世代が若かった頃と大きな差は見られないこと。

 図 20年前、10年前、2012年現在の若者の量的比較
 すなわち、ここ10年の変化は、友だちと互いに深入りしたりもする点では大きな変化はないが、意見が合わなかったときに納得がいくまで話し合ったりはしないという若者の増加にあり、ここ20年の変化は、「どんな場面でも自分らしさを貫くことが大切」とは思わない若者の増加にある。
 これらのことは、個人化する社会にあっては、若者が他者と「共存するための」作法ともいえる。このような個人化の内容の新たな変化に対応して、育成者は、どのように他者と目的を「共有するための」青年団体活動の意義と方法を伝えるのかを検討する必要がある。
 
 次に、先述の4タイプの10年前からの量的変化を見ておきたい。
 
グラフ ここで目立つのは「貫徹志向交渉型」の減少である。このタイプには、2002年と2012年の両方において、年齢、性差、親との同居、学生か有職者かなどの属性面での有意差は見られない。つまり、その減少は、若者全般の傾向ということができる。


 図 各タイプの10年前からの量的変化
 「どんな場面でも自分らしさを貫くことが大切」だと思っていて、しかも、「友達と意見が合わなかったときには、納得がいくまで話し合いをする」ということは、「我を張る」ということにも通じる。しかし、それが同世代のあこがれの対象になり、リーダーシップをとったりもする可能性もあろう。
 「仲間の中では我を張ることを控える」というかたちでの今の若者の個人化傾向は、青年団体にとってはチャンスである。我を通そうとして本音でぶつかりあって、互いに折り合って、納得して、目的を共有することができる場を提供することによって、青年団体は存在意義を発揮することができる。同時に、他者の利益を踏みにじってでも我を通そうとする者は、他者と協同できず、結局、自分の我を通せない結果に陥る。そのことを、傷の少ないうちに、身をもって知らせることもできる。
 次に、「貫徹志向交渉型」以外のタイプの属性の変化について見ておきたい。表では、有意差が消滅したもの、生じたものはその旨を特記し、有意差がない場合は網掛けにした。
 表 各タイプの属性の10年前からの変化
属性 ここで目立つのは「貫徹志向交渉型」の減少である。このタイプには、2002年と2012年の両方において、年齢、性差、親との同居、学生か有職者かなどの属性面での有意差は見られない。つまり、その減少は、若者全般の傾向ということができる。

 この表から、たとえば、非交渉型のうち、男は貫徹志向、女は状況志向の傾向があるという10年前の感覚でいると見間違うことになるといえる。また、状況対応交渉型では高年齢という傾向が新たに生じている。このことから、若者のなかでも、とくに低年齢層は、2002年の貫徹志向非交渉型の傾向が引き続いているとともに、さらに、状況対応しつつ交渉すること(状況対応交渉型)を苦手とする傾向が強まっていると推察される。
 量的に大きく減少した貫徹志向交渉型だが、属性の面でも、2002年の高校時代「○運動部系に所属」、「○文化部系の場合、積極的活動」という項目の差が消滅している(有意差が5%レベルに至らないという意味。以下同じ)。また、状況対応非交渉型の「●運動部系の場合、非積極的」などの差も消滅している。
 このように、貫徹志向交渉型における体育会系優位傾向の消滅をはじめとして、各タイプの有意差項目が変化している。これらは、体育会系を含む若者の個人化が進み、各タイプの特徴が質的にも変化していることを示すものであると考える。
 
