書評林恭子『ひきこもりの真実―就労より自立より大切なこと』、ちくま新書、2021年12月
居場所はこれまで、主に医療関係者や支援者、有識者から「傷のなめ合い」「そんなところに行っても役に立たない」などと言われ、支援として認められることもなく、主催する当事者の大きな負担の上に細々と続いてきたと著者は言う。では居場所以外の就労支援、自立支援が成功してきたのかといえば必ずしもそうともいえず、実態調査でも当事者が求める支援として居場所はもっとも多かったと言うのだ。そして、いつでも戻れる、引きこもりに限定しない居場所をつくって、誰もが安心して生きていける社会をつくるよう提言する。社会教育においても、上から就労を押しつけるのではなく、人々のニーズに基づいて運営する必要があると評者も考える。
書評
林 恭子 (著)
ひきこもりの真実
―就労より自立より大切なこと
ちくま新書
2021/12/9
¥924
著者は、高校2年生で不登校になり、以来30代まで断続的にひきこもって過ごし、2012年から当事者活動を開始した。本書は、就労支援一辺倒の行政施策に疑問を唱え、「本当に必要な支援とは『幸せになるための支援』だと思う。本人が幸せだと感じられるようになるために何が必要か、そのためにはどうしたら良いのかを一緒に考えてほしい」と訴える。
本書は、ひきこもり1686人調査(「ひきこもり・生きづらさについての実態調査2019」)のデータ紹介、ひきこもり女子会の内容、これまでのひきこもり支援の課題、著者はなぜ、どのようにひきこもったのか、そして、どのように人とつながるようになったのか、最後に家族にどうしてほしいのかということが書かれている。
居場所はこれまで、主に医療関係者や支援者、有識者から「傷のなめ合い」「そんなところに行っても役に立たない」などと言われ、支援として認められることもなく、主催する当事者の大きな負担の上に細々と続いてきた。では居場所以外の就労支援、自立支援が成功してきたのかといえば必ずしもそうともいえず、実態調査でも当事者が求める支援として居場所はもっとも多かったと著者は言う。そして、いつでも戻れる、引きこもりに限定しない居場所をつくって、誰もが安心して生きていける社会をつくるよう提言する。
評者も、社会教育においては、上から就労などを押しつけるのではなく、人々のニーズに基づいて運営する必要があると考える。また、学校においても、大阪府高校内における居場所のプラットホーム事業等の例もある。そこでは、将来のためという通常の教育とは異なる「今ここでの支援」が求められると評者は考える。
著者は、高校2年生で不登校になり、以来30代まで断続的にひきこもって過ごし、2012年から当事者活動を開始した。本書は、就労支援一辺倒の行政施策に疑問を唱え、「本当に必要な支援とは『幸せになるための支援』だと思う。本人が幸せだと感じられるようになるために何が必要か、そのためにはどうしたら良いのかを一緒に考えてほしい」と訴える。
本書は、ひきこもり1686人調査(「ひきこもり・生きづらさについての実態調査2019」)のデータ紹介、ひきこもり女子会の内容、これまでのひきこもり支援の課題、著者はなぜ、どのようにひきこもったのか、そして、どのように人とつながるようになったのか、最後に家族にどうしてほしいのかということが書かれている。
居場所はこれまで、主に医療関係者や支援者、有識者から「傷のなめ合い」「そんなところに行っても役に立たない」などと言われ、支援として認められることもなく、主催する当事者の大きな負担の上に細々と続いてきたと著者は言う。では居場所以外の就労支援、自立支援が成功してきたのかといえば必ずしもそうともいえず、実態調査でも当事者が求める支援として居場所はもっとも多かったと言うのだ。そして、いつでも戻れる、引きこもりに限定しない居場所をつくって、誰もが安心して生きていける社会をつくるよう提言する。社会教育においても、上から就労を押しつけるのではなく、人々のニーズに基づいて運営する必要があると評者も考える。
広告より
「家族と同居する中年男性」ばかりじゃない! 8050問題の陰に隠れた、女性や性的少数者、困窮の実態に迫る。そして、家族や支援者に伝えたい本音とは――。
二〇一六年春、東京で「ひきこもり女子会」が開かれた。訪れたのは、「介護離職を機に家から出られなくなってしまった」「男性のいる場に行くのが怖い」という、ひきこもりの女性たちだ。これまで「主婦」や「家事手伝い」に分類されてきた、「見えないひきこもり」が可視化された瞬間だった。ひきこもりには女性も性的少数者もいるし、貧困に苦しむ人も、本当は働きたい人もいる。そして、それぞれに生きづらさを抱えている。ひきこもり女子会を主催する著者が、「ひきこもり1686人調査」や自身の体験をもとに、ひきこもりの真実を伝える。
著者について
高校2年生で不登校になり、以来30代まで断続的にひきこもって過ごす。2012年から当事者活動を開始。全国で「ひきこもり女子会」を主催する他、メディアや講演を通して、ひきこもりについて当事者の立場から伝えている。現在、一般社団法人ひきこもりUX会議代表理事。他、新ひきこもりについて考える会世話人、東京都ひきこもりに係る支援協議会委員等を歴任。編著に『いまこそ語ろう、それぞれのひきこもり』 (日本評論社)、共著に『ひきこもり白書2021』(ひきこもりUX会議)などがある。
目次
第1章 ひきこもり1686人調査(「ひきこもり・生きづらさについての実態調査2019」
ひきこもりは外出しない? ほか)
第2章 ひきこもり女子会(女性のひきこもり
ある日のひきこもり女子会 ほか)
第3章 画一的な支援の課題(調査から浮き彫りになった支援の課題
これまでのひきこもり支援 ほか)
第4章 私はなぜ/どのようにひきこもったのか(「不登校」のない時代に
人とつながる ほか)
第5章 家族にどうしてほしいのか(家族とのかかわり
親にしてほしいこと ほか)
就労支援一辺倒の行政施策に疑問を唱え、「本当に必要な支援とは『幸せになるための支援』だと思う。本人が幸せだと感じられるようになるために何が必要か、そのためにはどうしたら良いのかを一緒に考えてほしい」と訴える
本当に必要な支援とは「幸せになるための支援である」
『そんなことができるならとっくにやっている』
目次
第1章 ひきこもり1686人調査(「ひきこもり・生きづらさについての実態調査2019」
ひきこもりは外出しない? ほか)
第2章 ひきこもり女子会(女性のひきこもり
ある日のひきこもり女子会 ほか)
第3章 画一的な支援の課題(調査から浮き彫りになった支援の課題
これまでのひきこもり支援 ほか)
第4章 私はなぜ/どのようにひきこもったのか(「不登校」のない時代に
人とつながる ほか)
第5章 家族にどうしてほしいのか(家族とのかかわり
親にしてほしいこと ほか)
若者文化研究所は若者の文化・キャリア・支援を専門とする研究所です。