書評葛原祥太『「けテぶれ」授業革命! 子どもが自立した学習者に変わる!』学陽書房、2023/3/6
本書は、子どもが自分で自分の学びを進める「けテぶれ」学習の「指導法」を提唱する。けテぶれとは「計画・テスト・分析・練習」のことで、そのことによって、子ども自身が自分で学びを計画・実行して学びのPDCAを回し、自分なりの学び方を獲得していく。そこでは、教師は、語ることとともに、問うことが必要だと言う。不透明な時代ではあるが、学習者の自主性を尊重する教育のためにこそ、授業や宿題の提示において、適切な目的、目標、手段に関する情報提供が必要であること、そしてその内容を明確に示す貴重な提言と評者は受け止めた。
書評
葛原祥太『「けテぶれ」授業革命! 子どもが自立した学習者に変わる!』学陽書房、2023/3/6
¥2,200
本書は、子どもが自分で自分の学びを進める「けテぶれ」学習法を指南する。けテぶれとは「計画・テスト・分析・練習」のことで、そのことによって、宿題で子ども自身が自分で学びを計画・実行して学びのPDCAを回し、自分なりの学び方を獲得していく。そこで、教師は、目的、目標、手段の関係を押さえる、そして語るだけでなく、問うことが必要だと言う。
これは「放任」ということではない。それどころか、教師が目的、目標、手段に関する情報を子どもたちに与える必要があると言うのだ。ここで目的とは「なんのために学校に集まり共に学んでいるのか」、目標とは「その目的に至るために何を目標にすればいいのか」、手段とは「その目標を達成するためにはどんな手段があるのか」であり、その情報を子どもたちに与える必要があるという。活動のゴール(目的)が見えなかったり、そこに魅力を感じなかったりすれば意欲はわかないし、ゴールに魅力を感じて意欲が出たところで、すぐにそこに到達できるわけではないので、「実際にいまから目指すことができる場所(目標)」が見えなければ動き出せない。またそのために用い得る手段が状況に合わせて調整できず使いにくかったりすれば、せっかくのやる気もしばんでしまうと言うのだ。以上のことから、子どもたちの自由な学びを支えるには、「目的は魅力的に、目標は具体的に、手段は柔軟に」示すべきだと言う。
たとえばけテぶれの「れ」だけは自由にしてよい、といった限定された自由の中では、目の前の課題を解決する、というコンパクトな目標に向かえばいいので、子どもたちはそこまで迷うことはない。けテぶれの初期ではそういう機会を丁寧に確保し、その中で何をするのがいいのか、どう振る舞えばいいのか、という学びの「型」を手渡していくというアプローチを紹介している。そういう環境から徐々に自由度を上げ、単元進行中の多くの時間を「何をやってもいい(よりよく学べるのなら)」といった徹底的に自由な環境にすると、子どもたちは多くのことを自分で考えて、自分で判断する必要に迫られる。子どもたちに、考えさせ、判断させるためには、それだけ多くの判断材料となり得る「情報」を提供する必要がある。自由度が高まれば高まるほど、その空間に提供してやるべき「情報」は増えると著者は言う。
ある日、著者は、日本でもトップの学力を誇る有名校の高校生の相談に乗った。彼は、急に勉強がわからなくなり、やる気が完全に失われた。その問題は、「自分にとって必要な学習が何か」「困ったときはどうしたらいいのか」がわからず、学習者として自立できていなかったのだと著者は言う。そして、自分の頭で、自分で何を学ぶべきか考え、仲間とともに力強く進んでいく、そういう子どもを、小学生のときから育てたほうがいいと言う。そのために、学びのPDCAをまわしていく学習法を宿題・家庭学習でやるよう著者は提唱する。これによって「漫然と漢字・計算プリントをすべての子が同じ問題をやるのではなく、自分がわかっていない、学ぶべき部分を学ぶためにやる」という学習が実現できると言う。
自由にのびのびと楽しく学習することは大切だ。だが、そこには、指導者による適切な目的、目標、手段に関する情報提供が求められる。現在、新能力観や非認知能力の重視などによって、教育のPDCAや目標設定について、忌避感や無用感が漂っているように評者は感じる。そんなとき、本書は、学習者の自主性を尊重する教育においてこそ、適切な目的、目標、手段に関する情報提供が重要であることを示す書として、有意義な存在であると思う。
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けテぶれの授業づくりのはじめかたがわかる本!
