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日本子育て学会第12回大会話題提供CONCEPT

「コロナ危機におけるICTと子育て学習・子育て支援学の体系化」

発表の動画記録





上は、子育て支援学体系化ワークショップでの親の議論を受けて、学生がその趣旨を絵にしてくれたものです。

西村美東士(若者文化研究所/聖徳大学) <発表要旨>(詳細は私のホームページを参照されたい。 http://mito3.jp)
1 子育て支援はコロナに敗北するのか。
 私は次のように「人間の原点としての子育て観の獲得」を提起したことがある。
 「子育ては、ハグ(抱擁)に見られるように、身体性と精神性の二元の一体化のもとに存在するものととらえられる。このことが、夫婦愛を含めた家族愛や博愛、ひいては加齢や死の受容につながり、人々の生涯を支えているのではないか。これを除いて、子育て支援を論じることはできない」。
「参画型子育てまちづくり」から見た社会開放型子育て支援研究の展望
 コロナ禍の「新しい生活様式」によって、保育等の現場でこのような「人間の原点としての子育て観」が失われることを私は恐れる。
 また、子育て学習の組織者として、WS(ワークショップ)の中で(カードの配置のため)手を動かす、リアルな空間で共感と共有の時間をもつという可能性が制約されてしまったことも深刻な打撃と感じている。
 教師仲間のなかには、各グループの中をリモートで随時巡回して、発言を促す必要があるという人もいるが、それはワークショップ指導の本質を踏み外した考え方と言える。自己内、対他者対話のモチベーションを上げ、該当ワークの段取りを明確に示したあとは、原則としてはメンバーの力だけで成果を挙げられるというWSの特徴を、台無しにしてはならない。オンラインでも、オフラインでも、指導者がグループごとのワークに介入するのは、臨床的課題が表われたときであり、そのときにはなるべくならメンバーの目からうろこが落ちるような的確な助言や指導が望ましい。いずれにせよ、リモートでは、リアルな空間を共有したときのような「共感」や「共有」は得にくいのである。
 また、従来からWSのファシリテータをやってきた人々のホームページを見ると、オンラインという不利な状況の下で、いくつかの努力が見受けられる。一つは、最初の出会いのとき、アイスブレーキングとしての自己紹介を行って情緒的な相互理解を図っておくというもの、二つは、アナログに紙とペンを使うなどして身体性を取り入れるというものである。これらの効果は一定程度は認められると思われるが、「リアルな空間で共感と共有の時間をもつ」効果には残念ながら及ばないと思われる。
 ただ、人との距離を詰められると苦しいという人たちが、自分のペースで参加できるという点では、オンラインならではのメリットがある。今日では、「自分のペースで学べる」ネットを通じた自宅学習によって、不登校の子どもたちが勉強できるようになったという事例も報告されていることは留意しておく必要がある。

2 ICTによる子育て学習
 子育て支援においても、オンラインによるWSなどは、すでに述べたように「新しい生活様式」によって弱体化する恐れが大いにある。そのような状況の中で、われわれはICT(情報通信技術)を活用して、どのような子育て学習を進めていけば良いのか。
 第一に、「自分のペースで学べる」という良さを生かした個人学習の支援を考えたい。ここでとりわけ重要になるのが、「子育て暗黙知」である。子育て支援の現場の映像を見ながら、われわれがベテラン保育士にインタビューして作成したマルチメディア教材をその例として挙げておきたい。
子育て支援のポイント
外車販売のポイント
 第二に、すでに述べたように身体性は弱まるものの、バーチャル空間の共有によって、ICTによる「ママ友づくりパパ友づくり」が期待できる。このことについて、フリーディスカッションで、同じ教育研究者の子育て世代の女性から、「価値観の同じ人とママ友になるのであって、(それが保証されない)ICTに交流を期待して参加する人などはいない」という反論を受けた。
 この「反論」は、教育的意図による、あるいはICTによる「ママ友づくりパパ友づくり」の意義を、逆に浮かび上がらせるものと考える。子育てのまちづくりや社会形成のためには、普段のママ友とは違う「異なる価値との交流」が重要であり、そこでの自己内・対他者対話が共生力を生み出すと考えられる。ちなみに、居場所づくりにおいても、一時期「教育的眼差し不要説」ともいうべき議論があった。これに対して私は、「(教育が)意図的につくる居場所」を主張した。女子学生に自分にとっての居場所の条件を聞いたところ、「知らない人がいないこと」という返答が返ってきた。このような閉鎖的状況を打ち破り、多様な価値を受け入れ、新しい価値を創造し共有することを目指した「教育的意図」が重要である。
青少年の居場所−社会化と個人化を意図的・統合的に進める公民館の教育機能
 本シンポでは、校区を超えた小学校PTA会員の言わば「動員」された研究グループによって生み出された東京都T区「親子まちづくり研究」の成果を報告したい。
社会開放型子育て観への転換プログラムの提案−豊島区家庭教育推進員の子育てまちづくり研究活動を通して

3 ICTの可能性と子育て支援学体系化
 GIGAスクール構想等により、ICT環境は整いつつある。また、2015年の「地域学校協働」中教審答申により、「学校で学んだことを地域に応用するような関係をつくる」、「地域の在り方も変える」という考え方が示された。
 このようなとき、親、市民、学校、行政、事業所の協働は、個人完結型子育て観から社会開放型子育て観への転換をもたらすだろう。そのとき、ICTは、大きな役割を発揮することが期待できる。
 とりわけ私がICTに期待するのは、書き言葉による交流と合意形成である。そこで自己内対話と対他者対話が行われ、既存の解答を昇華した新しい解答を見出すことができよう。これについては、本シンポでは、私の大学授業でのアクティブラーニングの成果とその分析について報告したい。
 しかし、そこで予想される交流と合意形成を阻害するネックは、次のとおりである。「新しい生活様式」によるマイナス要因は、すでに述べたとおりである。だが、それでもなお、コロナ禍に抗してICTでの交流を目指した場合に、支援を推進すべき側の内側に、次の理由での消極性が生ずる。それは個人情報の保護と著作権の尊重である。これらは、当然守るべき大原則であるが、創意工夫してこれを破ることなく書き言葉その他の交流を図るべきなのである。その努力を怠って、無難を通す「事なかれ主義」が、ICTのもたらす恩恵をつぶしている。私は、この傾向に対して、「自負できるプライバシー、二次利用されたい著作権」という主張を行っている。これを席上で説明したい。
情報化時代のコミュニケーション

4 子育て支援学体系化に向けた取り組み
 これまで、本学会では、わが国の子育てに関する社会的課題を取り上げ、そのテーマに対して、諸学の各領域を超えて、保護者、支援者、研究者の三位一体で追求していく活動を続けてきた。
 そこでは、WS等によって、保護者の見解を含めた子育て課題の洗い出しと検討を行ってきた。そのことによって、それぞれのテーマ(課題)について、複数の専門領域を横断する検討と課題解決の方法が必要なことが明らかになった。このようなことから、子育て支援学体系化においては、それぞれのテーマについて、子育て現場の保護者、子育て支援現場の支援者、各領域の研究者の三者の能動的な協働による検討が必要だと考えられる。これまでのWSの成果等については、席上で報告したい。
「子育て学体系化のためのワークショップ」成果の検討
 この体系化を成功させるカギは、保護者が「わが子」だけではなく「子育てのまち」に目を向けること、支援者が「わが園」だけではなく「全市的視点」をもつこと、そして研究者は自分の研究領域だけでなく、人々の暮らしや仕事ぶりの総合的観点から、地域の子育ての課題を臨床的に分析することだと考える。



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