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若者論のトレンドCONCEPT

書評

著者は、社長からダメ出しされた事業を、部下が進んで作業したデータ収集などに支えられ、「やんわりと」社長を説得した。このようなプロセスを経て「みんながお互いを思いやり、会社の状況を把握し、できることを自分で考える」というチームに育ったと言う。評者は、学校管理職としても、うまくいかないときこそ、教職員に自ら考えさせ、「チームとしての学校」を実現する方向で教職員を導くことが大切であり、このことこそ、今後の学校経営にとっては、重要なリーダーシップといえるのだと考える。




著者は、「自ら考える社員」を育てようとする。著者は次のように述べる。上司から指摘を受けたら、「その本質は何か」を見極めることが重要である。イベントの内容を修正するように言われても、客観的に考えて、イベントを修正する必要性はないように思ったとき、それならワンクッション置いて、指示の真意はどこにあるのか、この指示から何を学ぶべきなのかを考えることが大切だと言うのだ。「直せと言われたから直しました」では、何もいいことがない。残業が増え、みんなが疲弊し、現場のモチベーションが下がり、「考えない体質」になると言う。




書評





小巻亜矢
サンリオピューロランドの人づくり
−来場者4倍のV字回復!−
出版社: ダイヤモンド社
発売日: 2019/7/18

 著者は、低迷していたサンリオピューロランドに専業主婦から復職した。設備投資する予算もないため、施設もスタッフもほぼ同じままで、マネジメント、研修、コミュニケーション、バックヤード(従業員トイレなど)を変えることでランドをV字回復させた。「カワイイ」とともに「みんななかよく」というサンリオのコンセプトを高く掲げ、これをSDGsの一環として位置づける。
 著者は、「自ら考える社員」を育てようとする。著者は次のように述べる。上司から指摘を受けたら、「その本質は何か」を見極めることが重要である。イベントの内容を修正するように言われても、客観的に考えて、イベントを修正する必要性はないように思ったとき、それならワンクッション置いて、指示の真意はどこにあるのか、この指示から何を学ぶべきなのかを考えることが大切だと言うのだ。「直せと言われたから直しました」では、何もいいことがない。残業が増え、みんなが疲弊し、現場のモチベーションが下がり、「考えない体質」になると言う。
 著者は、社長からダメ出しされた事業を、部下が進んで作業したデータ収集などに支えられ、「やんわりと」社長を説得した。このようなプロセスを経て「みんながお互いを思いやり、会社の状況を把握し、できることを自分で考える」というチームに育ったと言う。評者は、学校管理職としても、うまくいかないときこそ、教職員に自ら考えさせ、「チームとしての学校」を実現する方向で教職員を導くことが大切であり、このことこそ、今後の学校経営にとっては、重要なリーダーシップといえるのだと考える。

