本文へスキップ

若者文化研究所は若者の文化・キャリア・支援を専門とする研究所です。

TEL. メールでお問い合わせください

〒165 東京都中野区・・詳細はメールでお問い合わせください

ワークショップ型授業の構成要素とその効果CONCEPT

 若者文化研究所 西村美東士


対他者の体験だけで自己を質的に高めることはできない。他者との相互関与とともに自己内対話の充実こそが、現在、若者が顕在的に求めている「癒し」「居場所」の中でのように「あるがままの自分」でいられることにつながり、さらには自己対社会・自己対歴史の学問の広がりにまで通ずるのである。


学生の自己決定能力を高める授業方法

2000年11月ワークショップ型授業の構成要素とその効果−学生の自己決定能力を高める授業方法、『大学教育学会誌』22巻2号、pp.194-202
【要旨】2日間の「生涯学習概論」の授業で、学生がどのように自己や他者に対する気づきを得たのか、その変容の過程を解明することによって、学生の自己決定能力を高める授業の構成要素とその効果を明らかにした。第1に、ワークショップ型授業によって、即自から対自へ、対自から対他者へと学生の気づきが促され、対他者から再び対自や即自のより深い気づきへと循環する過程が明らかになった。第2は、学生の自己決定能力の到達段階の把握に基づく戦略的な指導内容と授業構成の必要性が明らかになった。

<研究報告>
ワークショップ型授業の構成要素とその効果
 −学生の自己決定能力を高める授業方法

  西村美東士
  (徳島大学)

The Structure and Effect of Workshop-type Class:
Teaching method for improving student's self-determination ability

Mitoshi Nishimura
Tokushima University

I conducted a class "Outline of Lifelong-Learning" as an intensive course for two days. This class was carried out in the form of workshop. This class aims that the students do not hesitate to give self-expression during this class, and they will in future take part in social activities such as lifelong-learning, volunteer activities and the like also on the basis of self-determination. In this study, a process, in which each student becomes to obtain self-awareness as well as awareness of others during this class, is analyzed so as to show clearly structure of a class, which improves the self-determination ability of each student, and the effect obtained from such class.
From this study, two results are obtained. The first result is that the following two processes are shown clearly in the workshop-type class. One process is that what each student's awareness is directed to, is shifted from subjective-self to objective-self and from objective-self to objective-others. Another process is that what each student's awareness is directed to, is returned from objective-others to objective-self or subjective-self while such awareness has been promoted to be strong. The second result is necessity for strategic teaching plan and structure of class, which are decided according to a level of each student's self-determination ability.



[キーワード:授業方法、ワークショップ、自己表現能力、自己決定能力、即自・対自、生涯学習、教師の指導性]

はじめに

 学生生活にとって自己決定活動が大事な要素であることはいうまでもないが、高等教育や生涯学習を展開する指導者にとっても大事な要件であろう。
 生涯学習、ボランティア、地域活動における自己決定の重要性を授業で述べたとき、ある男子学生が「本気になって人生には自己決定が重要だと思っているのでしょうか。そんなわけないでしょう?」と言った。あくせくせずにそれなりの仕事をして暮らしていけば、親も本人もそれで幸せ、ということのようであった。また、ある女子学生は「自己決定自体、しても、しなくても、どちらでもよい。ただ、迷惑をかけたり、かけられたりするのはいやだけど」と述べている。(1)このような学生が多いのは確かである。
 一般に、「人に迷惑をかけることはいけない」と言われており、現代学生は頭ではわかっていて無自覚な強迫観念として作用した結果、自己決定にとってのマイナス要因になっている場合が見受けられる。しかし「自己決定」はしなければいけないとは必ずしも受け止められていないようである。しかし、我々は「人に迷惑をかけないで生きること」よりも、「自分の人生は自分で決めて歩きたい」という自己決定への願いの方が、強い潜在的願望であると考える。
 自己決定活動を高める授業には、それなりの工夫と指導技術が求められると考えたい。
 徳島大学学芸員課程科目の集中講義の機会を用いて、自己決定の生き方を自ら選択するよう導く授業方法を検討しようとした。学生の自己決定的な参加・参画に基づく手法であるワークショップ形態を中心にして、その指導の効果を明らかにしようとした。ワークショップは、各人の自己決定による言動が成果の共有のための必須条件として体験的に認識されると考えたからである。そして、得られた知見は、大学教育を受ける学生の態度をより自己決定的に変化させる指導のあり方を明らかにする重要な手がかりを与えると考えたからである。

