書評
親にとっては、親子関係の今の充実だけでなく、子どもの将来性が気になる。しかし、それが行き違いや悲劇を生むことも多い。今後の「賢い親たち」は、自己完結型から脱却し、社会教育や地域の力を借りて、子どもを社会的に自立させるようになるに違いない。
子ども時代に社会教育の体験活動を経験した学生と出会うと、ものの見方・考え方がしっかりしており、社会に出てからも充実してやっていけるだろうという感覚を持つことが多い。学校教育においても、服装や髪型の問題だけに終始するのではなく、より本質的に、彼らの深いところと出会えるような対話をすることが求められているのではないか。
書評
明石要一
ガリ勉じゃなかった人はなぜ高学歴・高収入で異性にモテるのか
講談社プラスアルファ新書
出版年月日 2013年3月19日
定価 本体880円
筆者の明石氏は橋下大阪市長の言葉、「僕は学校で教わった勉強なんて一つもない」を引き、国立青少年教育振興機構「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」(二〇一〇年)の五千人の成人を対象としたバックデータを使って、体験活動の意義と必要性、そこで身に付く力、必要な体験活動の内容などについて論ずる。
学校教育では、いったい何ができるのか。平成二〇年中央教育審議会答申のいう体験活動の進め方において、とくに自己との対話や思考の外在化(文章化)などの意図的・計画的促進については、むしろ、学校教育の出番ではないかと評者は考える。
しかし、明石氏は終章で「成功の秘訣はナナメの関係」とわれわれに追い撃ちをかける。文科省によれば、これにより、学校が地域社会と協同し、学校内外で子どもが多くの大人と接する機会を増やすことを目指している。親や教師、子ども同士は含まれない。教師が子どもとナナメの関係であろうとしたら、それは職務逸脱に近い行為だ。
地域人材の活用などの方策が求められるのは当然であるが、それ以上に、「純粋な学校内教育」において、教師が「タテの関係」のなかに「ナナメの関係」による教育力を取り入れられないものか。われわれは、細かいところに責任を持たなくてよい地域のオジサン、オバサンたちとは違う。日々、現象面ばかりに追い回され、余裕のあるナナメの関係が持ちにくい。服装や髪型の問題だけに終始するのではなく、より本質的に、彼らの深いところと出会えるような対話をしてみたいものだ。
商品の説明
内容紹介
「僕は学校で教わった勉強なんって一つもない」(橋下徹・大阪市長)――この言説は橋下市長にかかわらず多くの大人が口にする。一代で財をなした人物の立志伝を読むと頻繁に出てくる。本当に学校で教わったことは卒業後、役に立たないのだろうか? もしそうなら、立志伝中の人たちは、どこで生き抜く力を身に付けたのだろうか?
本書は、「学校外の体験活動がなぜ必要なのか」「どんな力が身に付くか」「子どものどの段階でどんな体験が有効なのか」「それは誰が保証すればよいのか」などについて論じる。そして、そのバックグラウンドとして、国立青少年教育振興機構が5000人の成人を対象に調査し、2010年10月にまとめた「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」を使っている。すると、ガリ勉ではなかった子どもが「高学歴」「高収入」になり、かつ「異性にモテる」ことがわかった!
内容(「BOOK」データベースより)
ガキ大将や問題児だった人がなぜ出世?日本を代表する12人の特別な体験とは!?本書は、国立青少年教育振興機構が五〇〇〇人の成人を対象に調査した「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」を使って「学校外の体験活動がなぜ必要なのか」「どんな力が身につくのか」「どの時期にどんな体験が有効なのか」などについて論じている。
目次
第一章 人生の成功を決める学校外体験とは
第二章 日本を代表する一二人の少年時代
第三章 日本の子どもが抱える大問題
第四章 思春期の学生と大人が持つ悩みごと
第五章 学校外の体験活動で何が変わるのか
第六章 成功の秘密「ナナメの関係」
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