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若者論のトレンドCONCEPT

書評

「みんなを」ではなく、「自分だけを」かまってほしいという若者の関係への志向は、教育では、これをそのまま受け入れるわけにはいくまい。しかし、少女たちを取り巻く「裏社会」が、このような隙間をついて少女たちを取り込んでいることは認識する必要がある。店のルールを守ろうとする少女といい、店に居場所を求める少女といい、人々が支え合う社会に向けて、自己を位置付けることのできる本当の社会的自立を促すことこそ、本質的解決につながるのだ。
「わかってくれる大人がいない」という「関係性の貧困」のなかで、スカウト、店長、オーナーは「居場所づくりのプロ」だと筆者は言う。スカウトは、見た目や性格、所属高校など、個人のタイプやニーズに合わせて、こまめに連絡をし、店につなぐ努力を惜しまない。店長は、少女の話を聞き、励まし、ほめて叱り、居心地の良さを与える。リーダーになりそうな少女については、過ごしやすいルール作りや客の喜ぶオプションを考えさせて、やりがいを持たせる。受験を控えている少女には学習支援を行い、厳しい家の子にはアリバイづくりの協力をし、金銭管理ができない少女には貯金代講サービスも行う。オーナーはときどき来て、「君には期待している」などと声をかけ、少女を喜ばせる。また、日常的には、スカウトを通してフォローし、うまく適応できない少女には他の店を紹介したりする。「お前の夢はなんだ」など、プライドを持たせるワークショップを行っている店もある。このようにして、卒業後も、系列の風俗店で倒を見るという。「みんなを」ではなく、「自分だけを」かまってほしいという若者の関係への志向は、教育では、これをそのまま受け入れるわけにはいくまい。しかし、少女たちを取り巻く「裏社会」が、このような隙間をついて少女たちを取り込んでいることは認識する必要がある。店のルールを守ろうとする少女といい、店に居場所を求める少女といい、人々が支え合う社会に向けて、自己を位置付けることのできる本当の社会的自立を促すことこそ、本質的解決につながるのだ。



書評


女子高生の裏社会−「関係性の貧困」に生きる少女たち
仁藤夢乃
光文社新書
821円
2014/8/7

 本書は、親からの虐待や性被害などの心の傷を抱え、「JKお散歩」などの裏社会で働く少女の取材集である。児童相談所や警察については、親に通報されて元の木阿弥になる経験をしているため敬遠がちである。「普通の少女」や「ルールに従順なタイプ」などの「扱いやすいタイプ」も登場する。客の性的欲望への対応が苦痛なのは、すべての少女に共通しているが、「わかってくれる大人がいない」という「関係性の貧困」のなかで、このような仕事にもプライドを持とうとする。
 スカウトは、個人のタイプやニーズに合わせて、こまめに連絡をし、店につなぐ。店長は、少女の話を聞き、励まし、ほめて叱り、居心地の良さを与える。リーダーになりそうな少女については、過ごしやすいルールや客の喜ぶオプションを考えさせて、やりがいを持たせる。学習支援や貯金代行も行う。オーナーはときどき来て、「君には期待している」などと声をかけ、少女を喜ばせる。「お前の夢はなんだ」などというワークショップも行なう。高校卒業後も、系列の風俗店で働けるよう面倒を見る。
 評者は考える。「みんなを」ではなく、「自分だけを」かまってほしいという若者の関係性への渇望は、われわれもよく感じるところだ。教育では、これをそのまま受け入れるわけにはいかない。しかし、少女たちを取り巻く「裏社会」は、このような隙間をついて少女たちを取り込んでいる。これらの「居場所」に対抗して、自己を社会に位置付けることのできる自立のための「居場所」を提供する意義は大きい。それは、卒業後の生涯の充実をも視野に入れたものでなければならない。

長文
 筆者は、中学生の頃から「渋谷ギャル」生活を送り、高校を中退後、大学に進学し、女子高校生サポートセンターの代表理事を務めている。そこでは、「居場所のない高校生」や「性的搾取の対象になりやすい女子高生」の問題を社会に発信するとともに「若者と社会をつなぐきっかけの場づくり」事業を展開し、ホームレスや引きこもり支援をする大人の姿を見せて、「かっこいい大人」と出会う体験などにより、少女たちの自立支援を行っている。
 筆者は、普通のJK(女子高生)が「JKリフレ」(個室でのマッサージ)や「JK お散歩」(客とのデート)の現場に入り込んできていると述べる。しかし、そこで登場するJKたちの多くは、親からのネグレクト、虐待や、性被害などの成育歴を抱えており、表社会では普通にふるまっていても、家族関係等の現代の病理の影響を受けていることがうかがわれる。児童相談所や警察については、親に通報されて元の木阿弥になる経験をしているため敬遠がちであり、セーフティネットとしての機能が十分発揮しずらくなっている。また、「ルールに従順なタイプ」も登場する。仕事を辞めようと決断しても、1か月前までに申し込む必要があると店長に言われると、それまでは働こうとする。客の性的欲望への対応が苦痛なのは、すべての少女に共通しているが、店長から言われた「女の子が体を売らなくても稼げる仕事をつくってあげたい」という言葉を信じて、その仕事にプライドを持とうとする少女もいる。
 「わかってくれる大人がいない」という「関係性の貧困」のなかで、スカウト、店長、オーナーは「居場所づくりのプロ」だと筆者は言う。スカウトは、見た目や性格、所属高校など、個人のタイプやニーズに合わせて、こまめに連絡をし、店につなぐ努力を惜しまない。店長は、少女の話を聞き、励まし、ほめて叱り、居心地の良さを与える。リーダーになりそうな少女については、過ごしやすいルール作りや客の喜ぶオプションを考えさせて、やりがいを持たせる。受験を控えている少女には学習支援を行い、厳しい家の子にはアリバイづくりの協力をし、金銭管理ができない少女には貯金代講サービスも行う。オーナーはときどき来て、「君には期待している」などと声をかけ、少女を喜ばせる。また、日常的には、スカウトを通してフォローし、うまく適応できない少女には他の店を紹介したりする。「お前の夢はなんだ」など、プライドを持たせるワークショップを行っている店もある。このようにして、卒業後も、系列の風俗店で倒を見るという。
 評者は考える。「みんなを」ではなく、「自分だけを」かまってほしいという若者の関係への志向は、われわれもよく感じるところだ。教育では、これをそのまま受け入れるわけにはいくまい。しかし、少女たちを取り巻く「裏社会」が、このような隙間をついて少女たちを取り込んでいることは認識する必要がある。店のルールを守ろうとする少女といい、店に居場所を求める少女といい、人々が支え合う社会に向けて、自己を位置付けることのできる本当の社会的自立を促すわれわれの役割は大きい。それは、生徒の卒業後の充実をも視野に入れたものでなければならない。





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