1.研究の目的
 現代学生の自己決定能力が欠如しており、それは授業を受ける態度が消極的になるなどのマイナスの要因にもなっている。しかし、その原因は内的要因によるものが大きいといえる。このように考えると、「自分自身のためにこの授業が行なわれている」と気づき、実感することによって、安心して自己表現ができるようになると考えられる。その結果、学生一人一人が将来にわたって生涯学習やボランティアなどの社会的自己決定活動に関わることが期待できる。
 本研究では、学生の気づきの状態を「即自」と「対自」と「対他」に分け、その発展上に「対自=対他」を設定した。ここでの自は自己であり、他は他者である。「即自」とは無自覚に認識できる「そのままの自分」である。ただし、「対自」や「対他」から何度も立ち戻った末の深いレベルの「即自」は、いわゆる自然体の「あるがままの自分」が想定される。「対自」とは自己を客観的に認識する「もう一人の自分」を想定している。これも表層的な自己否定から深層の自己受容に至るまで、いくつかのレベルが想定される。「対他」とは「自己とは異なる他者の存在」への気づきである。これも自己からの関わり方に数段階のレベルを想定している。
 従来の議論では、「対自」は「自己洞察による客観化と主体化」であり、それゆえ「対象に対するときは、自分自身もその中に参加し、自分の問題として考える主体的な構えをもつ」(2)とされるが、筆者の経験によれば、「対自」は深まっても「対他」は苦手という若者が多く見受けられる。そのため、「対自」とは別にあえて便宜上の造語である「対他」を設定して研究を進めた。
 このように想定して次の仮説を設定した。[2日間の授業の中で学生の気づきが「即自」→「対自」→「対他」と経緯する]ということである。この仮説設定において「即自」から「対他」があって「対自」に経緯するという方が理屈にはあっているように思われるが、現代学生の現実の姿からいえば「対自」→「対他」が適していると考えられる。
 本研究の目的の第1は、学生が授業のどの場面でどのように気づきを得てゆくか、その変容過程を解明することである。第2は、ワークショップ型授業の構成要素とその効果を明らかにすることである。

2.研究の方法
 研究対象とした授業は、2000年度前期学芸員課程の科目「生涯学習概論」である。受講学生42名(うち男3名)に対して8コマ2日間にわたる集中講義で実施した。
 この授業の目的は次のとおりである。現代人が生涯学習に向かう主要な動機の一つとして「自分らしさ」の危機と、それへの願いがある。本授業では、学生一人ひとりの臨床的真実を引き出しながら、生涯学習、ボランティア活動、市民活動等の自己決定活動のあり方を明らかにすることをねらいにしている。教育方法は、ワークショップを取り入れ、成人教育における能動的な学習を実現しようとした。学生自らの生涯学習社会形成に向かう態度変容を促すとともに、成人の生涯学習支援についての見識を養うこととした。授業は図1のように進行させた。実施時期は2000年7月である。

図表  調査及び分析は、@授業イメージに関する調査、A学生の提出した文章、Bワークショップの成果、C映像による授業記録に関する調査を対象にして行なった。
 授業イメージの変容の検討は次のように行なった。3回にわたって「この授業について」のイメージ調査を質問紙により行なった。調査の構成はa「即自」13問、b「対自」13問、c「対他」11問である。調査の実施時期は図1の1a終了時と2d終了時とした。今回の報告では調査ABを用いている。有効データ数は33である。
 学生の記述した文章の分析は次のように行なった。1a終了時に文章表現@「私はどう生きてきて、この授業に何を期待しているか」、1d終了時にA「自分の自己決定を阻害する要因」、2a終了時にB「午後の授業に、私は今は何を期待しているか」、2d終了時にC「ワークショップを終えての感想」を、それぞれA6版1枚に書くよう学生に指示した。この内容を類型化して分析を行なった。
 ワークショップの成果の分析は次のように行なった。1dのワークショップ成果@「本日の授業における出会いと自己への気づき」(図解)、2bのA「価値観ゲーム」(メモ)(3)、2cdのB「自己決定阻害要因排除あの手この手」(図解)を、各班で作成し提出させ、内容を検討した。


 映像による授業記録の分析は次のように行なった。2日間の授業風景をビデオに録画し、教師の発言と学生の反応、彼らの自己表現を対照して分析した。そのことによって、教師の働きかけのどこがどのように彼らの気づきに影響を与えるかを明らかにしようとした。
 この他に、「生涯学習などの自己決定活動について」をテーマに提出を指示しているが、本報告では用いていない。

