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若者論のトレンドCONCEPT

書評

 評者は考える。「役に立つ学問」や「主体的・対話的で深い学び」などが叫ばれている。しかし、そのおおもとには、AIでは到達不可能な「読解力」が必要なのだ。多くの若者が、読解力不足のために「楽習」を味わえない状態を放置するならば、これは深刻な社会問題として認識すべきである。

超有名私立中高一貫校について、筆者は、12歳の段階で高校3年程度の読解力のある生徒を入試でふるいにかけるのだから、あとの指導は楽だと言う。教科書や問題集を「読めばわかる」のだから1年間受験勉強にいそしめば旧帝大クラスに入学できてしまうと言うのだ。だが、同時に、12歳以降でも、スマホの使用時間などとはほとんど関係なく、読解力の向上はできると氏は言う。


書評




AI vs. 教科書が読めない子どもたち
新井 紀子 (著)
出版社: 東洋経済新報社
発売日: 2018/2/2

 学生の基本的読解力に懸念を抱いた新井氏は、RST(読解力調査)を自力で開発した。同調査は、AI(人工知能)の正解率が80%を超える「係り受け」や急速に研究が進んでいる「照応」と、AIにはまだまだ難しいと考えられている「同義文判定」、AIにはまったく歯が立たない「推論」「イメージ同定」「具体例同定」の6つの分野で構成される。調査にあたり、理解できなければその人が不利益を被るような題材として、教科書から出題し、累計二万五千人の小中高校生のデータを収集した。
 氏は、AIにとっては、憶えたり計算したりすることは容易でも、教科書に書いてあることの意味を理解するのは苦手だと言う。それは、日本の中高校生と同じで、AIで対処できない新しい仕事は、多くの人間にとっても苦手な仕事である可能性が非常に高いと言うのだ。それゆえ、AIに多くの仕事が代替された社会では、労働市場は深刻な人手不足に陥っているのに、失業者や最低賃金の仕事を掛け持ちする人々が溢れるという「AI恐慌の嵐に晒される」と氏は警告する。
 実際、RST能力値と旧帝大進学率との相関が非常に高いという結果が出ている。このことから、超有名私立中高一貫校について、12歳の段階で高校3年程度の読解力のある生徒を入試でふるいにかけるのだから、あとの指導は楽だと言う。教科書や問題集を「読めばわかる」のだから1年間受験勉強にいそしめば旧帝大クラスに入学できてしまうと言うのだ。だが、同時に、12歳以降でも、スマホの使用時間などとはほとんど関係なく、読解力の向上はできると氏は言う。
 評者は考える。「役に立つ学問」や「主体的・対話的で深い学び」などが叫ばれている。しかし、そのおおもとには、AIでは到達不可能な「読解力」が必要なのだ。多くの若者が、読解力不足のために「楽習」を味わえない状態を放置するならば、これは深刻な社会問題として認識すべきである。

東ロボくんは東大には入れなかった。AIの限界ーー。しかし、”彼”はMARCHクラスには楽勝で合格していた! これが意味することとはなにか

 AIは何を得意とし、何を苦手とするのか

 AI楽観論者は、人間とAIが補完し合い共存するシナリオを描く。しかし、東ロボくんの実験と同時に行なわれた全国2万5000人を対象にした読解力調査では恐るべき実態が判明する。AIの限界が示される一方で、これからの危機はむしろ人間側の教育にあることが示され、その行く着く先は最悪の恐慌だという。では、最悪のシナリオを避けるのはどうしたらいいのか

 最終章では教育に関する専門家でもある新井先生の提言が語られる。

【主な内容】
はじめに

第1章  MARCHに合格――AIはライバル
 AIとシンギュラリティ
 偏差値57.1
 AI進化の歴史
 YOLOの衝撃――画像認識の最先端
 ワトソンの活躍
 東ロボくんの戦略
 AIが仕事を奪う
  
第2章 桜散る――シンギュラリティはSF

 読解力と常識の壁――詰め込み教育の失敗
 意味が理解しないAI
 Siri(シリ)は賢者か


 奇妙なピアノ曲
 機械翻訳
 シンギュラリティは到来しない

第3章 教科書が読めない――全国読解力調査

 人間は「AIにできない仕事」ができるか

――大学生数学基本調査
 数学ができないのか、問題文を理解していないのか


 全国2万5000人の基礎的読解力を調査
 3人に1人が、簡単な文章が読めない
 偏差値と読解力
 
第4章 最悪のシナリオ

 AIに分断されるホワイトカラー
 企業が消えていく
 そして、AI世界恐慌がやってくる

おわりに






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