書評
評者は、それ以前に大きな障害があると感じる。夫婦間のコミュニケーションについて、ある女子学生が「なぜ女のほうから努力しなければならないのか」と私に言った。互いが「自分のほうからはどうするか考える」という前提そのものが崩れかけているのだ。教育の世界では、キャリアにおけるコミュニケーション力の育成ばかりに目が向いているようだが、個人の私生活の危機にも目を配る必要がある。
同書は、それぞれ次の10タイプを指摘する。「帰宅恐怖症になりやすい」夫=気弱で優しい型、我慢型、争いごと苦手型、外面人間型、面倒くさがりや型、お子ちゃま型、父親が気が利かない方、母親がヒステリー型、母親が過干渉型、女性慣れしていない型。「夫を帰宅恐怖症させやすい」妻=しっかりした良い妻型、白黒はっきり型、せっかち型、束縛型、マイルールいっぱい型、ボス型、ヒステリー型、母親が感情的でヒステリー型、父親大好き型、男性慣れしていない型。また、体験談としては、妻が怖い夫の「上司のような妻」、夫から怖いと言われた妻の「ディベート夫婦」などの事例が紹介されている。また、「帰宅恐怖症になるメカニズム」としては、妻の「想像力」と「妄想力」、「闘うか、逃げるか」と考えてしまう夫などが挙げられる。
書評
帰宅恐怖症
著者 小林美智子
文春新書
2017年6月20日
¥ 842
われわれや次世代の私生活は、今後どうなるのか。同書は帰宅恐怖症の男性を次のように描写する。常に妻の顔色をうかがい、妻とのやりとりに疲れ、帰宅が億劫になり、仕事が終わっても会社に居残り、まっすぐ家に帰らず、わが家を目の前にしても近くの公園のブランコで家の灯りが消えるのを待つ。小林氏は、普通の主婦から転身して、「夫の気持ち、妻の気持ちがよくわかる夫婦問題カウンセラー」として活動している。
同書は、それぞれ次の10タイプを指摘する。「帰宅恐怖症になりやすい」夫=気弱で優しい型、我慢型、争いごと苦手型、外面人間型、面倒くさがりや型、お子ちゃま型、父親が気が利かない方、母親がヒステリー型、母親が過干渉型、女性慣れしていない型。「夫を帰宅恐怖症させやすい」妻=しっかりした良い妻型、白黒はっきり型、せっかち型、束縛型、マイルールいっぱい型、ボス型、ヒステリー型、母親が感情的でヒステリー型、父親大好き型、男性慣れしていない型。また、体験談としては、妻が怖い夫の「上司のような妻」、夫から怖いと言われた妻の「ディベート夫婦」などの事例が紹介されている。また、「帰宅恐怖症になるメカニズム」としては、妻の「想像力」と「妄想力」、「闘うか、逃げるか」と考えてしまう夫などが挙げられる。
小林氏は、最後に「夫婦関係は育て続けるもの」と助言する。その通りなのだが、評者は、それ以前に大きな障害があると感じる。夫婦間のコミュニケーションについて、ある女子学生が「なぜ女のほうから努力しなければならないのか」と私に言った。互いが「自分のほうからはどうするか考える」という前提そのものが崩れかけているのだ。教育の世界では、キャリアにおけるコミュニケーション力の育成ばかりに目が向いているようだが、個人の私生活の危機にも目を配る必要がある。
妻への恐怖心10のチェックポイント 153
@妻はコントロールしたがる傾向がある 155
A妻は常に自分を正当化しようとする 156
B妻に褒められたり、肯定されたことがあまりない 158
C妻から否定されていると感じることが多い 159
D妻が正しくて、自分が間違っているような気がする 160
E妻の顔色をうかがったり、ご機嫌とりをしてしまう 160
F妻にはビクビクして何も言えない 162
Gタ方近くになると憂鬱になる 163
H妻が寝静まった頃に帰ろうとする 164
I家のドアを開けるのが怖く感じる 166
夫を帰宅恐怖症にしてしまう妻30のチェックポイント 166
@「夫と家族のため良い妻になりたいー」「こんな夫婦になりたいー」という思いが人一倍強い 170
A自分の価値観が絶対だと思っている 170
B自分に自信がなく、自分のことが嫌い 171
C心配性で不安定 171
D「なぜ」「どうして」がロ癖で、「どうせ私なんて」と思いがち 171
Eカッとなりやすく、感情のコントロールができない 172
F自分が納得できるまで相手をとことん追及したくなる 172
G人に任せられず、自分でやらないと気が済まない 173
H外面人間で、ストレスを溜めやすい 173
I心を許せる話し相手がいない(親・兄弟姉妹・友人など) 174
J夫を褒めることができない 174
K夫のマイナス面ばかりが目につく 175
Lとくに人前で、夫の行動が気になり、厳しい目で見る 175
M夫の親や親戚の悪ロを平気で言ってしまう 176
N夫にきつい言い方やきつい接し方をしてしまう 176
O夫に素直になれず、謝ることができない 176
P夫の嘘が気になり、些細なことを「嘘」と疑い、しつこく責めてしまう 177
Q夫を自分の思い通りにしたくなる 178
R子供のことを「私物化」してしまう 178
S不機嫌になったり、夫を無視してまでも、自分の思い通りにする 178
21残業や休日出勤が増えた 179
22平日のタ食はほとんど家で食べない 179
23家族が寝静まった頃に帰宅して、朝早く出勤し、ほとんど顔を合わせない 179
24休日も一緒に出かけたがらず、1人で出かけたり、自室にこもりがち 179
25子供と一緒なら会話するが、2人だとほとんど会話がない 180
26電話に出ないことが多く、ラインやメールも返信がない 180
27かなり疲れているように見える 180
28妻だけでなく、子供も避けるようになってきた 181
29夫から「実は君が怖い」と言われたことがある 181
30夫から「離婚したい」と言われ、拒否したら「とりあえず別居したい」と言われた 182
「帰宅恐怖症」脱出作戦「妻が怖い」夫へ 183
作戦@自分の気持ちを書き出す185
作戦A妻を疑え! 187
作戦B「怖い」の一言を言え! 188
作戦C試練は乗り越えない! 190
作戦D自分のせいにしない! 191
作戦Eとりあえず謝らない! 192
作戦F言うべきことは言う! 193
作戦G操めて得とれ! 195
作戦H無責任夫にチャンスあり! 197
作戦I生き方を変える! 199
第9章「帰宅恐怖症」解決法ー「夫に怖がられている」妻へ 203
解決法@過去の自分を振り返る! 204
解決法A夫の長所と短所を仕分けする! 212
解決法Bあなた自身の決断こそ重要! 214
解決法C一番しんどいものから逃げる! 214
解決法D言う前に書く! 217
解決法E「何にイライラしているか」を具体的に考える! 218
解決法F計算して得とれ! 220
解決法G何か1つだけやめてみる! 222
解決法H「夫婦関係はすでに壊れている」と思え! 224
解決法I「帰宅恐怖症」 への緊急対処法 225
おわりに 233
夫婦の心得5カ条 233
第1条バランスよく生きる 234
第2条これまでと違うことをする 235
第3条信頼関係は「自分が信じる」ことからつくられる 236
第4条学ぶより真似ぶ 236
第5条 夫婦関係は育て続けるもの 237
若者文化研究所は若者の文化・キャリア・支援を専門とする研究所です。