3.結果と考察
3-1.授業の進行に伴う学生の気づきの変容過程
 表1に分析結果を示した。×は否定的、△は中立的、○と◎は肯定的な反応であるが、自覚的な反応は◎とした。この表によると下記の諸点が指摘できる。

表1「本授業の進行による学生の変容過程」

 第1に、「対自」への関心は、「あなたはどう生きてきたのか」と働きかけだけで十分に引き出すことができた。具体的には、短時間の一斉指導によって、「対自」の○と◎が「即自」を上回る結果(20対32)を得た。もともと学生には「対自」に関する自覚・無自覚の関心があり、「この授業の関心はそこにある」と教師が表明するだけで成立したと考えられる。
 第2に、カード式発想法による図解のグループワーク(図1の1d)では、「対他」に関する肯定的・自覚的記述が高い。午前の文章表現では「対自」と「対他」が32対7であるのに対し、14対38と逆転している。この状況は、他学生の文章表現とそれに対する教師のコメント、第一印象ゲームにおける「その人らしさ」との交流を経ることによって生じたと考えられる。他学生の文章表現を聞くとともに、初対面の人とも安心して出会えるワークを体験できれば、他者の存在に対して関心を向けさせることができるといえよう。
 第3に、価値観ゲーム(図1の2b)では、結果や「メモ」を見る限り、上で述べたような学生の変容は見られない。本授業のワーク等が効果をもつのは、もっぱら態度の変容に関してであって、短期間で学生一人一人の価値観を変えていくものとはなっていない。
 第4に、最後のワーク(図1の2cd)では、「対他」に匹敵する「対自」の増加(39対45)が見られた。これは、2日目午前のグループごとのプレゼンテーションや午後の価値観ゲームによる他者との出会いから生じ、それが自己の存在を振り返ることにつながったと考えられる。
 第5に、○に対する◎の割合については、1日目最後のワークでは「対自」で10対4、「対他」で32対6であったのに対して、最後では28対17、23対16と増えている。特に「対他」においては、親やその他の自己決定阻害要因に対して「自己決定へのアドバイスとしてとらえる」、「相手と本気でやりあう」などの内容は注目すべきことといえる。さらに、「即自」に関しては、×と△と○の合計に対する◎の割合が、1日目午前35、1日目ワーク13に対してともに0であったものが、2日目最後のワークでは13対5に上がっている。そこでは、自己決定が運などの要因によって左右される人間の宿命を受容しつつ、しかも「他人があきれるような自分の世界を作る」などの方策が打ち出されていた。
 このように授業進行に伴う学生の気づきは、「即自」→「対自」→「対他」の単なる一方通行ではなく、「対他」に至った後「対自」に戻っている。このような、段階的に、しかも循環して深まっていく過程が明確に見出された。

3-2.授業イメージの変化
 図2は本授業に対する学生の受け止め方の水準である。「そう思う」を4、「ある程度そう思う」を3、「あまりそう思わない」を2、「そう思わない」を1として集計した。中間値の2.5は「どちらともいえない」を表している。また、標準偏差を棒グラフで示した。

図表  その結果の第1は、「有意義な時間である」が3.45とトップで、「そう思う」と「ある程度そう思う」の中間値(3.5)に位置している。変化量からみても、2日目のワークによってより肯定に動いたといえる。
 第2に、上位10位の内容によると、aが1、bが6、cが3で、グループワークが主体だったにも関わらずbが上位3位を占め、cは「相手のよいところを発見できる」が4位であるほかは、9、10位にとどまった。自己による教育と相互関与による教育に分けてとらえると、本授業は前者の効果の方が高かったといえる。
 第3に、「ある程度そう思う」の3.0付近の項目としては、「知識が増える」「自分と関係のある」「団体で行動ができるようになる」「わくわくする」「論理的になれる」などがある。上位の項目である自分や他者の存在への気づきに比べて、現実の日常の場で判断や行動するための知的・現実的能力については「まあまあ役立つ」と学生にはとらえられたといえよう。また、「人を信頼できる」「人の痛みがわかるようになる」「自信のもてる」はそれより少なく、2.88、2.82、2.64であり、現実の他者と接する場で上手に自己決定の生き方をするための能力が十分身につくという感覚はそれほどもててはいない。