子どもが自分で自分の学びを進める「「けテぶれ」学習法。
けテぶれ(計画・テスト・分析・練習)で学びを進める授業に取り組むと、子どもがどんどん自分の殻を打ち破っていく!
その授業をどのように導入し、どのように進めていけばよいのか。
導入でどんな説明をすればいいのか、どのように子どもを見取って対応していけばいいのか、
けテぶれのはじめかたと授業づくりの基本をこの1冊にまとめました!
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●「けテぶれ」ってなに???●
「け=計画」
「テ=テスト」
「ぶ=分析」
「れ=練習」
という、学びのPDCAをまわしていく学習法です!
これを宿題・家庭学習でやるのです。
漫然と漢字・計算プリントをすべての子が同じ問題をやるのではなく、自分がわかっていない、学ぶべき部分を学ぶためにやるのです!
●なぜ子どもが自分の学びのPDCAを回さないといけないの?●
ある日、著者の葛原先生は、日本でもトップの学力を誇る、関西に住むたいていの人が知っている有名校の高校生の相談に乗りました。
急に勉強がわからなくなり、やる気が完全に失われたその高校生。
その日本トップレベルの高校生の問題は、「自分にとって必要な学習が何か」「困ったときはどうしたらいいのか」がわからず、学習者として自立できていなかったのです!
自分の頭で、自分で何を学ぶべきか考え、仲間とともに力強く進んでいく、そういう子どもを、小学生のときから育てたほうがいいと思いませんか?
序章 自分の学び方を学ぶ「けテぶれ」というチャレンジ(「けテぶれ」をなぜはじめようと思ったのか?;「けテぶれ」とは、子どもが自分で学びを計画・実行する方法です ほか)
第1章 ホップ!授業をけテぶれ化しよう!(けテぶれ指導で目指すこと;漢字学習でけテぶれを体験 ほか)
第2章 ステップ!算数授業にけテぶれを導入する(算数に「けテぶれタイム」を導入する;1時間まるごと「けテぶれタイム」に挑戦 ほか)
第3章 ジャンプ!子どもが学びの主体となる(算数1単元でのけテぶれに挑戦;子どもの学びを活性化し、深める)
【目次】
はじめに
序章
自分の学び方を学ぶ「けテぶれ」というチャレンジ
「けテぶれ」をなぜはじめようと思ったのか?
「けテぶれ」とは、子どもが自分で学びを計画・実行する方法です
「けテぶれ」が生む学びとは?
実践事例 けテぶれで自分で考えて学ぶ子どもたちが育つ!
実践事例 けテぶれで自主学習と授業をつなげる!
実践事例 教科担任制でもできるけテぶれ実践!
「けテぶれ」授業の効果について
「けテぶれ」授業では、大小2つのサイクルをまわします
「けテぶれ」は特別な学び方?
「けテぶれ」授業革命の全貌!
単元の中で「けテぶれ」に取り組んでいく流れ
コラム 子どもに学びを任せるのはこわい?
第1章
ホップ!
授業をけテぶれ化しよう!
@けテぶれ指導で目指すこと
けテぶれ指導でまず目指すのは学びの型を身につけること
指導にあたっての心構え 「できるできないじゃない、やるかやらないかだ」
学びの海に出る準備運動@ いきなり全部やらなくてもいい
学びの海に出る準備運動A 授業は何のためにある? 本質的な問いかけや活動をしてみよう
A漢字学習でけテぶれを体験
いよいよみんなで「けテぶれ」体験!
B漢字学習を自主学習のけテぶれに
漢字学習の時間を子ども自身でまわす「けテぶれタイム」に変換
漢字学習を自主学習へ けテぶれの導入にあたって入門期に大切な指導
けテぶれの基本サイクルをまわしまくろう!
「練習」から耕していこう
Cけテぶれについて情報提供しよう
けテぶれ通信を出そう
けテぶれ通信はこんな感じ!
