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書評両角達平『若者からはじまる民主主義−スウェーデンの若者政策』
ユースセンターに若者を留めておくことは、社会的な問題を防止する役割を持つとして存在が認められた。そこが若者の活動の基盤の一つとなり、80年代には若者が施設の運営に参画するようになって自治の機能を高めたと言う。このことは、青少年施設としては重要な考え方と言えよう。わが国では、施設内で小さな非行があると、まずは「少なくとも施設内では」非行を排除することが求められがちだ。しかし、支援者は非行対策だけに追い回されるのではなく、若者の自治や参画、団体活動の促進という大局的な戦略を進める必要がある。

書評


若者からはじまる民主主義
−スウェーデンの若者政策−
両角達平 (著)
萌文社
2021/7/23

 本書は、若者の選挙投票率が8割を超えるスウェーデンの教育政策や余暇政策を解説する。学校では、生徒組合、学校選挙などによって、民主主義を教えている。だが、それ以上に若者が「影響力」を行使できるのは、若者の7割が参画する若者協議会や政党青年部などの若者団体によるところが大きい。若者に関する政策、実践に若者団体が参画する機会が与えられ、その結果として若者の声が反映されて初めて「若者による影響力」が発揮されたとして、政策が評価される。「参画」はあくまでその過程にすぎない。それが民主主義の根幹をつくっていると著者は言う。
 ユースセンターは、もともとは思春期にエネルギーが有り余っている若者たちのための「余暇政策」の一環として導入された。そこでは、専門職の余暇リーダーが配置され、就業や学力ではなく、若者個人の多様な余暇の充実が純粋に目指される。1970年代のユースセンターでは、施設内での若者の飲酒などによる問題で活動の質の低下が目立ったが、それでもユースセンターに若者を留めておくことは、社会的な問題を防止する役割を持つとして存在が認められた。そこが若者の活動の基盤の一つとなり、80年代には若者が施設の運営に参画するようになって自治の機能を高めたと言う。このことは、青少年施設としては重要な考え方と言えよう。わが国では、施設内で小さな非行があると、まずは「少なくとも施設内では」非行を排除することが求められがちだ。しかし、支援者は非行対策だけに追い回されるのではなく、若者の自治や参画、団体活動の促進という大局的な戦略を進める必要がある。

【書評長】
 著者は言う。若者は社会の問題ではなく「リソース(資源)」である。著者は、民主主義国家スウェーデンのロジックを「若者政策」を介して解き明かす。そして、若年層の投票率が高く維持されているスウェーデンの若者が社会に参画する姿をレポートしながら、若者の7割が参画する「若者団体」や、教育政策と学校、若者の余暇政策と実践などについて解説する。
 スウェーデンの若者政策について、著者は次のように説明する。移行期にある若者は、身体的な成長や健康、学校での就学、余暇での活勣、政治への参加、就業による経済的な自立、家庭の形成など、さまざまなライフイベントを経験する。それに対応するように、若者政策が構成されている。そして、スウェーデンの若者政策は「参画」という言葉より「影響力」という言葉が使われる。若者の「社会への影響力」は、若者に関すありとあらゆる決めごとや政策、実践に若者が参画する機会が与えられ、若者の声、考え方、視点に耳が傾けられ、その結果、政策や実践に反映され、社会が変わるときに初めて「影響力が発揮された」となる。「参画」はあくまで過程であり、若者の参画の結果として社会が変わるところまで、スウェーデンの若者政策は見ている。
 著者は、「あとがき」で次のように言う。スウェーデンで起きていることは非常にシンプルである。あらゆる人の一人一人の人権を保障し、「あなた自身の社会」を実現すること、つまり「民主主義をつくり出す」という理念に集約される。若者団体やスタディサークルなどのアソシエーション活動こそが民主主義の根幹をつくると位置付けるのがスウェーデンであり、学校やユースセンターが主軸ではない。これこそスウェーデンの民主主義のロジックである。
 「非行の温床ともなり得るユースセンターがそれでも必要な理由」として、著者は次のように述べている。若者の日常は常に非行と隣り合わせの環境である。スウェーデンのユースセンターの歴史に照らせばユースセンターから若者の「非行」は切っても切れない。もともとは思春期にエネルギーが有り余っている若者たちのために「何か新しいことに打ち込める機会」を提供する「集いの場」として導入された。1970年代のユースセンターでは、施設内での若者の飲酒などによる問題で活動の質の低下が目立ったが、当時、ユースセンターに若者を留めておくことは、社会的な問題を防止する役割を持つとみなされていた。この後、80年代には若者に施設の運営に参画してもらうことで自治の機能を高め、非行予防という色は薄まった。
 青少年施設に勤めていた評者から見ると、この「器の大きさ」はうらやましい限りである。わが国では、施設内で若者の小さな非行があると、行政や世間から叩かれ、まずは「施設内では非行を駆逐すること」を求められる。ユースワークがそこで拘泥している状態では、若者の主体性を尊重した社会参加の促進にまでは進めないだろう。

