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若者論のトレンドCONCEPT

書評

多忙な著名人教員では受講回数も制限されてしまう。それより、一般の教員が教授法等を改善する訓練(FD)に取り組んでいるか。FDを嫌う教員も多い。大学の中身をこのように鋭くえぐる視点をこの本は提示する。

「入学してから就職後3年間までストレートに進めるのは全体の約3割」という状況のなか、「面倒見のよい大学→本当は中退率30%」、「就職に強い大学→実際に就職できるのは学生の50%」、「思いやりの心を持った学生を育てる大学→地域の人たちからの評判が芳しくない」と著者は注意を喚起する。過去の学校歴社会における受験競争ではなく、卒業後も視野に入れた生涯にわたる充実という視点から進学を考える必要がある。

書評
山本繁 著
1300円 
ディスカヴァー・トゥエンティワン
つまずかない大学選びのルール
発売日:2013年02月28日

 山本氏は、高等教育と社会教育の革新のために活動するNPO法人の理事長。「入学してから就職後3年間までストレートに進めるのは全体の約3割」という状況のなか、「面倒見のよい大学→本当は中退率30%」、「就職に強い大学→実際に就職できるのは学生の50%」、「思いやりの心を持った学生を育てる大学→地域の人たちからの評判が芳しくない」と注意を喚起する。
 この本の目的については、「良い大学」を教えるものではなく、「(自分にマッチした)良い大学選び」の方法を教えるものだと言う。さらに、「あなた自身が大学選びで後悔しないために、ひいては日本の大学、そして日本を変えるために、ぜひ『賢い受験生』になってもらいたい」と呼びかける。個人にあった選択が重要であると同時に、専門学校の可能性も含め、社会に目が開かれた受験にしなければ、問題の本質的解決はできないという認識なのだろう。
 氏は問いかける。パンフレットやWEBサイトでは、大学のコンセプトだけでなく、これを達成するための方法と効果の証拠が提示されているか。多忙な著名人教員では受講回数も制限されてしまうので、それより、一般の教員が教授法等を改善する訓練(FD)に取り組んでいるか。じつは、FDを嫌う教員も多い。大学の中身をこのように鋭くえぐる視点をこの本は提示する。
 氏は昨年7月に文科省高等教育局専門調査員、9月に中央教育審議会高大接続特別部会臨時委員に抜擢されている。これは、文科省が大学の望ましい淘汰に本気になっていることの表れといえよう。進路指導も、大学の実態を内部にまで立ち入って把握しないといけない時代になった。

資料

面倒見のよい大学?(→本当は中退率 30%…)
就職に強い大学?(→実際に就職できるのは学生の 50%…)
グローバル人材を育てる大学?(→4年間で英語力がむしろ下がってしまう…)
思いやりの心を持った学生を育てる大学?(→地域の人たちからの評判が芳しくない…)そんな不幸な大学生活を送りたくない人のための「自分に合った」大学の見つけ方!
<いま注目のベストカレッジ 8 大学(学部)をレポート>
国際基督教大学/立教大学経営学部/立命館アジア太平洋大学/宮崎国際大学/福井大学/愛媛大学/金沢工業大学/金沢星稜大学
景気の悪化に伴う家計の悪化、仕送りの減少、就職難、早期離職問題など、大学生をめぐる状況はどんどん厳しくなっています。大学生になるということは、4 年間という時間と 400 万円の学費(私立文系の場合)と引き換えに得られるもので、また、その後の人生を左右しかねない「高い買い物」。変化し続ける環境のなかで、未来を見据えてしっかりと生きていくための「後悔しない大学選び」のポイント、最新事情を教えます。
著者は、中退抑制を通じて大学・専門学校の教育力と問題解決力の向上を支援する「日本中退予防研究所」、高校生にフダン着の大学に会いに行く機会を提供する「WEEKDAY CAMPUS VISIT」、地方出身の若手漫画家を支援する「トキワ荘プロジェクト」、地域を若者たちの“学ぶ場"に変える「おとな大学」など、学生支援事業で知られる気鋭の社会起業家。世にあふれる大学ガイドブックとはひと味ちがう一冊です。