書評長

 本書には、専業主婦11年からの復職、幼い息子の死、シングルマザーの苦闘、2度のガン、52歳からの働きながらの東大大学院進学など、そのキャリア論、人生論、死生観、時間術も掲載されている。
 著者は、低迷して大赤字だったサンリオピューロランドに専業主婦から復職して、わずか2年でV字回復させた。設備投資する予算もないので、施設もスタッフもほぼ同じままなのに、マネジメント、研修、コミュニケーション、バックヤード(従業員トイレなど)を変えることで、職場の雰囲気を大きく前向きにさせた。本書は、抵抗の多い変革を「お試し」「期間限定」といって次々と受け入れさせる技術、コーチング、スタッフのやる気を取り戻したコミュニケーション術など、すべて結果が出ている受け入れやすいノウハウを紹介する。また、ビジネス戦略については、インバウンド対応、自社の資産(キャラクターなど)の最大活用、顧客ターゲットの変更(幼児向けを大人向け)、インスタ映え、SNS活用などの実際を紹介している。
 著者は、人を育てることを最重視する。コーチングや心理学の知識も交えながら、スタッフの意識を変え、職場の雰囲気を変え、やる気を引き出すために取り入れた仕掛けと、日々心がけているコミュニケーション法を紹介する。それは、「いろいろな価値観をもつ社員をひとつにまとめる」「役職や部署の壁を壊す」「自由にアイデアが飛び交うチームを作る」ということにつながると言う。
 具体的には、挨拶だけで社内の雰囲気はぐっと良くなる、「コンセプト会議」で組織に横串を剌す、「期間限定」「お試し」と言えば反対されない、男性脳には「数値化」が効く、廊下ですれ違いざまに「2行メッセージ」を送る、「バックヤードこそテーマパークに」、トイレの落書きは心の叫びを表すサイン、「いつでも遠慮なくメールを送ってください」、ミッションはみんなの「お母さん役」になること、などの示唆が並ぶ。
 SDGs(持続可能な開発目標)については、世界規模で「みんななかよく」(サンリオのコンセプト)を考えるための国際指標として、ユーチューブでSGDsをはじめとした社会問題にも触れながら、いろいろなコンテンツを届けることの意義などを強調する。 
 ピューロランドでは、従業員トイレを「バックヤード」として、きれいに大切にしている。その誇らしいトイレに、あえて落書きをする人がいた。がっかりしたのと同時に、著者はスタッフのなかにプライドが湧き上がるのを感じた。そしてネガティブなことにどう対処するかを、社員やアルバイトと一緒に考える機会とした。「この出来事の意味は何か」「そもそもなぜ、こんなことをしてしまったのか」。今のビューロランドが抱えている痛みを、みんなで真摯に受け止めることかできたとして、スタッフの心の声に関心を寄せ、聴く耳をもつことの大切さを改めて痛感した出来事だと著者は振り返る。
 著者は、「自ら考える社員」について、次のように述べる。どの組織にも言えることだが、上司から指摘を受けたら、「その本質は何か」を見極めることが重要である。イベントの内容を修正するように言われた。でも客観的に考えて、イベントを修正する必要性はないように思う。それならワンクッション置いて、指示の真意はどこにあるのか、この指示から何を学ぶべきなのかを考えるよう助言する。著者は、イベントのアイデアが社長から突き返されたことを、「満足するな」「もっと上を狙え」というメッセージだと理解した。自己の成長や組織の未来につながる学びだと思えば、ベストを尽くそうというモチベーションにもなると言うのだ。これに対して、「直せと言われたから直しました」では、何もいいことがないと言う。残業が増え、みんなが疲弊し、現場のモチベーションが下がる。「考えない体質」になる。結果に対して無責任になる。よくないスパイラルに陥るリスクが高くなる。
 評価について、著者は次のように述べる。仕事をしていると、組織の中で板挟み的な状態に陥ることも、優先順位を決めかねることもある。そんなとき、「育てる」「育ててもらっている」という気持ちがあるかどうかだけで、物事の受け取り方はかなり変わる。成果に対する評価はもちろん大切だが、そこだけを見てはいけない。時間がかかるが、職場のコミュニケーションの前提として、徹底して取り組んでいく。評価シートにどんな欄を設けるかは、会社の姿勢を顕著に表す。そこには「育成し合える会社、成長し続ける組織になろう」というメッセージが詰まっている。人事評価制度は処遇や報酬に直結するだけに、改良するにもかなりハードルがある。まさに、人事チームの踏ん張りと熱意がなければ実現できなかったことであると、胃が痛む思いで制度改善に取り組んできたチームに、著者はエールを送る。
 社員の成長について、著者は次のように述べる。営利企業だから、売り上げ目標や動員目標を達成したり、合理的にコストを削減して利益率を上げる努力をするのは当然のことであり、そもそも、仕事は成果をあげてこそ楽しいという面もある。だが、一番大事なことは、仕事を通じて自分もスタッフも、どう成長できるかである。スタッフがその人なりのちょっとしたハードルを越えた瞬間に触れると、ものすごく感動する。そして、「偉かった、そこ頑張ったよね」とちゃんと言葉にして返してあげたいと思っている。著者は、「みんなが自分の中にあるハードルを越えた瞬間って、すごく素敵」と言う。あら探しではなく、素敵なところを見つけようと心がけていると、魅力的なシーンが目につくようになるとして、美点凝視という言葉の意義を強調する。
 著者は、社長からダメ出しされた事業を、部下の自発的なデータ収集などに支えられ、「やんわりと」社長を説得した。このようなプロセスを経て「みんながお互いを思いやり、会社の状況を把握し、できることを自分で考える」というチームに育ったというのだ。評者は、学校管理職としても、うまくいかないときこそ、教職員に自ら考えさせ、「チームとしての学校」を実現する方向で教職員を導くことが大切であり、このことこそ、今後の学校経営にとっては、重要なリーダーシップといえるのだと考える。

内容紹介
館内は暗くスタッフに笑顔がない??。こんな低迷状態だったサンリオピューロランドをV字回復へと導いたのが初の女性館長・小巻亜矢。専業主婦から復帰、テーマパーク事業の素人ながら、短期間で笑顔とモチベーションにあふれる職場に変えたノウハウとは?壮絶な人生と心理学から導き出されたマネジメント術を全公開

目次
プロローグ


第1章 すべては1本のリポートから始まった

思い出の中にあるピューロランドは輝いていた
「大変です! ピューロランドは可能性に満ちています」
エンタメ業界の素人に何ができるのか
「この会社は黒字にならない」

第2章 朝礼と「かわいいトイレ」の効果は絶大!

