本文へスキップ

若者文化研究所は若者の文化・キャリア・支援を専門とする研究所です。

TEL. メールでお問い合わせください

〒165 東京都中野区・・詳細はメールでお問い合わせください

若者論のトレンドCONCEPT

書評

評者は考える。人には個人として社会人としての成長とは別に、そのこと自体が癒しや楽しみになる時間が大切だ。それが社会における新しい価値や文化の創造につながる。しかし、そこに個人間の格差があるとすれば、能力目標だけでなく、貧しい者にも文化資本を提供するよう考えたい。

 池田氏は、「かわいい」が氾濫する社会に対する「文化的に未成熟」という批判に反対し、女性の活動領域の拡大など、社会がより多様性を求める時に必要となる感性のーつが 「かわいい」だと言う。従来の「男性的」とされていた領域に、もっと別のセンスや価値観を持ち込む。そのことによって、男性も女性も、ある程度心地よくその領域に関われるようになるというのである。西原氏は、「姫キャラ」を含めた広義のプリンセスについて、三〇代、四〇代の女性が社会貢献活動などによる努力型であったのに対して、一〇代後半から二〇代は、「生まれながらの」自分らしさ体現型だと言う。そこでは、「男性から見られる」という意識から解放され、「女子としての自分」という満足があるというのだ。永田夏来氏は、量的調査の結果から、「夏フェス女子」は、幼少期に美術館・博物館訪問やクラシック視聴を経験した者が多いと言う。そして、このような「文化資本の高い女性」が、「夏フェス」での写真写りの良さと「かわいい」をネットで発信しているという。以上の楽しみを、吉光氏は、「心躍ることや心囚われることに尽きない現代人の暮らし」と表現している。


書評



ポスト〈カワイイ〉の文化社会学
−女子たちの「新たな楽しみ」を探る−
吉光正絵・池田太臣・西原麻里編著
ミネルヴァ書房
発売日:2017/4/20
¥3,780

 
 この本は言う。「かわいい」は、古典的な女らしさという意味から、伝統的な規範の圧迫から抜け出して自分らしく生きたいと願う女子たちの希望の表れに変わった。現代の女子たちは、より自由に「かわいい」を楽しんでいる。同書では、いまもなお多様化と洗練化を続ける女子文化を解明するため、ゲーム、ロック、歴女、ハロウィン、メイド、島ガールなどにおける「かわいい」を追求する。  池田氏は、「かわいい」が氾濫する社会に対する「文化的に未成熟」という批判に反対し、女性の活動領域の拡大など、社会がより多様性を求める時に必要となる感性のーつが 「かわいい」だと言う。従来の「男性的」とされていた領域に、もっと別のセンスや価値観を持ち込む。そのことによって、男性も女性も、ある程度心地よくその領域に関われるようになるというのである。西原氏は、「姫キャラ」を含めた広義のプリンセスについて、三〇代、四〇代の女性が社会貢献活動などによる努力型であったのに対して、一〇代後半から二〇代は、「生まれながらの」自分らしさ体現型だと言う。そこでは、「男性から見られる」という意識から解放され、「女子としての自分」という満足があるというのだ。永田夏来氏は、量的調査の結果から、「夏フェス女子」は、幼少期に美術館・博物館訪問やクラシック視聴を経験した者が多いと言う。そして、このような「文化資本の高い女性」が、「夏フェス」での写真写りの良さと「かわいい」をネットで発信しているという。以上の楽しみを、吉光氏は、「心躍ることや心囚われることに尽きない現代人の暮らし」と表現している。
 評者は考える。人には個人として社会人としての成長とは別に、そのこと自体が癒しや楽しみになる時間が大切だ。それが社会における新しい価値や文化の創造につながる。しかし、そこに個人間の格差があるとすれば、能力目標だけでなく、貧しい者にも文化資本を提供するよう考えたい。

〈カワイイ〉が一般化した時代(=ポスト〈カワイイ〉)の女子文化のあり方を問う。〈カワイイ〉は一見すると古典的な女らしさのようにみえるが、実は、伝統的な規範の圧迫から抜け出して自分らしく生きたいと願う女子たちの希望の表れでもある。現代の女子たちは、より自由に〈カワイイ〉を楽しんでいるのである。本書では、いまもなお多様化と洗練化を続ける女子文化の現在について、丹念な調査・分析を通じて解明する。

[ここがポイント]
◎ メディアを通じて掲載された女子文化とは何であり、どのように展開しているのか。
◎ ゲーム、フェス、歴女、メイド…第一線の社会学者による調査分析。

《編著者紹介》※本情報は刊行時のものです

吉光正絵(よしみつ・まさえ)
1999年 奈良女子大学人間文化研究科博士後期課程単位取得退学。
現 在 長崎県立大学国際社会学部准教授。

池田太臣(いけだ・たいしん)
1997年 神戸大学大学院文化学研究科博士課程(社会文化専攻)単位修得満期退学。博士(学術)。
現 在 甲南女子大学人間科学部教授。

西原麻里(にしはら・まり)
2011年 同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻博士後期課程退学。博士(メディア学)。
現 在 愛知学泉大学家政学部講師。

目次
第1章 “カワイイ”の銀河系
第2章 プリンセスになること、プリンセスであること―女性誌から読み解く現代の“理想”の姿
第3章 女児とゲームの創造/想像的関わり―「女の子のためだけのゲーム雑誌」『ぴこぷり』に見る
第4章 越境する夏フェス女子―音楽とインターネットをめぐるインテグラルなアクション
第5章 女子の日常とロックのアンビバレントな関係
第6章 歴女と歴史コンテンツツーリズム―日本史を旅する女性たちと“ポップ”スピリチュアリズム
第7章 都市のハロウィンを生み出した日本社会―需要される偶有的なコミュニケーション
第8章 オタク女子の「ホーム」―オタク的自己の承認の場としてのメイド喫茶
第9章 島ガールの語られ方と生き方―自分らしい手作りの島暮らし






バナースペース

若者文化研究所

〒165-0000
詳細はメールでお問い合わせください

TEL 詳細はメールでお問い合わせください

学習目標に社会的要請を組み込む