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書評出口保行『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』SBクリエイティブ (SB新書)、2022/8/6

 著者は、法務省の心理職としての経験から、親が「よかれと思って」していることが子どもにとってはそうではないという「ボタンのかけ違い」が問題化している場合が多いと言う。その上、親は確証バイアス(自分の信念を支持する情報ばかり集める)に陥りがちだと言う。そのほか、「みんなと仲良く」が個性を破壊、「早くしなさい」が先を読む力を破壊、「頑張りなさい」が意欲を破壊、「何度言ったらわかるの」が自己肯定感を破壊、「勉強しなさい」が信頼関係を破壊、勉強しなさいと言うほどやりたくなくなる(ブーメラン効果)、「気をつけて! 」が共感性を破壊(過保護・過干渉のため)などと、ありがちなケースを挙げて警告する。


書評


書評出口保行『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』SBクリエイティブ (SB新書)、2022/8/6

 著者は、法務省の心理職として22年間勤める中で、少年鑑別所、刑務所、拘置所の現場での経験から、一見何の問題もないように見える家庭で、保護者としても 「よかれと思って」していることが子どもにとってはそうではないという「ボタンのかけ違い」が問題化している場合が多いと言う。本書は、親のよかれが危険な声かけになっていないかを検証し、その失敗例から、学力・人間力ともに優れ自律した子どもを育てる方法を解き明かす。親の「よかれと思って」に対して、客観的事実と主観的現実は違う、親は確証バイアス(自分の信念を支持する情報ばかり集める)に陥りがちとして、一方的押しつけになっていないか考える機会を持つよう助言する。
 そのほか、「みんなと仲良く」が個性を破壊する、「早くしなさい」が先を読む力を破壊する、「頑張りなさい」が意欲を破壊する、「何度言ったらわかるの」が自己肯定感を破壊する、「勉強しなさい」が信頼関係を破壊する、勉強しなさいと言うほどやりたくなくなる(ブーメラン効果)、「気をつけて! 」が共感性を破壊する(過保護・過干渉)などと、ありがちなケースを警告する。
 最後に、「子どもを伸ばす親の愛情」として、「模造紙を広げた家族会議」により、各家庭での「目指す姿」を共有しようと提案する。そして、「親のせいでこうなった」という人に対して、「それは一つの真実」としながらも、成育環境を変えることはできない、その現実を受け止めて、これからどうしたいのか、考えるしかないと言う。その場合、蓄積している不満、怒り、寂しさといった感情を、人に話したり、紙に書き出したりして、とことん整理したら、前に進もうと励ます。
 本書は、親の責任感の乏しさを問題として認識している法務教官(少年院の先生)が多いと述べている。同様の感想を持っている学校教員も多いと評者は思う。そのとき、子どもの感情を受け止めることが、前進のための強力な支援につながるのだろう。
 なお、「教師の子はグレやすい」という通説については、著者も教師の子としてそのような気持ちがあったとしつつ、中2まで父親と一緒に風呂に入り、何気なくいろいろな話をしたことが良かったと言う。普段あまり会話がなく、急に「最近ちょっと様子が変だぞ、話してみろ」と呼び出されたら話しにくかっただろうと言う。教師にとっては、参考になる話であろう。

【広告文】
優等生と非行少年のたった1%の子育ての差
「親のよかれ」は「子どもの呪い」になっているかも!
10,000人の犯罪者を心理分析してきた犯罪心理学の第一人者だからこそわかった
子どもの未来を照らす声かけ、子育ての教科書。

うちだけは絶対大丈夫、という家庭でこそ読んでほしい。
親のよかれが危険な声かけになっていないか検証し
学力・人間力ともに優れ自律した子どもを育てる方法とは?

たとえば……
「早くしなさい」ってつい言っていませんか?
子どもの時間感覚が育たず、進路や将来設計を考えるのが苦手な子に育ってしまいます。
「気をつけて! 」ってすぐ注意していませんか?
危険や痛みを自分で知ってこそ、人の気持ちがわかる子に育ちます。

親のちょっとした意識改革で子育ては大きく変わります。
つい怒ってしまったらどうすればいい?子育て方針を途中で変更してもいいの?
手紙や模造紙でできる自律した子の育て方って?いろんな子育てを聞くけど結局どうすればいいの?