 第4に、「効率が良い」は2.55でほぼ中立であるが、ワークショップ型よりも講義型の方が「効率が良い」と感じられるのは止むを得ないことであろう。しかし、「自分の目標をもてる」も2.61と小さい。「くよくよしなくなる」「夢がもてる」は、わずかながら否定に傾いている(2.42、2.39)。つまり、自己決定の生き方をしようと思ったとしても、どのような段取りでどういう具体的目標をめざして生きていくかといった現実場面における変容にはつながらなかったということがいえる。それゆえ「夢がもてなかった」という回答になったと推察できる。この段階までの変化のためには、互いに「自分をさらけ出す」持続的な機会の設定が必要と考えられる。
 1日目終了時と2日目終了時の本授業のイメージの変容量をランキングしたものを表2に示した。これは2日目に入ってのやや本格的なワークショップが学生にどのような変化をもたらすかを示している。その特徴は次のとおりである。

図表
 第1に、「対自」では「感情を大切にできる」ようになり、「対他」では「気持ちを話したく」なっている。ともに同率1位を占めている。前者も「対自」とはいえ、ワークのなかで先述の思い込みが解消した結果ととらえられる。すなわち、2日目のワークは他者と出会うことについての彼らの不安・不快の予想から安心・快感に向けた固定観念の打破にとってもっとも効果的であったといえよう。
 第2に、「自分に気づける」、「自分の問題に気づける」は高く現れている。2日目のワークによる他者との相互関与がそれらの気づきを与えたといえよう。
 第3に、10位になって初めてaの「わくわくする」があがっている。ワークショップの効果は、学生の「即自」的な要求に応えるよりも、「対自」、「対他」の変容をもたらすものといえる。

 第4に、「自分と関係のある」が低い。学生にとって授業が「自分と関係のある」ものとなるためには、「講義かワークショップか」とは異なる別の授業構成要素の検討が必要と推察できる。
 第5に、微小な変容にとどまった下位5項目は、「わかりやすい」「人の痛みがわかるようになる」「授業に親しみがわく」「自分のペースで参加できる」「自分の目標をもてる」である。「人の痛みがわかるようになる」ためには、短期間のワークショップを行なうだけでは不十分といえる。しかし、「授業に親しみがわく」「自分のペースで参加できる」の低調さは、現代学生にとって対人ワークがあくまでも苦手な部類に属するということを裏付けている。

4.学生の文章表現における変容の検討
 ここでは、授業の過程で得られた学生の文章表現からその変容過程を検討する。



 多くの学生は、「最初はどうなることやら」と思いつつも「いろいろ意見が出てよかった」などとしている。「即自」の初期段階にある場合、ワークショップをのびのび楽しんでいる様子がみられた。これ以外の記述に重要な事項が含まれているので、ここではその事例について検討したい。
 「グループでの話し合いや皆の意見を聞いて、自分がどう生きていったらいいのかという迷いのようなものが断ち切れたような気がする」とまで書いている事例がある。授業に過大な期待をする学生にとっては、本授業は無理をしないで現実的に教育や自己成長に向かい直させる効果があったといえよう。
 1日目にすでに自省的に「私自身のブレーキ」を阻害要因としてあげていた学生は、「今までは『くだらない意見だと思われたらいやだから言わないでおこう』と思っていたが、口に出さないといい意見かどうかわからないし、大切ではなさそうな意見でもみんなが大事にしてくれるので話しやすい」としている。内省はできても、他者との距離取りや自分の位置決めに悩む学生には、ワークショップは効果を発揮すると考えられる。
 「価値観の違いという一言で、何もかもすまされてしまう。その言葉は人を理解することを拒否する言い訳のように聞こえる。午後の授業では、そんな言葉をなくせる人間関係の方法を知りたい」とした学生は、このワークショップの終りでは「今、何か考えがまとまりそうと思っているときに別のことを言われてわからなくなったりした」と書いている。このような先まで見ている学生には、一斉参加型のワークショップだけでなく、自己内の深い思考のための静寂の時間が必要だといえる。ワークでの他者との交流がかえって自己への気づきにとって邪魔になる場面もあると考えられる。

