本文へスキップ

若者文化研究所は若者の文化・キャリア・支援を専門とする研究所です。

TEL. メールでお問い合わせください

〒165 東京都中野区・・詳細はメールでお問い合わせください

若者論のトレンドCONCEPT

書評坂本良晶『生産性が爆上がり!さる先生の「全部ギガでやろう!」』学陽書房、2023/3/25
 本書は教育用4大アプリの使い方や、タブレットなどTCTを活用した働き方、授業、学級経営を具体的に指南する。TCTのポイントは、何より教師自身が楽しむことである。そして、教師が早く帰れる、授業がワクワクしたものになる、学級の雰囲気がよくなるという3つが、互いに相乗効果を巻き起こすと言う。
 著者は、GIGAの本質はクラウド活用にあると言う。子どもたちが活動する場が、それぞれのタブレット端末の中ではなく、クラウド上にあることで協働的な学びが実現するからだ。クラウドによって、子どもたちが同じデータを同時に作業できる共同編集、子ども同士でお互いに見合うことができる相互参照、子ども同士でお互いにほめ合ったり、フィードバックしたりする相互評価が可能になる。
 著者は、1980年代のアップルの「知の自転車により、創造性を拡張させる」という言葉を引き、タブレット導入期を、自転車の「どろんこ期」(何度も転ぶから)と称し、その危機を次のように説明する。当然ながら徒歩の方が速い。もし、そのタイミングで自転車に乗ることをあきらめてしまったら、徒歩を圧倒的に凌駕する自転車という移動手段を一生得ることができないことになる。そして、もう一つ、この本が教えてくれる大切なことは「楽しく遊びのようにTCTを使う」ということである。このようにして、「効率的にわかりやすく教える」から、「楽しく遊んで探究し、協働させる」にTCTを転換させたいと評者は思う。