子育てに悩むすべての親を救う、人気教授の決定版・子育て論。
はじめに 法務省で出会った1万人の犯罪者たちに学んだこと

序章 「よかれと思って」は親の自己満足
・「よかれと思って」が犯罪につながるのはなぜなのか
・客観的事実と主観的現実は違う
・どんな人も更生できる
・親のよかれは子どもにとっていいとは限らない
・親が陥りがちな確証バイアス
・一方的押しつけになっていないか考える機会を持つ
・方針を修正するときに大事なこと

第1章 「みんなと仲良く」が個性を破壊する
・ワタルのケース
・「みんなと仲良く」のウラにあるもの
・「みんなと仲良く」と「差別しない」は違う
・心理的距離のとり方を学んでいく
・きれいごと教育の問題点
・役割で育てない――「お兄ちゃんだから」はいい迷惑
・家庭のなかでも起こる「刑務所化」
・協調性のある子と自己主張できる子
・短所をひっくり返せば長所になる
・ダメ出し&フォローが個性を引き出す
・ほどよいセンセーション・シーキングで興味を伸ばす

第2章 「早くしなさい」が先を読む力を破壊する
・ユカのケース
・犯罪者に欠けている事前予見能力とは
・「早くしなさい」はなぜダメなのか
・逆算して考える習慣づけ
・能力はあっても、何をしていいかわからない人たち
・将来を考えさせる前に、現在の状況を理解する
・困難を想定して対応力をつける
・自分で自分のことを決めるのがなぜ難しいのか
・柔軟な思考力を身につけるためには
・天才MCの先読み力の伸ばし方

第3章 「頑張りなさい」が意欲を破壊する
・ナオトのケース
・言葉は受け手によって180度変わる
・「頑張って」の言葉で意欲を持たせることはできない
・「努力してもムダ」――学習性無力感とは
・やる気なさそうに「見せているだけ」ということも
・頑張れない原因はどこにあるのか
・いきなり自己実現には向かえない
・ご褒美は逆効果?
・子どもの心を回復させるレジリエンスとは
・スポーツ選手の心理分析からわかった、レジリエンスの秘訣
・原因追究よりも希望の光を示す声かけを

第4章 「何度言ったらわかるの」が自己肯定感を破壊する
・ヒトミのケース
・自分を大事にできない子どもたち
・自己肯定と自己中心
・心に届く褒め方のベースにあるのは観察
・観察のポイントとは
・放っておくと下がっていく自己肯定感
・「何度言ったら」の背景にある思い込みに気づく
・「うちの子なんて」と言ってしまったら

第5章 「勉強しなさい」が信頼関係を破壊する
・コウジのケース
・勉強ができる「いい子」が重罪を犯す理由
・拡大自殺に向かう心理
・動機は持っていても、実際にやらなければいい
・犯罪や非行を防ぐ、「リスクとコスト」とは?
・最大のコストは家族
・「競争に負けたら終わり」ではない
・勉強しなさいと言うほどやりたくなくなる、ブーメラン効果
・勉強以外の話題を持つ
・勉強につまずいたら、スモールステップを考える

第6章 「気をつけて! 」が共感性を破壊する
・マイのケース
・人の気持ちがわからない悲劇
・「私は悪くない」――合理化の心理
・共感性と道徳性
・「気をつけて! 」がダメな理由
・反省ではなく、内省を促す
・自分の気持ちに向き合う、ロールレタリングという方法
・過保護・過干渉になっていないか
・過保護 VS 自由放任
・難しい問題は親が出しゃばるよりも、専門家に相談を

終章 子どもを伸ばす親の愛情
・グレずにすんだ「教師の子」
・模造紙を広げて家族会議
・各家庭での「目指す姿」を共有しよう
・子どもに向き合っていることが大事
・「親のせいでこうなった」という人へ





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