5.討論
5-1.自己決定能力を高める授業方法
 学生を自己や他者存在への気づきにまで導くためには、一方向の一斉承り型講義では時間がかかる。双方向の授業や学生同士の共同作業によるワークショップ型授業は、現代青年を自己決定の態度に向かって変容させるために一定の効果があるといえよう。
 学生の「即自」→「対自」→「対他」という気づきの発展過程の仮説は、部分的には検証された。しかし本研究では同時に、他者への気づきが「対自」や「即自」の気づきに再び転化して深まっていくことが確認された。
 気づきの循環を効果的に支援するためには、個人の生涯の時々と生活の各場面に、自己と他者とのトータルな相互関与を体験する機会をいくつか用意する必要がある。これを高等教育において実現するためには、「問わず語り」の場を数多く用意することが必要であろう。
 さらに、一人一人の自己内対話をどう促すかという教育的視点が求められる。ワークショップでの対他者の体験だけで自己を質的に高めることはできない。他者との相互関与とともに自己内対話の充実こそが、現在、若者が顕在的に求めている「癒し」「居場所」の中でのように「あるがままの自分」でいられることにつながり、さらには自己対社会・自己対歴史の学問の広がりにまで通ずるのである。自己決定能力はこのようにして育まれると考える。

5-2.ワークショップ型授業の構成要素とその効果
 上の視点に立ち、今後求められるワークショップ型授業の構成要素を考えたい。
 今回の授業における指導者の行為は、課題提示(問いかけ)、紹介(読み上げ)、回答(レスポンス)、指示(ワークの進め方)が頻繁に行なわれた。そのことによって、役割提供機能(ワーク)、表現支援機能(文章、話し合い、発表)、受容機能(学生の表現への評価)、課題解決機能(気づきの促進)、揺さぶり機能(固定概念の打破)を発揮していたと推察できる。
 しかし、その効果は、学生の到達段階やその循環の程度によって左右されることが明らかである。
 受動的に生きてきたと自己規定する学生にとっては、表現支援機能や受容機能による学習が大きな部分を占めていたと考えられる。日常で避けてきた「新しい関わり方」を体験し、他者への肯定的関心と自己への気づきにつながったといえる。
 次に、自己決定がしづらいと認識していた学生に対しては同様の効果があったと思われるが、それ以上のものは得られなかったようである。これらの学生に対しては、より質の高い課題を提示することによって、もっと高いレベルの気づきを促すことが重要といえよう。
 このように、ワークショップ型授業の構成にあたっては、学生の変容がどの段階にあるのかをたえず把握しながら、適切で柔軟な授業を組み立てることが求められる。学生が到達した質的内容に応じたグループ編成や展開方法も検討の価値がある。適時処理が行なわれず、終了後に教師が講評で補完する事態では、ワークショップ型授業の意義は薄いのである。
 また、学生のもつ固定概念を揺さぶり、自己と他者との関わりのとらえ直しを促すことが大切である。自己内対話の深化を含めた気づきの支援機能の充実が重視されるべきであろう。
 他者との距離を測ることによって自己の位置を客観的に認識し、役割発揮を自己決定する要素も重要である。本授業の図解ワークショップで自分のカードの主張がメンバーに共有され、全体の図のなかで位置づけられることは、その自己決定を促すものであった。
 以上の検討によって、ワークショップ型授業の構成要素(機能)の働き方ともたらす効果に一定の関係が見出せた。今後はこれらの関係に注目し、より洗練した授業に高めることを課題として深めてゆくこととしたい。
 終わりに本論文をまとめるに際し、貴重な示唆をいただいた徳島大学森和夫教授に感謝する次第である。

【注】
(1)西村美東士,『癒しの生涯学習増補版−ネットワークのあじわい方とはぐくみ方−』,学文社,p.161,1999.
(2)西平直喜,『青年分析−人間形成の青年心理学』,大日本図書,pp.16-18,1964.
(3)「価値観ゲーム」「第一印象ゲーム」ともに坂口順治,『実践・教育訓練ゲーム』,日本生産性本部,1989.

抄録和訳
 私は2日間にわたる「生涯学習概論」の授業をワークショップ形式で行なった。その目的は、学生が安心して自己表現ができるようになり、将来にわたって生涯学習やボランティアなどの社会的自己決定活動に関わるという目標をもつことであった。本研究においては、この授業で学生がどのように自己や他者に対する気づきを得たのか、その変容の過程を解明することによって、学生の自己決定能力を高める授業の構成要素とその効果を明らかにすることを目的とした。
 研究の結果、第1は、ワークショップ型授業によって、即自から対自へ、対自から対他者へと学生の気づきが促される過程とともに、対他者から再び対自や即自のより深い気づきへと循環する過程が明らかになった。第2は、学生の自己決定能力の到達段階の把握に基づく戦略的な指導内容と授業構成の必要性が明らかになった。


バナースペース

若者文化研究所

〒165-0000
詳細はメールでお問い合わせください

TEL 詳細はメールでお問い合わせください