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書評朝比奈なを『教員という仕事−なぜ「ブラック化」したのか−』

本書にもある「異質であることを異常に恐れる雰囲気」が、教育改革を阻害しているのではないか。互いの個性を重んじて支え合う支持的風土をつくりだすことこそ、その閉塞感を打ち破るものと評者は考える。

書評

教員という仕事
−なぜ「ブラック化」したのか−
朝日新書
2020/11/13
朝比奈なを
\869

 著者は言う。「教員改革」によって教員の同質化が起こり、「ムラ社会」化が進み、教員が追いつめられている。職場の有力者と見なされている教員の中には子分を増やしたい、自分と違う価値観を持つ教員を排斥したいと画策する者もいる。本来、「ムラ社会」には、その集団の構成員の間に信頼感を基にした一体感があり、自然災害や他集団とのトラブルの際には協同して行動するものだが、現代の教員は「ムラ社会」特有の同調圧力は強く、「集団規範」に従わない者、突出した言動をする者を許さない雰囲気はあるが、個々の構成員同士の信頼感がないと言う。
 政府や文科省の提言等では多様性を重視しているのに、現実には正反対の実態があるとして、著者は、物言わぬ人材を育成したいと考える誰かが「教育改革」に介入しているのではないかと言う。そして、コロナ禍において、「教員改革」も立ち止まって、目指すべき方向を「画一性」から「多様性」に転換し、それが子どもたちの大人像になるよう、養成・採用、研修制度を再考すべきと主張する。
 また、著者は、生徒と同様に若い教員も「自分に自信を持っている」と言う。そして、「返事はするけど、アドバイスに従ってはやらない」姿勢をしばしば目にしてきたと言う。そして、「勉強はしてきているけど、人からアドバイスをもらったこと、教えてもらったことがあるのだろうか」と危惧する。
 本書にもある「異質であることを異常に恐れる雰囲気」が、教育改革を阻害しているのではないか。互いの個性を重んじて支え合う支持的風土をつくりだすことこそ、その閉塞感を打ち破るものと評者は考える。






キャッチ
“ムラ社会"化が進む現場で、追いつめられてゆく教員たち――。

日本の教員の授業時間は世界一少ないが、労働時間は世界一多いとされる(OECD調べ)。
教壇に立つ以外の業務負担が極めて過大なのだ。
加えて、教員同士の人間関係も大きなストレスとなっている。
新型コロナの対応にも追われ、先生はもう限界状態だ。
当時者のインタビューを通し、実態に迫るとともに、教育行政、教育改革の問題分析も試みる。

日本の教員の労働時間は世界一長い。また、教員間のいじめが起きたりコロナ禍での対応に忙殺されたりと、労働環境が年々 ブラック 化している。その理由とは何か。現職の教員のインタビューを通し、現状と課題を浮き彫りにし、教育行政、教育改革の問題分析も論じる。


 著者は「教員改革」によって教員の同質化が起こり、ある種の「ムラ社会」化が進んだと見ている。もちろん、日本人や日本社会の変質も影響しているが、それ以上に、ある一定のタイプの人間を教員にしたい、既に教員になった人を一定のタイプにはめたいという意図を持つ改革を進めたことが大きな原因と言う。


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