書籍キャッチコピー
就活で失敗しない! 中退しない! やりたいことが見つかる! 偏差値やブランドだけじゃない。親子で考えたい大学選びの新常識

目次

プロローグ 大学へ行くことを考えている君へ
はじめに
1 章 常識は変わった! これが大学選びの「新ルール」
■大学選びの常識に潜む「落とし穴」
今までのルール1 偏差値で大学を選ぶ
→大学選びの新ルール1 教育力で大学を選ぶ
今までのルール2 学生数の多いマンモス大学やブランド大学を選ぶ
→大学選びの新ルール2 教育力や自分の特性に基づいて大学を選ぶ
今までのルール3 オープンキャンパスで雰囲気が良かった学校を選ぶ
→大学選びの新ルール3 平日の大学に行くことも含め、情報源を多様化する
今までのルール4 就職支援に力を入れている大学を選ぶ
→大学選びの新ルール4 就職するためには教育に自信のある大学を選ぶ
今までのルール5 多くのことができる大学や学部を選ぶ
→大学選びの新ルール5 「広く浅く」よりも、教育コンセプトの明確さを重視
今までのルール6 英語教育に力を入れている大学を選ぶ
→大学選びの新ルール6 英語「で」学べる学校を選ぶ
今までのルール7 雰囲気の良さで大学を選ぶ
→大学選びの新ルール7 幅の広い交友関係を築ける環境を選ぶ
今までのルール8 施設の充実具合で大学を選ぶ
→大学選びの新ルール8 自分が使えそうか/実際に学生が使っているかで判断
今までのルール9 やりたいことで大学を選ぶ
→大学選びの新ルール9 「やりたいこと」がどう転ぶかも想定しておく
今までのルール10 面倒見の良い大学を選ぶ
→大学選びの新ルール10 「自走させる」姿勢と仕組みがある大学を選ぶ
今までのルール11 資格を取得できる大学を選ぶ
→大学選びの新ルール11 専門職養成は専門学校のほうが優れている場合も
今までのルール12 教員の知名度で大学を選ぶ
→大学選びの新ルール12 教員の知名度と教育力は分けて考える
今までのルール13 就職に有利になるように東京の大学を選ぶ
→大学選びの新ルール13 地域の特色を教育上の強みに活かした大学を選ぶ
今までのルール14 学費の安い大学を選ぶ
→大学選びの新ルール14 夜間学部という選択肢も考える
今までのルール15 自宅から近い大学を選ぶ
→大学選びの新ルール15 適度な通学時間は自分磨きになる
今までのルール16 学力入試以外の方法を狙って受験する
→大学選びの新ルール16 学力入試もひとつの成長機会と考える

2 章 あなたにとっての「良い大学」は? 新しい「大学の選び方」
■そもそも「良い大学」って?
■大学のコンセプトを実際に調べてみよう
手順1 どんなコンセプトがあるのかを知る
手順2 自分に合ったコンセプトはどれかを考える
手順3 コンセプトとカリキュラムの連動を考える、そのコンセプトを持つ大学の実態を調べる
   パンフレット、大学公式WEBサイトではここをチェック!
   シラバスではここをチェック!
   キャンパスではここをチェック!
   その大学に通う先輩からはここをチェック!
   進路指導の先生からはここをチェック!
手順4 同様のコンセプトを持つ複数大学を比較してみる

3 章 先進的な教育で話題! いま注目のベストカレッジ 8
リーダー育成で注目の大学 1 国際基督教大学
リーダー育成で注目の大学 2 立教大学経営学部
国際教育で注目の大学 1 立命館アジア太平洋大学
国際教育で注目の大学 2 宮崎国際大学
注目される地方国立大学 1 福井大学
注目される地方国立大学 2 愛媛大学
注目される地方私立大学 1 金沢工業大学
注目される地方私立大学 2 金沢星稜大学

4 章 自分の世界を広げよう! つまずかない大学生活のルール
■大学生になったらやっておきたい 5 つのこと
■大学 2 年からの過ごし方 〜勉強、アルバイト、恋愛

著者からのメッセージ
「もし世界が100人の村だったら」を知っていますか? 世界の人口統計比率をそのまま100人に縮小すると、貧困状態にある人が何人、大学教育を受けられている人が何人…というように、「社会全体のなかで自分はどのような場所に立っているか」という気づきを与えてくれる文章です。ではここで、「大学がもし100人の村だったら」(ここでは新入生が100人だったらと仮定)と考えてみましょう。
まず、その約1割にあたる12人が卒業までに中退、他の13人はいずれかの学年で留年します。残っている75人のうち、大学院や専門学校等に進学する人が9人。この9人には、就職活動を断念して進学に切り替えた学生が含まれます。また、卒業できても就職できない人が21人。つまり、大学を出るときに就職以外の道を選ぶ(選ばざるを得ない)人が30人です。残りの45人は卒業後に就職できますが、3年続くのはそのうち31人だけ。つまり、入学してから卒業後3年までストレートに進めるのは全体の約3割です。これを高校のクラス(仮に40名)に換算すると、ストレートに進める人数は12人。これから大学に行こうとしているあなたが、その12人に必ず入れる保証はどこにもありません。
もちろん、中退したから、あるいは留年したから、その人はそのまま不幸せになってしまうということではありません。しかし、大学生になるということは、4年間という時間と400万円の学費(私立文系の場合)と引き換えに得られるものです。その結果がこれだとしたら、それはあまりに「高すぎる買い物」ではないでしょうか。使った時間やお金に見合わない大学に、あなたは行けますか? 変化し続ける環境の下で未来を見据えしっかりと生きていこうとする受験生のあなたに「後悔しない大学の選び方」のための有用な情報を提供しようと、私は本書を書きました。
誤解してほしくないのは、この本は「良い大学」を教えるものではなく、あくまで「(自分にマッチした)良い大学選び」の方法を教えるものということです。3章ではさまざまな大学を紹介しますが、これも「この大学に行け!」と勧めるのではなく、「良い大学選び」の例として読んでいただくようになっています。
あなたが「良い大学選び」を実践することで、日本の大学を良い方向に変えることができます。あなた自身が大学選びで後悔しないために、ひいては日本の大学、そして日本を変えるために、ぜひ「賢い受験生」になってもらいたいと思います。
(「はじめに」より抜粋要約)


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