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若者論のトレンドCONCEPT

書評

「男なみ発想」の女性が「女ゆえ」に退職するパラドクス

 中野氏は、1999年の改正均等法以降入社の旧帝大出の一流企業総合職女子を中心に、15人のエリート女子の育休取得後の挫折を追う。彼女たちは、男並みに仕事で自己実現すること(バリキャリ)と、早めに出産して子育てするという「産め働け育てろプレッシャー」のジレンマに陥るという。「生きずらい」などと口走れば、他の女子から「あの人たちは勝ち組だから」と距離を置かれる。育休明けに復職しても、周りから「配慮され」、バリキャリの時のようには働かせてもらえない。彼女たちは、子にはお受験をさせない。自らは高い学業と社会的地位を達成しながらも、今となっては喜べないでいるのだ。
 エリートの割には、妊娠時期については無計画で、また、結婚前に家事分担について相手と話し合いもしていない。同類婚といって、自分と同等以上の時間のない相手を選ぶが、海外出張に飛び回る夫をずるいと思ってしまう。そもそも就活中も、やりがい重視のため、復帰に不都合な職場を選んでしまっている。
 すべてが自己決定に帰結され、社会に対する無関与が広がるこのような状況に対して、中野氏は、「既存の構造を疑い、新しい価値を生み出し、社会を変えていく人材を育てる」よう提唱する。
 評者は次のように考える。エリート女子といえども、一般の現代青年と共通の課題をもっている。現実社会において重要なのは、自己実現を自己内で完結させずに、他者と自己実現を互いに支え合うということである。夫ともコミュニケーションをとらなければならない。職場や地域の未来のリーダーを育てるためには、このような視点が求められる。



書評


中野 円佳 (著)
「育休世代」のジレンマー女性活用はなぜ失敗するのか?
光文社新書
2014/9/17
950円

 中野氏は、1999年の改正均等法以降入社の旧帝大出の一流企業総合職女子を中心に、15人のエリート女子の育休取得後の挫折を追う。彼女たちは、男並みに仕事で自己実現すること(バリキャリ)と、早めに出産して子育てするという「産め働け育てろプレッシャー」のジレンマに陥るという。「生きずらい」などと口走れば、他の女子から「あの人たちは勝ち組だから」と距離を置かれる。育休明けに復職しても、周りから「配慮され」、バリキャリの時のようには働かせてもらえない。彼女たちは、子にはお受験をさせない。自らは高い学業と社会的地位を達成しながらも、今となっては喜べないでいるのだ。
 エリートの割には、妊娠時期については無計画で、また、結婚前に家事分担について相手と話し合いもしていない。同類婚といって、自分と同等以上の時間のない相手を選ぶが、海外出張に飛び回る夫をずるいと思ってしまう。そもそも就活中も、やりがい重視のため、復帰に不都合な職場を選んでしまっている。
 すべてが自己決定に帰結され、社会に対する無関与が広がるこのような状況に対して、中野氏は、「既存の構造を疑い、新しい価値を生み出し、社会を変えていく人材を育てる」よう提唱する。
 評者は次のように考える。エリート女子といえども、一般の現代青年と共通の課題をもっている。現実社会において重要なのは、自己実現を自己内で完結させずに、他者と自己実現を互いに支え合うということである。夫ともコミュニケーションをとらなければならない。職場や地域の未来のリーダーを育てるためには、このような視点が求められる。

以下資料

商品の説明
出版社からのコメント
◆上野千鶴子さん推薦! 人事部必読! !

・自己実現×「産め働け育てろ」プレッシャー
・就活時の「マッチョ志向」が退職につながる
・企業の「過剰な配慮」がやりがいを奪う
・夫に「期待できない」、親に「頼りたくない」
・産んで初めて分かる「男女平等の幻想」……etc.

復帰後社員が「ぶら下がり」に見えるには、理由があった……

◆実はこんな女性が辞めやすい! ?(チェックリスト)

□親に「女の子らしくしなさい」などと言われたことがない。
□学生時代、男っぽくふるまったことがある。
□就職活動では「働きやすさ」より「やりがい」を重視した。
□夫には出世競争から降りてほしくない。
□祖父母任せの子育てには抵抗感がある。

【内容】

昔に比べれば、産休・育休や育児支援の制度が整ったかに見える今、
それでも総合職に就職した女性の多くが、
出産もしくは育休後の復帰を経て、会社を辞めている。
男性と肩を並べて受験や就職活動にも勝ち抜き、
出産後の就業継続の意欲もあった女性たちでさえ、
そのような選択に至るのはなぜなのか。
また会社に残ったとしても、
意欲が低下したように捉えられてしまうのはなぜなのか。

この本では、実質的に制度が整った2000年代に総合職として入社し、その後出産をした15人の女性(=「育休世代」と呼ぶ)に綿密なインタビューを実施。
それぞれの環境やライフヒストリーの分析と、選択結果との関連を見ていく中で、予測外の展開にさまざまな思いを抱えて悩む女性たちの姿と、そう至らしめた社会の構造を明らかにする。

【目次】

序 なぜ、あんなにバリキャリだった彼女が「女の幸せに目覚める」のか?

1章 「制度」が整っても女性の活躍が難しいのはなぜか?
(1)辞める女性、ぶら下がる女性
(2)どんな女性が辞めるのか?

2章 「育休世代」のジレンマ
(1)働く女性をめぐる状況の変化
(2)「育休世代」にふりかかる、2つのプレッシャー
(3)「育休世代」の出産

3章 不都合な「職場」
(1)どんな職場で辞めるのか?
(2)どうして不都合な職場を選んでしまうのか?

4章 期待されない「夫」
(1)夫の育児参加は影響を及ぼすか?
(2)なぜ夫選びに失敗するのか?
(3)「夫の育児参加」に立ちはだかる多くの壁とあきらめ

5章 母を縛る「育児意識」
(1)「祖父母任せの育児」への抵抗感
(2)預ける罪悪感と仕事のやりがいの天秤
(3)母に求められる子どもの達成

6章 複合的要因を抱えさせる「マッチョ志向」
(1)二極化する女性の要因
(2)「マッチョ志向」はどう育ったか
(補1)親の職業との関連
(補2)きょうだいとの関連
(補3)学校・キャリア教育との関連

7章 誰が辞め、誰が残るのか?
(1)結局「女ゆえ」に辞める退職グループ
(2)複数の変数に揺れ動く予備軍グループ
(3)職場のジェンダー秩序を受け入れて残る継続グループ

8章 なぜ「女性活用」は失敗するのか?
(1)「男なみ発想」の女性が「女ゆえ」に退職するパラドクス
(2)企業に残る「非男なみ」女性と、構造強化の構造
(3)夫婦関係を浸食する夫の「男なみ」
(4)ジェンダー秩序にどう抗するか?
(5)オリジナリティと今後の課題(意義と限界)

【著者プロフィール】

中野円佳(なかのまどか)
1984年東京都生まれ。2007年、東京大学教育学部卒、新聞社入社。
2014年、立命館大学大学院先端総合学術研究科修了。
東大卒の母親のコミュニティ「東大ママ門」立ち上げ人。





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