書評



坂本良晶『生産性が爆上がり!さる先生の「全部ギガでやろう!」』学陽書房、2023/3/25

 著者は現役小学校教員で、働き方をテーマにしたSNSでの発信が人気。本書は「5時に帰れて、子どもの学びの生産性が爆上がりする、GIGA時代の教師の仕事術」と銘打って、教育用4大アプリの使い方や、タブレットなどICTを活用した働き方、授業、学級経営を具体的に指南する。そのポイントは、何より教師自身が楽しいことで、子どもたちがICTを駆使してクリエイティブな活動で学んでいる姿を見ると幸せを感じると言う。そして、教師が早く帰れる、授業がワクワクしたものになる、学級の雰囲気がよくなるという3つが、互いに相乗効果を巻き起こし、子どもも教師もハッピーになると言う。その活用は、国語、算数、社会、理科、体育、音楽、図工、道徳のすべてにわたり、それぞれ適切な無償アプリの利用法が紹介される。
 著者は言う。今回のGIGAスクール実装劇の中で、契約上の問題らしいが、タブレットの会社と異なるアカウントが付与され、なおかつ肝心の主要アプリが使えないという事態が生じている。そうなると、クラウドでの共同編集ができないなど、本来のハードやソフトのスペックを発揮できないシーンが多く生まれる。そこで出番となるのが、ハードに依存せず、なおかつ契約せずとも使用できるアプリたちだ。中でもCanva、Padlet、Kahoot!、Flipは、使い勝手や汎用性が最強クラスだと言う。
 著者は、GIGAの本質は、一般的な「一人一台のタブレット活用」という答えは本質ではないと言う。なぜなら、それだけなら以前のパソコンルーム時代のパソコンを外に持ち出したのと大きくは変わらないからだと言う。著者は、GIGAの本質はクラウド活用にあると主張する。すなわち、子どもたちが活動する場が、それぞれのタブレット端末の中ではなく、クラウド上にあることで協働的な学びが実現するからだと言う。クラウド上にデータがあることによって、子どもたちが同じデータを同時に作業できる共同編集、子ども同士でお互いに見合うことができる相互参照、子ども同士でお互いにほめ合ったり、フィードバックしたりする相互評価が可能になると言う。
 著者は、1980年代のアップルの言葉、「知の自転車により、創造性を拡張させる」を引き、そんな「知の自転車」が世に出て半世紀近くが経ち、ついに日本の子どもたちにもそのペダルを心置きなく漕ぐことができる状態がGIGAスクール構想により実現したと言う。ただし、タブレット導入期を自転車練習の、何度もこけてどろんこになって練習を繰り返す「どろんこ期」の危機を次のように説明する。当然ながら徒歩の方が速い。もし、そのタイミングで自転車に乗ることをあきらめてしまったらどうなるだろう。そうすると一生自転車という徒歩を゛圧倒的に凌駕する移動手段を得ることができないことになる。これはナンセンスだ。この例はタブレット導入期にも完全にあてはまる。たとえば簡単な文章を打つ活動でも、はじめはタイピングがおぼつかないため、普通にノートに書く方が速いという状態に陥る。これは当然のことだ。しかし、このデジタルどろんこ期は絶対に必要なステージであり、ここで「これなら手書きの方が速い」と短絡的になってやめてしまうとどうなるか。そう、タブレットという自転車に乗れないままになってしまう。非常に残念なことだが、このケースは少なくない。そして結局タブレットは保管庫に死蔵されてしまう。
 評者も往年の「パソコンボーイ」だったため、上のような理由で、職場にパソコンを広めたくても広められないという「どろんこ期」の悔しい思いをしてきた。これが、GIGAスクール構想で、「一人一台端末」が実現するなんてすばらしいことだと思う。しかし、もう一つこの本が教えてくれる大切なことを忘れてはならない。それは「楽しく遊びのようにICTを使う」ということである。しかも教室という教育目的限定の環境の中で。
 著者は、無償貸与のゲーム「桃鉄」を利用して、日本地理、算数の割合などが効果的に学べる仕掛けを実践した。著者は「学びと遊びの境界線を溶かしながら、学校を面白くしていきたい」と述べる。評者は過去に「パソコンオタクの自己有用感」や「パソコン等による遊び型学習の効果」について述べたことがある。それが、GIGAスクール構想によって、すべての子どもたちに実現可能になる。文科省の発表によると、学校の授業におけるデジタル機器の使用時間はOECD加盟国で最下位、デジタル機器利用については「ほぼ毎日一人用ゲームで遊ぶ」がOECD平均の2倍近くに迫る。日本の学校には「カタブツの存在」があって、それが楽しいICT活用を妨げていると感じる。ICTへの考え方を、「わかりやすく効率的に教える」から、「楽しく遊んで協働し、探究させる」に転換させたいと評者は思う。
 「どろんこ期」からの脱出方法は簡単だ。そういう教師は、楽しんでタブレットに向かっている子どもという「先生」から教えてもらって、その手軽さと楽しさを味わうといい。

【以下広告文より】

坂本 良晶
生産性が爆上がり!さる先生の「全部ギガでやろう!」
¥1,980
2023年4月

5時に帰れて、子どもの学びの生産性が爆上がりする、GIGA時代の教師の仕事術! 

著者は、働き方をテーマにしたSNSでの発信が人気の現役小学校教員‘さる先生’こと坂本良晶氏。本書は「ICTを活用した働き方×授業×学級経営」をテーマにした一冊。GIGAで仕事を超速にする方法が全部わかる!5時に帰れて、子供の学びの生産性が爆発的に上がる仕事術とは??著者が日頃使っている新しい教育用4大アプリの使い方や、具体的にタブレットを活用して子供がどんどん学びを深める授業事例も満載。
(家庭教育新聞)

さる先生の、GIGAで仕事を超速にする方法が全部わかる!
5時に帰れて、子どもの学びの生産性が爆発的に上がる仕事術とは?
さる先生が日頃使っている新しい教育用4大アプリの使い方や、
具体的にタブレットを活用して子どもがどんどん学びを深める
タブレットを活用した授業事例も満載!