6. 個人化・社会化のタイプとそれぞれの特徴の変化
(ア) 貫徹志向交渉型
 音楽については、2002年の●音楽を創るのが好き、●録音よりも生演奏が本物などの特徴が消えた。これは、音楽が他のタイプにも広がったため、「音楽の突出層」としての存在ではなくなったことの表れと考える。
 親友との関係については、●親友と真剣に話ができる、●親友との関係に満足、●親友とケンカしても仲直りできる、○親友を尊敬しているが存続し、●親友のような考え方や生き方をしたい、○親友をライバルだと思う、が新たに生じたものの、2002年の●親友に弱みをさらけ出せる、が消えた。たとえ貫徹志向交渉型であっても、「自分をさらけ出す」ことについては抵抗があるのだろう。今後の団体活動においては、自己開示を無理に迫るのではなく、共有する目的のために、安心して本音で語り合えるようにすることのほうが適切であるといえよう。
 また、●友だちとの関係を楽しいとは強くは感じないが新たに生じたことは、貫徹志向交渉型のタイプの若者が、仲間のなかで生きづらくなっていることを示すものと考える。そのため、このタイプが量的にも激減したのではないか。
 自己意識については、2002年の●自分がどんな人間かわからなくならない、●他人からみると私は好みや考え方にまとまりがなくはないが消え、●自己啓発の本を買うが新たに生じた。「友達と意見が合わなかったときには、納得がいくまで話し合いをする」のだが、「どんな場面でも自分らしさを貫くこと」については、大切だと思っていても、現実の仲間関係の中では戸惑いが生じ、内向しつつあるのではないか。青年団体活動であれば、このタイプを、再度、リーダーとして引き上げることができると期待したい。
 「大切なことを決めるときの判断材料」としては、●世間評価や道徳は大切なことを決めるときの判断材料でないが消え、●友人の意見、●自分の意見や信念、○親の意見、●親友や恋人・配偶者の意見が判断材料として新たに生じた。このタイプは、もともと(良くも悪くも)主体性が強いと考えられるが、その発揮の仕方が、「生きづらさ」のためか、変化していることに留意したい。
 規範意識については、●選挙には行くべき、○目上の人には敬語を使うべきが消えたものの、●約束の時間は守るべき、●電車やバスの中で化粧をすべきでないが新たに生じ、このタイプの肯定的側面と同時に、「生きづらさ」を感じさせる。
 日本の評価については、10年前にはとくに差のある項目はなかったのだが、●日本は平等な社会である、○日本の将来は明るいが新たに生じた。このタイプの若者の社会認識に関する重要な質的変化を示しているのかもしれない。
(イ) 貫徹志向非交渉型
 2002年の●インターネットで音楽情報得ない、○エステティックサロン通いたくない、○ブランド品を購入しない、○自己啓発の本を買わないなどの保守的傾向が消え、○音楽制作・演奏のためのソフトウェアやアプリを操作する、○録音よりも生演奏が「本物」などの進取的傾向が新たに生じた。○同じアーティストをいちずに応援し続ける(2012年新規設問)を兼ね合わせてみると、これは、いわゆる「オタク」の進取性なのではないかと考えることもできる。
 そのためか、○今の自分が大好きではない、○自分がどんな人間かわからなくなるが消えており、自己への否定的評価は軽減しているように思われる。これは、「クールジャパン」などによる「オタク」への社会的承認の結果か。
 しかし、友人関係については、充実していない。○親友といても安心できないは消えたものの、●友だちとの関係を楽しいとは強くは感じない、●仲のよい友人でも私のことをわかっていないが新たに生じている。
 青年団体の目的的な活動のなかで、このタイプの若者に役割を与えて持ち味を発揮させることが効果的と考える。
(ウ) 状況対応非交渉型
 性差が消えたためであろうか、○エステティックサロン通いたい、○新聞や雑誌の占いコラムを読むが消えた。また、○今のままの自分でいいと思わない、●場面によってでてくる自分というものは違うも消えた。
 しかし、友人関係については、上のタイプと同様に充実していない。●互いに深入りしない、●仲のよい友人でも私のことをわかっていないは消えたものの、●友だちとの関係を楽しいと感じないのほか、親友に対しても、○親しみを感じない、○安心できないなどが新たに生じた。
 そして、●ボランティアに参加すべきとは思わない、○みんなで力を合わせても社会を変えることはできないが新たに生じた。
 そのほか、2012年新規設問では、○子どもの頃家族と美術展や博物館に行かなかった、○自分たちが生活している地域に外国人が増えるのはよくない、●日本の科学技術分野での発展を誇りに思わない、●日本人に国を愛する気持ちをもっと育てる必要があるとは思わない、○日本の経済的な発展を誇りに思わないなどの消極的な傾向が示されている。また、●SNSを知らない・わからない、●Facebook(フェイスブック)は利用しないが、●掲示板「2ちゃんねる」を読む・書き込むという傾向が示されている。家族意識についても、●高齢で無収入の親を扶養するのが子どもの責任とは思わない、○寝たきりの親を子どもが介護するのは当然とは思わない、○子どもであっても同居していれば家事の分担は当然とは思わないと消極的な姿勢が示されている。
 このタイプの増加率が、僅差ではあるがトップであり、今や3人に1人はいるという計算になる。しかも、属性上の有意差は消えているので、まんべんなく存在するということになる。
 彼らに、まちづくりの意義などを訴えても、すぐには心には響かないかもしれない。それよりも、「あるがままにいられる」というだけでなく、「あるがままに自己表現してかまわない」という状況としての「居場所」を提供することのほうが先決であろう。また、場合によっては、「2ちゃんねる」の世界から、青年団体メンバーのSNSの世界に誘い込むことも効果的かもしれない。
(エ) 状況対応交渉型
 親友や友だちとの関係については、●親友を尊敬している、●親友と真剣に話ができる、●親友に弱みをさらけ出せる、●親友とケンカしても仲直りできる、が存続し、●親友の数が多い、●親友との関係に満足、●友だちとの関係を楽しいと感じることがよくあるが新たに生じ、その充実ぶりを示している。
 同時に、●大学等で親友や親しい友だちと知り合った、○幼稚園・保育園・小中学校で親友や親しい友だちと知り合った、○職場で親友や親しい友だちと知り合った、●友だちをたくさん作るよう心がけていない、○容姿や顔立ちを重視して友だちを選んでいないが新たに生じた。これらは、個人化社会が前提とする「自己選択」とは逆の傾向が、このタイプの若者たちに生じていることを示すものであると考える。
 「大切なことを決めるときの判断材料」としては、○世間の評価や道徳、○損得や影響の計算が存続するとともに、●専門家への相談結果が新たに生じ、手堅さを表わしている。
 家族意識の新規設問については、○寝たきりの親を子どもが介護するのは当然、○親が高齢で自分たちだけで暮らせなくなったら子どもは同居すべきと、積極的な側面を見せている。
 個人化社会のなかにあって、このタイプは、状況に応じて他者と上手に合意形成するリーダーになりうると考える。
 