【資料】

本書は、日本で生まれ育った私が、若者の選挙投票率が8割を超えるスウェーデンに実際に住んで、その理由を探究してまとめあげた1冊です。

出版にあたって
日本では一般的に、社会参加や政治意識を高めるために学校教育の役割が大きいと考えられがちで、私自身もそのような固定観念がありました。しかし、現地で100団体以上の組織や団体を訪問する機会をいただき、スウェーデンの若者の生き方や、社会参加のあり方に触れていく中で、私自身の「社会」観が大きく転換していきました。このブログで発信していった内容にもそれが随所にも、みられたのではないでしょうか。

それが追体験できるようにすること、そして、根本的な社会の原理の日本との差異を照らし出すことを目的に、萌文社の編集の青木さんの助けを借りて丁寧に作り上げました。

あとがきより
スウェーデンで起きていることは非常にシンプルである。あらゆる人の一人ひとりの人権を保障し、「あなた白身の社会」を実現すること、つまり「民主主義をつくり出す」という理念に集約される。若者団体やスタディサークルなどのアソシエーション活動こそが民主主義の根幹をつくると位置付けるのがスウェーデンであり、学校やユースセンターが主軸ではない。これこそスウェーデンの民主主義のロジックである。


若者は社会の問題ではなく「リソース(資源)」である! 民主主義国家スウェーデンのロジックを「若者政策」を介して解き明かす。
若年層の投票率が高く維持されているスウェーデン。スウェーデンの若者が社会に参画する姿をレポートしながら、若者の7割が参画する「若者団体」や、教育政策と学校、若者の余暇政策と実践などについて解説する。


【主要目次】
はじめに
第1章 若者の国、スウェーデン
1 北欧最大の国、スウェーデン
2 スウェーデンの若者のリアル
3 社会を変えるスウェーデンの若者
4 スウェーデンの若者の投票率はなんと85%
第2章 若者団体
1 スウェーデンの若者の7割が参画する「若者団体」
2 社会に変化をもたらす若者協議会と全国若者協議会
3 13歳から参加できる「政党青年部」
4 趣味でつながる若者団体の運営は、民主主義の実践の機会
5 若者団体への助成金交付と民主主義の実現
第3章 教育政策と学校
1 スウェーデンの教育政策と学校
2 「給食のじゃがいもが硬い! 」 が育む民主主義?
3 先生のいいなりはゴメン! 生徒の権利を守る「生徒組合」
4 中・高生が投票するスウェーデンの模擬選挙「学校選挙」の秘訣
5 学校の使命は「民主主義を教えること」
第4章 ユースセンター
1 スウェーデンにおける若者の余暇政策と実践
2 ユースセンターで働く専門職「余暇リーダー」の職能
3 余暇活動が社会参画につながるとき
4 郊外の移民の街のユースセンター
5 若者の余暇の保障と意思決定の尊重
第5章 若者政策とその歴史
1 スウェーデンの若者政策の特徴
2 スウェーデン流! 若者の声を確実にアドボカシーする3つの仕組み
3 スウェーデンにおける民主主義の歴史と若者政策実現への道のり
年表 スウェーデンの若者政策と主な出来事
第6章 スウェーデンの若者が社会参画する意味
1 なぜスウェーデンの若者は社会に参画するのか
2 若者の本質的な生き方を可能とする若者政策とは
3 日本の現場に欠けているたったひとつのこと、民主主義
参考文献一覧
おわりに



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