【目次】
はじめに

0章 無限の可能性という魔力を纏う板
ICTをフルスイングせよ
ICTをフル活用すれば学級経営がよくなる
ICTをフル活用し、5時に帰る

1章 働き方の思考を変える
坂本龍馬思考――チョークという刀を置くときが来た
ドラッカー思考――元々しなくてよいことはするな
エッセンシャル思考 ――本質的な仕事をする、本質的に生きる
逆算思考――5時に帰るためには5時に帰る
完了思考――そもそもその仕事のクオリティーを上げる必要はあるのか

2章 教師の仕事がこんなに変わる!
劇的に変わった! 紙々との戦い2.0――デジタルの福音 #メモ #OneDrive #Google Drive
二度と前に戻れない! テスト最強メソッド2.0――アナログとデジタルのハイブリッド化
デジタル化の威力がすごい アーリーショケナー2.0――音速の所見師となれ
デジタル時代のタスク管理――ポケットの中の秘書「リマインダーを使い倒す」
GIGAで変わる生もの仕事と乾きもの仕事
 長期休みにすべき「乾きもの仕事」
学習計画と評価基準の作成――カリマネで学びの必然性と時数の余白を生み出す
Teams、Classroomは学習や校務の母艦としての役割を担う
振り返りの3パターン――アナログ×デジタル
円盤との戦いを制す――さらばCD
遠足×ICT――#Teams

3章 教育用4大アプリを実装せよ――Canva/Padlet/Kahoot! /Flip
 GIGAの本質とは
Canva――教育界のスーパースターアプリ
教育用デジタル掲示板Padlet――デジタルで発表の民主化を
 Padletを始めよう
 Padletで教室を外の世界へ接続していく
教育用クイズアプリKahoot!――教室をクイズ番組のスタジオへ
教育用SNS Flip――音声や映像で表現を

4章 タブレット×クラウド時代の授業アイデア
 wheels for the mind――知の自転車により、創造性を拡張させる
 タブレット導入期のマインドセット――デジタルどろんこ期
黒板とノートとタブレットの使い分けの基本
テキストでのアウトプット――音声入力からタイピングへ
メディアでのアウトプット――写真と動画をフル活用する
国語×ICT
 Canvaのスライドで単元全体をデザイン
 Flip音読
算数×ICT
 Canva×Flipでパフォーマンス課題にチャレンジ
 手書きの計算問題をアプリで自分でチェック
 表計算ソフトでパフォーマンス課題
社会×ICT
 Canvaのホワイトボードの活用
 1枚の資料を15秒でFlipでアウトプット
 Kahoot!で問題作りにチャレンジ
理科×ICT
 メダカYouTuberになろう――Flip
 Googleマップで擬似的フィールドワーク
体育×ICT
 タイムシフトカメラやFlipでフォームチェック
 Canvaのクラウド体育カードで技能×音楽で表現する体育へ――鉄棒、マット、縄跳び
音楽×ICT
 Padletで高学年でも恥ずかしくない同期録音式歌テスト
 Flipで非同期録画式楽器演奏テスト
 Padletで鑑賞
図工×ICT
 立体作品を実際に動かしながら動画で紹介
 「KOMA KOMA×日文」でアニメを作る
道徳×ICT
 Padletで心のクラウドノート

5章 タブレット×クラウドで保護者もハッピーに
動く学級通信
双方向の学級通信
掲示物をデジタル空間に掲示
GIGA懇談
行事の写真は子どもたちが自分でムービー化――#iMovie #Googleフォト
遅刻・欠席の連絡をFormsで――#Forms
ハイブリッド授業――#Teams #Classroom

6章 授業を行事化していくプロジェクト学習
 プロジェクト学習とは
 授業を行事化する――スペシャルな相手意識とスペシャルな目的意識
 京都府の魅力を伝えよう――都道府県クイズプロジェクト
 ミニ「世界子どもゴミフォーラム」
 クリエイティブな団体演技の在り方を考える
 「ボクたちの未来について考えよう〜守ろう地球博」
 鈴木先生にビデオメッセージを送ろうプロジェクト――空も飛べるはず
 ニュー祭プロジェクト――商店街を盛り上げよう
 「桃鉄」を学校へ
あとがき




バナースペース

若者文化研究所

〒165-0000
詳細はメールでお問い合わせください

TEL 詳細はメールでお問い合わせください

学習目標に社会的要請を組み込む