けテぶれ交流会を開催しよう!
Dマンネリ化を防ぐために
「学び方の基準」を子どもたちと共有しよう
学習力を可視化しよう
ポイント制に関する工夫と注意点
やらない子、できない子への関わり方
やらない子、できない子すべての子に「ゆるアツ」に関わる
Eけテぶれを大きなサイクルでまわす
大サイクルを意識してみよう
大計画のコツとやり方
「大分析」に挑戦してみよう
大分析のやり方
テスト後の語り「自分で考え自分で学ぶ力をつけよう」
コラム 全面的に自由な空間で、自分で自分を管理する
第2章
ステップ!
算数授業にけテぶれを導入する
@算数に「けテぶれタイム」を導入する
算数の演習時間で「けテぶれタイム」をつくってみよう
大テストを活用しよう〜少し遠くの目標に向かって〜
抜き打ちテストをやるときの展開例〜けテぶれを学ぶための道具と捉える〜
学びの自由度を上げていこう〜けテぶれタイムの拡大〜
算数のけテぶれタイムのコツは上位層に目を向けること
けテぶれタイムのとき現在位置を可視化すると子どもが
動きやすくなる
けテぶれタイムを日常化させよう
A1時間まるごと「けテぶれタイム」に挑戦
1時間まるごとの「けテぶれタイム」に挑戦しよう!
まるごとけテぶれタイムの流れ(初級編)
まるごとけテぶれタイムの流れ(中級編)
B子どもが学びを評価するために
子どもたちのチャレンジには常にフィードバックを
自分の学習力について考える機会を設定する〜けテぶれシートを書いてみよう〜
けテぶれシートの機能
フィードバックの3原則 即時・明瞭・発掘
子どもたちの記述を信じて任せて認める
Cけテぶれタイムを日常に広げる
自学ノートをけテぶれ専用のノートにしよう
他の教科でもけテぶれタイムを導入するには・・・
けテぶれ的思考を教科以外の活動に活用しよう
けテぶれ×生活で、学校生活をまるごと自分ごと化
宿題もけテぶれ化しよう
コラム けテぶれ初期〜中期の教師のまなざし
第3章
ジャンプ!
子どもが学びの主体となる
@算数1単元でのけテぶれに挑戦
けテぶれ授業革命の本丸〜教室は子どもたちが学習をする場所である〜
けテぶれ授業革命で子どもたちは何を得るか〜自ら学ぶことで自らについて学べ〜
指導にあたっての心構え@ 信じて任せて認める
指導にあたっての心構えA 子どものチャレンジを止めない
指導にあたっての心構えB 徹底的に語り抜く
目的、目標、手段の関係を押さえよう!
手段は柔軟に。いろいろ試せる余裕と自由度を
目標は具体的に。いつまでに、どうなっていればいいか
目的は魅力的に。自立した学習者像を描こう
語るだけでなく、問う
A子どもの学びを活性化し、深める
けテぶれの「大サイクル」を意識しよう
子どもたちに「現在位置」を知らせる
一斉授業を有効に使おう
けテぶれ会議を開こう
けテぶれ実践における「守破離」
けテぶれ実践の多くの時間は「守?破」の時間
けテぶれの1年では「手段・目標・目的」を順番に手渡していく
最後に渡すのが目的。「学ぶ目的」の追究は終わりがない問い
自己省察的な学びに関する注意点
けテぶれの限界と、もう一つの武器QNKS
おわりに 本書で提案する学びのあり方〜自学、自由、自分、自在、自信、自然〜
1987年、大阪府生まれ。同志社大学を卒業後、兵庫教育大学大学院へ進学。卒業後、西宮市立山口小学校に勤務、現在に至る。小学校の宿題の在り方に疑問を感じ、家庭学習において、子どもたちが自分の学習を自分で作り上げる「けテぶれ学習法」という方法を提唱し、ツイッター上で発表。多くの教師から注目を集める。現在は宿題改革の切り口から、これからの社会に求められる教師の在り方を啓発するため、講演会、執筆活動などに活躍中。
若者文化研究所は若者の文化・キャリア・支援を専門とする研究所です。