やさしい話し方、あたたかな聴き方
「ウォーミングアップ朝礼」でスタッフを笑顔に
上司は1回で説得しようと思わない
朝礼は貴重なマーケティングの場でもある
「対話フェス」でおじさんと女子を仲良く
挨拶だけで社内の雰囲気はぐっと良くなる
「コンセプト会議」で組織に横串を刺す
「期間限定」「お試し」と言えば反対されない
男性脳には「数値化」が効く
廊下ですれ違いざまに「2行メッセージ」を送る
「バックヤードこそテーマパークに!」
トイレの落書きは、心の叫びを表すサイン
「いつでも遠慮なくメールを送ってください」
ミッションはみんなの「お母さん」役になること
相手の荷物を背負いすぎてはいけない

 COLUMN 「自分となかよく」するための毎日の習慣1

バッハの音楽で集中モードに切り替える
スタッフの「隠し撮り」でやる気を出す
悩んだら「三日坊主でもやってみる」

第3章 人生は「想定外」でできている

「小さな贈り物」が大好きだった
号泣して帰ったサンリオの会社説明会
「お給料はいらないので、休みもいらないです」
次男を失った日の記憶
人って、哀しくてかわいい
精神的・経済的自立が女性を美しくする
「サンリオで化粧品を作らない?」
コーチングを通じて女性の悩みに応えたい
左胸と子宮の全摘出に迷いはなかった
51歳から大学院で自己論を学ぶ

 COLUMN 「自分となかよく」するための毎日の習慣2

その日の服装は占いで決める
ストレスが溜まったら書いて捨てる
学ぶなら「通学スタイル」を選ぶ

第4章 ピューロランドの桃太郎が鬼退治しない理由

「これからはピューロランドの時代が来る!」
イケメンミュージカルで大人女子の心を鷲掴み
ハローキティのセリフに思いを託す
キャラクターのビジュアルは「メイキング感」が大事
「子どもが行く場所じゃなかったの?」と思ってもらえたら成功
オリジナルキャラクターは強力なIP
三世代、インバウンドも呼び込んだ「KAWAII KABUKI?ハローキティ一座の桃太郎?」
屋内型テーマパークの強みは「没入感」にある
「食べたい」「撮りたい」キャラクターメニュー
エイプリルフールのツイートから生まれた「品川紋次郎」
カチューシャはピューロランドの「ドレスコード」
社内のデジタルアレルギーを払拭した「ちゃんりおメーカー」
ピューロアンバサダーが社員に教えてくれたこと

 COLUMN 「自分となかよく」するための毎日の習慣3

いろんな自分を認めてあげる  ── 対話的自己論 ──
「バスのワーク」は他者理解にもつながる

第5章 課題の「深読み」で、はぐくむ力を強くする

「ダメ出し」のおかげで社内が1つにまとまった
従業員エンゲージメント指数で課題を「早期発見」
評価シートに込めた経営の方向性
「待ち」の姿勢では女性のキャリアは育たない
仕事の目的は、お互いに成長すること
「感情モニタリング」は大人のたしなみ
SDGsはピューロランドのビジネス戦略である
「KAWAII」で世界を変える

エピローグ

著者
小巻亜矢(こまき・あや)
株式会社サンリオエンターテイメント代表取締役社長。サンリオピューロランド館長。東京都出身、東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。1983年(株)サンリオ入社。結婚退社、出産などを経てサンリオ関連会社にて仕事復帰。2014年サンリオエンターテイメント顧問就任、2015年サンリオエンターテイメント取締役就任。2016年サンリオピューロランド館長就任、2019年6月より現職。子宮頸がん予防啓発活動「ハロースマイル(Hellosmile)」委員長、NPO法人ハロードリーム実行委員会代表理事、一般社団法人SDGsプラットフォーム代表理事。










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