7. 若者理解をどう生かすか
 育成者は分析屋になってはいけない。これまで述べてきたように、個人の特性に対応した育成は今後必要だとは考えるが、それは一人一人のもつ強みを伸ばし、弱みを克服させるためのものでなければならない。
 今回の分析で、貫徹志向交渉型と状況志向交渉型の両者に、○ヒップホップが好き(新規設問)という特徴が見られた。そこで、ヒップホップが好きと回答した者(157人、15.0%)の、他との差を確かめてみた。その結果、交友、恋愛、音楽活動において、飛び抜けてアクティブであるほか、●留学したい、●自己啓発の本を買う、●デモに参加する、●仕事やアルバイトをしているとき充実している、●誰とでもすぐ仲良くなれる、○わからないことや知らないことがあれば自分で積極的に調べる、○感情を素直にあらわせる、○自分たちが生活している地域に外国人が増えてもよいなどの積極性が、先の4分類よりも顕著に示された。とりわけ、いつもの仲間だけでなく、見知らぬ人と出会おうとする態度は、仲間内で閉鎖しようとする若者のなかでは貴重な存在といえる。
 育成者が「君は、ヒップホップをやっているのに(社会的にも)積極性がある」と言ったとしたら、それは見当違いである。「ヒップホップをやっているから積極性がある」のである。
 最近は、客が深夜に踊る店は風営法違反として摘発され、若者が千円程度で踊れるクラブが減ってきている。若い頃にディスコなどに通ったことのある育成者なら、このことに対する若者の不満を理解できよう。また、街角でヒップホップを真剣に練習する若者の姿も、見られなくなってきた。東京オリンピックに向けて、クラブやストリートダンスを駆逐するのではなく、逆に盛んにして、外国からの観光客と若者とを交流させたい。
 まちづくり活動において、若者たちの自治のもとに、ヒップホップを練習する場と成果を披露する機会を提供し、まちの活性化に貢献してもらうようにしたらどうか。個人化社会においても、ユースコミュニティの形成は可能と考える。
 このようにして、若者理解を、彼らの個人化・社会化状況に対応した育成の実践に結びつけることこそ重要なのである。


【追記】各タイプの特徴(有意差項目)の2002年と2012年の変化について、WEB用に対照表を作成したので追加して掲載しておきたい。 PDFはこちら


西村美東士(にしむら みとし)
聖徳大学文学科キャリアコミュニケーションコース及び生涯教育文化学科教授。専門は、青年教育、キャリア教育、ICT教育、生涯教育。現在は、参画型教育による個人化と社会化の一体的促進、原点回帰としての「癒し効果」、個人完結型から社会開放型への子育て観の転換について研究を進めている。著書は『癒しの生涯学習』(学文社)など。
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