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社会教育学討論CONCEPT

社会教育学討論

 若者文化研究所 西村美東士

生涯学習と社会教育では何が違うか


 生涯学習と社会教育はどう違うか。そりゃあ、学習と教育だから、比べる前に次元が違うだろう。比較して差異を見える化しようとするのは、定義の追究のためにも有益だが、次元の違うものを比較するのは、混乱をもたらすだけだ。
 教育をネガティブにとらえているから、「教育」から逃げ出して「学習」に言い換えようとする。これが第一の混乱の原因だ。社会教育と比べるなら、生涯「学習」ではなく、生涯「教育」と比べるべきだ。
 次に社会教育については、「学校の教育課程として行われる教育活動を除き、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動をいう」とあり、「学習」ではなく、「教育」であることが、明確である。ところが、社会教育を「国民の自己教育活動」ととらえる観点が強力に普及したため、学習の側とこれを支援する教育の側が曖昧化して混乱してしまっている。これも、結局は、教育をネガティブにとらえて、そこから逃げ出そうとしていることが、根源にあるといえよう。
 馬を無理矢理水飲み場に連れて行くことはできるが、無理矢理水を飲ませることはできない。同様に、学習は個人的事象であり、究極的には自己管理のもとに学んだり、学ばなかったりするのである。しかし、それらの「自己教育」を、よりよい目標と方法と評価を獲得できるよう、社会は「教育」(支援)を提供しなければならないと考える。そこには「教育」のセンスや「あの手この手」が求められている。

生涯教育と社会教育では何が違うか


 生涯教育は、学校教育、家庭教育、社会教育の教育的諸機能のすべてを含んでいる。だが、社会教育は、「学校の教育課程として行われる教育活動を除き」と明記されている。学校教育と社会教育が両輪となって生涯教育を支えていると考えればよいだろう。
 だが、実体的には同じ学習活動を、生涯学習と呼んだり、社会教育と呼んだりしている。どこが「実体的に」違うのか。
 東京大学大学院教育学研究科牧野篤教授は、「社会教育を基盤とした人づくり、つながりづくり、地域づくりといった途端に、実は他の省庁がやっているよといわれてしまう」として、次のように述べている。「社会の現実から見れば、私たちが社会として生き延びていくために、実は、社会教育はなくてはならないものであって、何か目的を持ってしなければいけないもの、するべきものではなくて、当然のごとくなければいけないもの、目的ではなくて、社会基盤としてあるべきものなのではないかということなのです。
 その意味で最近、あちこちでお話ししているのは、それに対してもいろいろ意見は聞いていますが、社会教育に目的があるわけではなくて、社会教育がしっかりしていて、住民が自分たちで自分たちのことを取り回しをしていく、つまり自治を鍛えることでこそ、実は社会が目的を持てるようになるということなのではないか。そうした点をしっかりと押さえておかないと、気が付いたら社会教育は全部他のものに取って代わられていたということになるのではないか」。
「社会教育の再設計第5回から〜生活の基盤としての社会教育・公民館−自治を再発明する」、日本青年館『社会教育』2020年7月号、p.54。
 私は、個人化と社会化の「断続的観察」が、スパイラルとしての理解により、「連続的観察」ができるようになるとして、新しい社会形成者の育成のあり方を主張している。
西村美東士「個人化の進展に対応した新しい社会形成者の育成―キャリア教育及び青年教育研究の視点から」『日本生涯教育学会年報』2012年11月。

生涯教育ではなく、「日本特有の社会教育」だからこその魅力


 同「社会教育の再設計第5回から」で、牧野は、「地域の『茶の間』としての公民館」として、「寺中構想」の目指す公民館を次のように評価している。「村の茶の間ですと書いてあります。親睦交友を深める施設ですとあります。(中略)親睦交友を深めるのだけれども、実はここに地域社会を世代間で、次世代に伝えていくということが描かれているのです。社会を次の世代に伝えるための施設だと」と評価している。
 私は、1946年の寺中作雄の公民館構想を引き、公民館の公共性や教育機関としての性格については、現代社会においては、寺中構想の「伝統」を基盤にした方がよいと論じたことがある。
1999/11/1 西村美東士「若者が集まる公民館にするために−癒しのサンマづくりは公民館の古くて新しい役割」全国公民館連合会『月刊公民館』510号、1999年11月、pp.4-9。

つづく

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