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書評苫野一徳『学問としての教育学』日本評論社、2022年2月

  本書では、この原理、実証、実践の3部門の研究が実現すれば、教育学は、俗に言われる二流学問どころか、きわめて高度な総合学問であり応用学問であるということになるとし、その学問は、哲学と実証と実践が、絶えず相互に関連し支え合う必要があるという意味で総合学問であり、その学問の実践的価値が絶えず問われるという意味において、応用学問にもなると主張している。
 実践部門を受け持つ教育現場でも、「教育学は役に立たない」と言うのではなく、逆に、現場に役立つ教育学の体系化に資することを評者は期待する。


書評


学問としての教育学
苫野 一徳 (著)
出版社:日本評論社
発売日:2022/2/14
¥1,870

 本書は、「学問としての教育学」を体系化し、教育現場に役立つものにするために書かれている。著者は、教育の目的の本質を、個人自らが〈自由〉になるための育成を保障しつつ、お互いが自由を相互承認する社会を実現するものだと言う。この目的に基づいて、本書は、「哲学部門」では、何のための教育か、それはどうあれば「よい」といいうるかという「目的・正当性・構想指針」の原理を、「実証部門」では、 教育心理学や教育社会学、教育史等における「実証」を、「実践部門」では、「目的・正当性・構想指針」の原理に沿う形で、「実証部門」の成果と相互作用しながら、教室レベルから行政レベルに至るまで、個別具体的な状況に応じた有効な教育実践のあり方を、それぞれメタ理論(理論のための理論)として提示している。
 本書では、この3部門の研究が実現すれば、教育学は、俗に言われる二流学問どころか、きわめて高度な総合学問であり応用学問であるということになるとし、その学問は、哲学と実証と実践が、絶えず相互に関連し支え合う必要があるという意味で総合学問であり、その学問の実践的価値が絶えず問われるという意味において、応用学問にもなると主張している。
 本書は、原理部門、哲学部門の課題を、実践部門でも最重要課題として挙げている。実践部門を受け持つ教育現場でも、「教育学は役に立たない」と言うのではなく、逆に、現場に役立つ教育学の体系化に資することを評者は期待する。


【書評長】  著者は、教育の目的の本質を、個人自らが〈自由〉になるための〈教養=力能〉育成の保障とし、社会の側からみれば、〈自由の相互承認〉の原理をより実質化するものだと言う。この目的を実現する学問としての教育学を構築するため、本書は、「哲学部門」において、何のための教育か、それはどうあれば、そしてどう構想していけば「よい」といいうるかという「目的・正当性・構想指針」の原理を、「実証部門」では、 教育心理学や教育社会学、教育史等における「実証」を、「実践部門」では、前者の原理に沿う形で、後者の成果と相互作用しながら、教室レベルから行政レベルに至るまで、個別具体的な状況に応じた有効な教育実践のあり方を、それぞれメタ理論(理論のための理論)として提示している。
 このようにして、本書は、「哲学部門」(教育哲学)を教育の本質解明を可能にするものとして、「実証部門」を、この哲学に支えられた上で、十分な科学的妥当性と科学的価値を持ったものとして、「実践部門」を、さまざまな教育現場に役に立つ実践理論や具体的な実践方法を構築・開発しうるものとして、それぞれを鍛え上げるよう提言する。著者は、これが可能になれば、教育学は、二流学問どころか、きわめて高度な総合学問であり応用学問であるということになるとし、哲学と実証と実践が、絶えず相互に関連し支え合う必要があるという意味で総合学問であり、その学知の実践的価値が絶えず問われるという意味において、応用学問でもあると主張している。
 本書は、教育学「実践部門」の最重要課題として次の四点を挙げている。@現代において〈自由〉に生きるための〈教養=力能〉は何か。Aこの〈教養=力能〉はいかに育めるか。B〈自由の相互承認〉の感度はどうすれぱ育めるか。C教育行政において〈一般福祉〉(教育を含む社会政策は、ある一部の人にだけではなく、すべての人の〈自由〉の実質化に寄与するものでなければならないという意味)はいかに実現しうるか。評者は考える。価値の追求や創造は、教育現場においても本質を成すものである。しかし、これまでそこが曖昧にされたまま、実践が行われてきた。今後は、確たる教育学の体系化のために貢献する役割に期待したい。

【広告より】
★各部門の相互関係
【哲学部門】は他2部門によい教育についての原理を提供する。
【実証部門】は哲学部門に検証素材を、実践部門に研究知見を提供する。
【実践部門】は他2部門に検証素材を提供する。

「よい」教育とは何か。教育学はいかに「科学」たりうるか。有効な実践理論・方法をいかに開発するか。―そのすべてに“答え"を出す

【目次】
はじめに――教育学を役立たせる
第1章 教育学の根本問題
第2章 メタ理論I 哲学部門――「よい」教育とは何か
第3章 メタ理論II 実証部門――教育学はいかに「科学」たりうるか
第4章 メタ理論III 実践部門――有効な実践理論・方法をいかに開発するか
第5章 教育学のメタ理論体系とその展開




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